笑いがおさまった頃、残りのウィーズリー家が揃った
ハグリットが余計な一言(がルシウスにあったとかなんとか)を口走るものだから、は質問攻めにあう羽目になったが、やっと解放された
アーサーが納得したわけではない。困っているをハーマイオニーが見かねたのである
アーサーをなだめる方法は簡単で、ハーマイオニーが両親を紹介した瞬間にすぐそっちに飛びついた
「俺はもう行くとしよう。みんな、ホグワーツでまた」
「「うん」」
ハグリットの言葉に、とハーマイオニーが答えた
ハリーはといえば、さっきの同様(アーサーではないが)、双子とロンの質問攻めにあっていた
助けて目線から敢えて目をそらす
ハリーを助ければ自分に災難が降りかかることの予測は簡単につくからである
結局、こちらもまたハーマイオニーがなんとかハリーを助けた
は逃げようとしたがハリーに手をつかまれた
「」
「ん?」
「なんで助けてくれなかったの」
「さて!銀行行こっかぁー」
「無視!?」
ハリーをよそに、早足でグリンゴッツに向かった
Act.4 Flourish and Blotts
グリンゴッツ銀行に着き、一つのトロッコでは小さすぎたものだから、とハリーはウィーズリー家とは別のトロッコにのることになった
ハリーは心の奥底で安心した
一年前、ホグワーツ行きの汽車でロンが持っていた食べ物から、金庫の中身は想像がつく
ツキラもハリーも、金庫にはぎっしぎしの金貨が詰まっているのである
それを見られるのは、正直、申し訳ない気がしていたのだ
「キャーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
一方、はというとハグリットがいないのをいいことに、一年前に果たせなかった願望をかなえていた
なんでも、テレビ番組でスタッフがジェットコースターに乗って叫んでいたとかなんとか
一向にやむことのない叫びを聞き、ハリーはの肺活量に真面目に感心してしまった
トロッコがハリーの金庫の前で止まると同時に、も満足げに口を閉じた
「ハリー・ポッターさんの金庫はこちら、・さんの金庫はこちらになります。鍵を拝借」
二人はそれぞれ鍵を子鬼に渡す
は深呼吸をした
一年前、自分の金庫に入っているあまりに数の多い金貨を見て、気を失ったことは、今となってはいい思い出だと言えるかもしれないが、二度と嫌だった
二の舞にならないように、覚悟を決めて金庫に入る
「・・・金庫に入るのに覚悟がいるって・・・、変だよね・・・」
まぶしいくらいに積み上げられている金貨を鷲づかみし、袋につっこんだ
銀行を出てからは、一時間後に書店で会う約束を取り付け、それぞれ別行動をとった
「なんか、夏休みの間だけなのに、四人で歩くの、すごい久しぶりって感じがする」
の言葉に、みんなうんうんと頷いた
「でも、『やっぱり絆で結ばれてるん』でしょ、ロン?」
「それはもういいよ!!ハーマイオニー!!」
「・・・ロンってすぐ赤くなるわよね。」
「言われてみれば確かにそうだね・・・」
「まで加勢しないでよ!?」
テンポよく会話が弾む
やっぱり、みんなと一緒にいるのが一番心地いい
「あ」
ハリーは街角にあるアイスクリーム屋の前で足を止めた
「食べる、みんな?」
その言葉に、、ロン、ハーマイオニーがハリーの指を先に目を走らせた
「もちろん!!!」
すぐに反応したのはだった。ハリーは苦笑した
ホグワーツに入ってから初めて食べたアイスがは痛く気に入っているようで、
アイスが出る日は決まってメインディッシュよりデザートに手がのびていた
「えっと、何があるかな・・・。」
四人でアイスクリーム屋の前に立つ
「僕、苺&ピーナッツバターにするけど、みんなどうする?」
「私はそれでいいわ」
「僕も」
「は?」
「ちょっと待って」
ハリーの視線がに注がれる
は店員に何か訊いているようだったが、やがて残念な顔をして振り向いた
「杏仁豆腐味、なかった・・・。」
「「「・・・・・・。」」」
結局ハリーは、苺&ピーナッツバターのアイスを三つとチョコ&エスプレッソ味を購入した
杏仁味はなかったものの、それでもは大満足だったようだ
ロンやハーマイオニーに引っ張りまわされたりされなかったりしながら、一時間はあっという間に過ぎた
フリーリシュ・アンド・ブロッツ書店は人に埋もれていた
はイライラしながら人垣を押し分けた
みんなでわいわいするのは好きだったが、知らない人が大勢いる場所は、あまり好きではなかった
店の奥まで続く列を見て、は唖然となった
「何があるっていうのさ・・・」
「あら、看板見なかったの?」
教科書リストに書かれた本をつかみながら呟くに、ハーマイオニーの驚いた声がかぶさった
「ギルデロイ・ロックハートのサイン会があるのよ。本物の彼に会えるのよ!!」
「ギデロ・・・?誰それ」
「ギルデロイ、よ。知らないの!?」
「あぁ・・・、そういえばこの本書いた人だね!!」
が「泣き妖怪バンシーとナウな休日」と書かれた本の背表紙を見ながら思い出したようにいった
「でも・・・、どんな人なの?ハーマイオニー知ってる?」
ハーマイオニーが心底おどろいたような表情をした
しかし、実際に驚いているのは、ハリー、ロンの三人に違いない
何しろ、あのハーマイオニーが黄色い声をあげているのだから
ハーマイオニーはハーマイオニーで、大声で叫んでしまったことが恥ずかしいらしく、の手を引っ張るとウィーズリー一家がいるところを探し、こっそり割り込んだ
ハリーとロンがそれに続く
モリーは四人が来たにもかかわらず、「まぁ、来たの」といったっきり、髪を撫で付けっぱなしだった
何日か前にロンに言われた言葉を思い出す
―――そういえば、モリーおばさんもロックハートが好きなんだっけ
前に並んでいる人が減っていくにつれ、ロックハートの姿が見えてきた
はチラリとハーマイオニーに目を走らせた
心なしか、いつもより表情が明るい気がする
それにしても、
とはロックハートをじっくりと見た
少しパーマがかかった金髪に、緑色の瞳をしている
サインを求める人一人一人に爽やかな笑顔を浴びせていた
すると突然、彼がこちらを見た
は慌てて目を逸らす
しかし、ロックハートは突然立ち上がり大声で叫んだ
「・!!!間違いない、黒い髪に紅い瞳、それからその左手に巻いてある包帯からして・・・、君は・だね!!と、いうことは・・・、やはり!!」
更にさっきよりロックハートの笑顔が深まった
「ハリー・ポッターもそこに!どちらかがいる限り、もう一方もいる。『ハリー・ポッターと・は、ペアだと考えてもいい』。これは間違っていなかったようだね。さぁ、こっちへ!!」
反論する間もなく、とハリーはカメラマンに腕をつかまれ、正面に引き出された
そこへロックハートが進み出て、二人に挟まれる形で肩を組む
「さあ、笑って。にっこり!!!」
シャッターと拍手を一斉に浴びるはめになった
カメラマンがやっとカメラを下ろしたとき、ハリーはすでに指の感覚がなかった
「みなさん、なんと記念すべき瞬間でしょう!!」
ロックハートが声を張り上げた
「この二人は、私の自伝だけを求めるためにこの書店へ来た。しかし、思いがけず、私の書籍全部を手にすることになる」
両手をあげられたかと思ったら、その上にズシリと重みがかかった
「無料でね」
観衆からおぉーという声と共に、拍手が送られる
ロックハートは、二人に戻るようにと促した
「みなさん、ここに、誇りを持って発表いたします。この九月から、私がホグワーツ魔法魔術学校にて、闇の魔術に対する防衛術の担当を引き受けることとなりました!!!」
さっきよりも大きな歓声が上がった
その殆どが、女性のものであったというのは、気のせいではないだろう
はモリーに本を渡し(というより、サインをもらうからと奪われ)少し外に出ると伝えると、人ごみの中を通り、書店から抜けた
八月だというのに、空気が涼しく感じた
それほど、書店の中の人口密度は相当なものだったのである
「トム・マールヴォロ・リドル」
突然、知らない単語が口をついて出た
慌てて自分の口を塞ぐ
「トム・マールヴォロ・リドル・・・。ヴォルデモート卿・・・。」
自分は何を言っているのだろうか
何故宿敵の名前が自然と口からこぼれるのだろうか
すると、包帯が巻いてある左腕が一瞬、電気が走ったように痙攣した
「っ・・・」
傷の痛み。危険信号。去年の一年で嫌という程思い知らされていた
トム・リドル。トム・マールヴォロ・リドル
誰なのかはともかくとして、それの存在がの中で確信に変わりつつあった
何なのかはわからない。だれど、確信はある
不思議な感覚だった
「「!!」」
突然、肩を後ろから叩かれた
この見事に重なった声。フレッドとジョージしかありえない
「どうしたんだよ?」
「さっきからさ、手、すっごいきつく握ってたみたいだけど」
「え・・・」
自分でも気付かなかった
左手を開く。汗で濡れていた
「ちょっと、考えごとしてて」
「「そっか」」
二人は何もなかったように明るい笑顔を見せた
これがハーマイオニーだったら、から真相を聞きだすに違いない
フレッドとジョージのいい意味での無神経さが今のにはありがたかった
「あら、、そこにいたの」
モリーが店から出てきて、を見つめた
は何を言いたいのかわかった気がした
『折角あのロックハートに会えるのに、そんなにすぐ出て行っちゃって、勿体無いわ』
顔に明らかにそう書かれている
「ごめんなさい。人が多いところ、ちょっと苦手で」
口に出される前に慌てて言うと、モリーはいいのよ、と笑った
「もう、用がなかったら家に戻るけど、みんな用事は済んだわよね?」
モリーは一人一人の顔を確認した
フレッドとジョージははやく買ったものを開きたいと言わんばかりに何度も首を縦に振った
「じゃあ、漏れ鍋に戻りましょうか。フルーパウダーで隠れ穴に帰るわよ」
それを聞いた瞬間に、とハリーが同時にうっ、と唸った
見逃さなかった双子が素早く言った
「ってもしかしてフルーパウダー苦手か?」
「何なら、俺たちが一緒に・・・」
「けけけ結構です!!!」
は手をぶんぶん振りながら慌てて先に行ってしまったモリーを追いかけた
あとがき
受験終わってやっと続きがかけました
今まではのろのろ更新でしたが、
これからは出来るだけはやくできればいいなぁ・・・と
ちなみに途中でヒロインが「リドル」と言ったのは思い付きです
・・・後でなんとかするさっっ!!
では、ここまで読んでくださってありがとうございました!
2008.2.20 晴天マユミ
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