鉄格子をはめられてから三日が経った
ダーズリー家はまったく手を緩めるつもりがないようだ
今日も、陽が沈むのを見ては、自分たちはこれからどうなるのかを考え、惨めな気分に浸った
夜になってもなかなか眠れず、がずっと窓の外を眺めていた
夜空いっぱいに星が見える―――その中に一段と強く光る星があった
はしばらくじっと見ていたが、しばらく見ているうちに自分の目がおかしいのかと思い始めた
なんと、その星が自分のいる所に近づいてきているのだ
何回か瞬きをしたが、目の錯覚ではないようだった
―――もう一度よく見てみると、星ではないようだった―――トルコ石色の旧式の車が空中に浮いていた
「嘘っ!?ハリー!!ハリー来て!!!」
は思わず声を上げ、ベッドにいるハリーを引っ張ってきた
「何・・・?」
ハリーは眠そうに目をゴシゴシとこすった
しかし、窓の外にあるものを見た瞬間、眠気が一気に吹っ飛んだ
「ロン!!??」
Act.2 Go to the Burrow
窓の外には、赤毛の、そばかすだらけの少年が車に乗ってこちらを見ていた
間違いなく、ロン・ウィーズリーだった
ハリーは窓際に忍び寄り、窓ガラスを押し上げた
「ロン、一体どうやって!?」
「パパの車を借りたんだ。フレッドとジョージも一緒さ」
ロンが笑いながら言うと、運転席からフレッドが顔をのぞかせた
ジョージは後ろに座っている
「なんで手紙に返事をくれなかったんだ?手紙を一ダースぐらい出して、家に泊まりにおいでって誘ったのに。」
「ごめん、説明してる暇はないんだ。」
ハリーは寝室で眠っているであろうダーズリー夫妻のことを考えながら言った
「ふーん。まぁ、いいや。後で教えてね。僕たち、君らを家に連れて行くために来たんだ。・・・荷物はある?」
「ううん。下の階にある。・・・物置に入ってるんだけど、鍵がかかってるの」
は困ったように言った
フレッドとジョージは目を合わせると、車を鉄格子に近づけ、なんでもない普通のヘアピンを投げてよこした
「「それを鍵穴をあけろよ。ならできるさ」」
双子は打ち合わせでもしていたかのようにピッと指を立てた
は唖然としてピンを見つめた
ピッキングなんて―――思いつきもしなかった
「でも、やったことないし・・・」
「やってみるしかないよ」
おどおどしているにハリーが言った
はしばらくして、小さく頷いた
扉の近くまで行くと、鍵穴にピンを差し込んだ
幸い、この部屋の扉は、中からでも外からでもあく仕組みになっているようになっている
少しずつ、ゆっくりとピンを動かすと、カチャと言う音がして扉が開いた
ロン、フレッド、ジョージ、ハリーがおーっと声を上げる
も自分が開けられるとは思っていなかったので、相当驚いたようだが、すぐに忍び足で階段を下りた
上では、ハリーが鉄格子の近くで何かをしているようだ
鍵穴にピンを差し込む
さっきのように慎重に、少しだけピンを動かした
途端、カチャっと音がして鍵がはずれた
またしてもこんなに簡単に行くと思っていなかったは驚いた
しかし、時間がないので、急いで物置の中に入った
まず、トランクケースを運び出した
ホグワーツから帰ったときのままなので、杖などは全部中に入っているはずだ
ハリーの分と自分の分を抱えて、階段を慎重に上る
部屋に入ると、なんと鉄格子がはずれていた
「あれ!?鉄格子は!?」
はびっくりして窓から体を乗り出した
車から垂れ下がっているロープに鉄格子がつながっている
「ロンたちがはずしてくれたんだ」
ハリーがの荷物を受け取りながら質問に答えた
フレッドがさらに車を近づけてくる
後ろにいるジョージが後部座席のドアを開けた
トランクを窓から押し出すと、それはすっぽりと後部座席に入り込んだ
二個目も同じように押し出した
「あと、箒が下にあるよ」
が部屋の扉の近くで言った
二人は、そろりそろりと物置部屋に行くと、それぞれ自分の箒を持った
軋む階段に気をつけて二階に上ろうとした
しかし、
ガシャーン!!!!
突然、ハリーの箒が階段横に飾ってあるダドリーの写真が入った額縁を落としてしまった
二人はハッと息を呑んだ
パリーンという音が家全体に響き渡ると同時に、バーノンの雷が落ちた
「何をしているんだ!!!!」
その言葉を合図にするかのように、とハリーは一目散に駆け出した
部屋に飛び込み、ハリーはニンバスをジョージに投げ、自分も窓から車に飛び乗った
「、はやく!!!」
ハリーが手を差し伸べる
も続こうとするが、後ろからホーという鳴き声がしたのに気付く
「ヘドウィグとナルがまだ残ってるよ!!」
は素早く部屋の隅に駆け戻ると、すばやく鳥かごをつかんで窓に近づいた
その時、扉がバーノンの手によって壊された
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・どーも・・・」
一瞬、時が止まったかのようだった
時間が動き出すかと思われた瞬間に、はヘドウィグのかごをハリーにパスしていた
バーノンはぶるるるっと顔を振ると、一目散にを捕まえにかかる
「うわっ!!!」
がすれすれでよけた
そして、もう普通の方法では脱出できないと悟ると、ハリーに向かって先に少し進んでて、と合図する
ハリーはの意図に気付いたようで、フレッドに向かって何か合図をした
エンジンの音がして、車はまどから少し遠ざかる
ハリーは残されたを見た
幸い、サンダーウィザードはまだ手にある
はもう一度バーノンからよけると、片手で箒を、もう片方でかごしっかりとつかんだ
「ごめんね、ナル。ちょっと怖いかもしれないけど、我慢してね。」
ねずみ色の梟は言葉がわかったかのようにホーと鳴いた
次の瞬間、は箒にも跨がずに窓から外へ飛び出した
夜の風が全身に当たる
箒はをぶら下げたまま、車に近づいた
バーノンが窓から身を乗り出し、悪態をつくのがきこえる
は顔をほころばせた
「、こっちへ」
助手席からロンが手を伸ばした
はかごをロンに渡すと、箒を更に上昇させ、後部座席に乗った
「・・・さすがに箒が入るときついね」
「まぁ、細かいことは気にするなよ」
から向かって二つ右に乗っているジョージが言った
「うん!!!」
「あ、そうだ。、ハリー。」
ロンが助手席から顔をのぞかせた
「誕生日、おめでとう。」
車は一晩かかって、小さな庭のボロボロな車庫のわきに着陸した
脇に、くねくねとまがった家があった
入り口近くに看板に『隠れ穴』と書いてある
ウィーズリー三兄弟はコソコソと回りを見回すと、とハリーを家の中へ招き入れた
「あ、そこ、頭ぶつけないように気をつけて」
忠告を聞き、慌ててとハリーは少ししゃがんで扉をくぐった
「わぁ・・・」
から感嘆の声が漏れた
部屋の中はお世辞にも豪華だとは言いがたかったが、自分を包んでくれるような暖かさがあった
ダーズリー家から来た二人の少年少女が部屋中のいろいろなものを見て驚いている隣で、フレッドとジョージは「一個ぐらいバレないさ」とお菓子に手をのばした
突然、ロンが小さく「あ」と震えた声をあげた
「「「・・・ママ。」」」
双子とロンが声をそろえた
はおどおどとその視線の先をたどった
―――まるで、鬼でも見たような気分だった
三人の母親であるモリーは優しそうな顔とは裏腹に、鬼のようにこちらへ突き進んできて、三兄弟の前で止まった
「おはよう、ママ」と、ジョージ
モリーが凄みのある睨みをきかせると、ジョージはたちまち縮こまった
「ベッドは、空っぽ!メモも置いてない!車は消えてる!自分たちが何をしたかわかってるの!?どれだけ心配したことか!!!お父さんがお帰りになったら覚悟なさい!!」
モリーは早口で一気にそれだけの事を言った
そして、すぐに優しい表情に変えると、ガクガクと震えているハリーとの方へ向いた
「二人とも、よく来てくれたわ。キッチンに入って、朝食をどうぞ」
最後ににっこりと微笑む
ハリーとが恐る恐るモリーの指差す方へ進むとフレッド、ジョージ、ロンが後ろからついてこようとしたが、モリーによって行くてを阻まれた
「お前たちはあっち」
モリーは指で庭を指した
「庭小人の駆除をしてきなさい」
「げ!!勘弁してくれよ」
「問答無用よ」
三人組がとぼとぼと去っていくのを見かねたが、モリーに言った
「あの、私も手伝います!!今回の件は、私の責任でもあるし」
「優しい子ね。でも、いいのよ。気にしなくて」
「でもお願いします!手伝わせてください!」
モリーはを見て、「そこまで言うなら」、と困ったように微笑んだ
「フレッド、ジョージ、ロン。戻ってきなさい!」
手伝う気まんまんでいたは予想外の言葉に首をかしげる
三兄弟が瞬間移動でもしたのかと思うはやさで戻ってきた
モリーはため息をついた
「駆除は今日のところ許してあげるわ。に感謝しなさい。」
フレッド、ジョージ、ロンは目を輝かせた
「本当に!?」
「ありがとう、!!」
「助かったよ!!」
三人が口々ににお礼を言った
「でも、」
三人の希望を絶つような一言をさらりとモリーが言った
「今日の一日の家事は、すべてあなたたちがやりなさい」
「え!!僕たちまだ魔法使えないのに!!!」
結局、ウィーズリー三兄弟は、頭を抱えることとなった
あとがき
最近部活の帰りが遅くてなかなか更新が進みません
本当にはやくリドル出したい!!!ラブラブさせたい!!!((爆
では、ここまで読んでくださってありがとうございました!
2007.7.8 晴天マユミ
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