その夜、四人は殆ど口をきかなかった
ハーマイオニーは突破しなけらばならない呪いを一つでも見つけようと資料をあさっていた
ハリーとロンはこれから自分たちがやろうとしていることに考えをめぐらせていた
は・・・談話室にいなかった
Act.19 Traps
女子の寮で、一人、は自分のトランクをあさっていた
クリスマスの時に貰ったマントを探しているのだ
ペンダントはずっとつけているが、マントは大きいから、ずっと持っているわけには行かない
確か、『必要になるときが来る』とあったはずだ
なので、一応持っていく事にしたのだ
手に軽い感触があると、それをゆっくりと引っ張り出した
改めて薄いマントだなあと思う
―――ポケットに入ったりして
もしかしてと思っておってみると、本当にポケットに入る大きさになった
一人で驚く
とりあえずそのまま、階段を駆け下りて談話室に行った
途中、ハリーや他の生徒とすれ違った
ハリーはどうやら透明マントを取りに行ったらしい
談話室に駆け込むと、ハーマイオニーはまだ一人でブツブツ言っていた
他の生徒はもういなかった
「、何しにいってたんだ?」と、ロン
はポケットの中のマントを取り出した
「一応これをもっていこうと思って・・・。」
「何、それ?」
一人だけそのマントを見たことがないハーマイオニーが問うた
「に贈られてきたマントだよ。」
「どんなマントなの?」
「それが・・・『いずれ、これが必要になるときがくるだろう』っていう手紙だけ入ってて、他には何もなかったの。羽織ってみたけど、何も起こらないし。でも、一応持っていく事にしたんだけど・・・」
「じゃあ、羽織ってみてくれる?」
ハーマイオニーの言葉に、はうんと頷いた
マントを広げ、フワッ・・・と羽織ってみる
ハーマイオニーは口を半分あけ、ロンは持っていた蛙チョコレートを逃がしてしまった
「ど、どうしたの??」
その反応に戸惑う
「き、君・・・透明だよ!!!」
「えぇっ!?」
は自分を見た
首から下がない!!!
戻ってきたハリーはわっと声をあげた
「え・・・でも、クリスマスの時は何も起こらなかったのに・・・」
「『いずれ、これが必要になるときがくるだろう』ってそういう意味だったんじゃないか?」
「え・・・?」
「そういう風に、必要な時に必要な物に変わってくれるっていうこと。だから持ってきたんじゃないの?そのマントを」
「そ、そうだけど・・・」
実際そうなのだが、やはり本当にそうなったときは驚く
はもう一度自分を見てみた
幻覚ではない。確かに体がないのだ。
四人はしばらく驚いていたが、ふと今はそんな事を思っている場合ではない事に気付いた
ハーマイオニーが提案した
「じゃあ、私はのマントに入れさせてもらうわ。ロンはハリーのに入って」
「君たち、何してるの?」
部屋の隅から声が聞こえた
ネビルがひじかけ椅子の陰から現れた
「なんでもないよ、ネビル。なんでもない。」
「わかってるよ。また外に出るつもりでしょう」
「違うって」
ネビルは四人の後ろめたそうな顔を見つめた
「これ以上減点されたら、グリフィンドールが大変なことになる。ぼ、僕戦うぞ!」
「ネビル、本当はこんなことしたくないけど」
ハーマイオニーが杖を持って進み出た
「ペトリフィカス トタルス」
呪文をとなえ終えた瞬間、ネビルの両腕と両足が体にバチッとはりついた
体が固くなり、鈍い音と共に、うつぶせにパッタリ倒れた
ロンが痛そうだな・・・という表情をして言った
「ごめん。ネビル。これも君のためなんだよ。」
動けなくなったネビルを床に転がしたまま外に出るのは気が引けたが、もう時間がなかった
二つのペアに分かれ、マントをかぶった
はぐれないように、出来るだけ近づいて端っこにいるとハリーが手を繋いだ
たどり着くまで人間には誰にも会わなかった
フィルチの猫―――ミセス・ノリスと、幽霊のピーブスには会ったが、たいしたことはなかった
ミセス・ノリスはただ素通りすればよかったし、ピーブスはハリーが血みどろ男爵の声を真似て追い払った
四階の右側の廊下に入ると、とハリーはマントを取った
奥まで行き、扉に魔法をかけようとするが、それは既に開いていた
部屋の中では三頭犬が大きないびきをかいて眠っていた
綺麗なハープの音色がする
「スネイプが置いていったんだ。」
「とりあえず、こいつの足を動かそう。これじゃ仕掛け扉を開けられない」
ハリーの合図で四人は三頭犬の足を押した
僅かであるが、動いた
それを何度か繰り返す
ついに、仕掛け扉が姿をあらわした
屈んで引き手を引っ張ると、扉がはねあがった
下は真っ暗だった
底が見えない
『僕(私)が最初に行くよ』
ハリーとは同時に言い、顔を見合った
「だめだ。僕が先に行く。君の身に何かあったら・・・」
「あのねー。私だってハリーと同じ環境下で育ったんだから、考えることは同じだよ?」
ハリーはしばらく黙ったが、小さく「わかった」と言った
「ロン、ハーマイオニー。もし僕たちに何か起きたら、君たちだけで逃げるんだ。そしてダンブルドアにヘドウィグを送ってくれ。」
「・・・待って、さっきより、静かになってない・・・?」
が言ってすぐ、ロンの肩になにやらヌメヌメしたものが落ちてきた
「うぇ〜〜!なんだこれ・・・っ!?」
しばらく沈黙してから、四人は状況を理解し、恐る恐る上を見上げた
止まったのはハープの音色と
フラッフィーのいびきだった
「「うわぁああああああ!!!!!!!」」
「飛べ!飛び降りるんだ!!!」
ハリーとが最初に飛び降りて、その後にロン、ハーマイオニーが続いた
危機一髪だった。三頭犬はロンが飛び降りた直後に、入り口に顔を突っ込んだ
鈍い音を立て、四人は何かの上に着地した
「この植物のお陰で助かった。ラッキーだったよ・・・いたっ!」
ロンが言い終わるや否や、その植物は足に絡みついた
知らないうちに両手、両足が固く締め付けられていた
「動かないで!これは『悪魔の罠』よ!振りほどこうとすればするほど、強く絡み付いてくるわ!」
「そりゃあ、じっとしていられるわけだ!」
ロンはハーマイオニーの忠告をきこうともせず、もがいた
ハリーは胸に巻きついたツルと格闘していた
じっとしていたとハーマイオニーは植物に飲み込まれてしまった
「!ハーマイオニー!!!」
下でストンと言う音がした
「じっとしてて、大丈夫だから!!!」
が叫んだ
ハリーは目をぎゅっと瞑った
ツルが全身に巻きついてくるのがわかる
次の瞬間、ハリーは固い床の上に着地した
どうやら助かったようだ
「ハリー!大丈夫!?ロンは?じっとしてないの?」
「ああ・・・してないみたい。」
「あぁもう!」
ハーマイオニーはイライラしながら何かつぶやいた
「薬草学の本で何か読んだわ。悪魔の罠・・・悪魔の罠・・・苦手な物は・・・。そう、お日様の光!」
ハーマイオニーは杖を取り出すと、落ちてきた場所に向けた
「ルーマス・ソレム!」
杖をふると、光が植物に向かって噴出した
ロンに絡み付いていた植物は音を立てて束縛を解いた
ロンが上から落ちてくる
「ふーっ・・・」
ロンは立ち上がって、埃をパンパンとはたいた
「じっとしてたおかげだ・・・」
「・・・ハーマイオニーがちゃんと勉強してくれてたお陰だよ。」
ハリーは呆れたような冷たい目でロンを見た
ロンは少したじろぎ、あははと乾いた笑いを漏らした
「先に進もう。こっちだ。」
ハリーは奥へ続く石の一本道を指した
進んでいくうちに、前のほうからチリンチリンという音がしてきた
「ゴーストかな?」
「わからない・・・羽の音みたいに聞こえるけど」
通路の出口に出ると、音の正体がわかった
宝石のようにキラキラとした無数の小鳥が、部屋いっぱいに飛びまわっていた
四人は恐る恐る部屋に入ったが、鳥は襲ってこなかった
は上を見上げた
これには何の意味があるんだろう・・・
ロンは奥にある扉にアロホモラ呪文を試した
「だめだ!開かないよ!どうする?」
はじっと鳥を見た
輝いている―――『輝いている』?
「鍵だよ!羽のついた鍵!ってことは・・・ほら!」
は一角を指差した
地面から少し離れた所に箒が浮いている
「鍵をつかまえなきゃいけないんだ」
は箒のある所へ行き、もう一度待っている鳥―――否、鍵を眺めた
どれも同じように見える
はもう一度目を凝らして見た
一つだけ他のより古くて、片方の羽が折れているのがあった
「あれだ!あの羽が折れてるの!」
「君がやれよ。スネイプに出来たんだ。君にも出来るよ」
は少しの間を置いて息をついた
箒を握る
すると、今まで頭上を舞っていた鳥が一気にに向かってきた
は慌てて箒に乗った
下にいる三人に先に扉の所で行っててと目配せすると、急上昇した
鳥が群がってくる
はそれを振り切ると鍵に向かって手を伸ばした
―――つかんだ!
急降下すると、ハーマイオニーにそれをパスした
ハーマイオニーはそれを鍵穴に突っ込む
扉が開く
三人が先に入ると、は箒に乗ったまま中に飛び込んだ
ハリーは素早く扉を閉めた
グサグサグサという音がする
おそらくを追っていた鳥が扉に刺さった音だろう
すると突然、の乗っている箒がものすごいスピードで次の部屋へ進んでいった
「うわっ!!!」
「!?」
三人はの後を追った
次の部屋は真っ暗で何も見えなかった
が、一歩中に入り込んだ瞬間、突然光が部屋中にあふれ、驚くべき光景が目の前に広がった
三人はチェスの盤の上にたっていた
の箒はすでに次の部屋に飛んでいってしまっていた
三人はその後を追う・・・が
ガシャン!という音をして、白い駒が剣を振り上げて三人の行く先を阻んだ
「!!!」
ハリーが叫んだ
どこに行ってしまったのだろう―――
「何とかしなきゃ!が行っちゃったよ!」
ハリーは焦った
ロンはゆっくりと黒い駒の方へ向かっていく
「ここから出る方法は一つしかないよ。・・・チェスに勝つんだ」
箒に乗っていたはバランスを崩し、どこかに投げ出された
手足を軽く打ったが、大きなケガはなかった
どうやら一人だけ、最後の部屋に来てしまったようだ
周りを見回してみると、部屋は黒い炎に包まれていた
ゆっくりと立ち上がって見ると、前方に先客がいた
「!!あ、あなたが・・・!?」
―――そこにいたのは、冷ややかな笑みを浮かべたクィレルだった
あとがき
話の最初→談話室
話の最後→賢者の石がある部屋
・・・話飛びすぎだ!!!と自分で思います・・・
さて、いよいよ次回、ヒロインが直接『あの方』に会うことになります(多分
どうなるのか!?・・・実はまだ詳しくは考えてなかったりします。(おい!
では、ここまで読んでくださってありがとうございました
2006.8.15 晴天マユミ
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