ハグリットの指示で、四人はすぐさま小屋を出て、寮に戻る事にした
足の隅々まで、少しもはみ出さないようにし、息もつかずにひたすら歩いた
なんとか見つからないようにしないと


しかし、裏口から城に入ったところで、ロンがうっかりハリーの足を踏んづけてしまったのである
そのせいで透明マントが落ち、ハリーはバランスを崩し、続いてロン、、ハーマイオニーの順番でハリーの上に倒れこんだ

「痛い痛い!!」

下敷きにされたハリーは今にも涙が出そうな声で叫んだ(小声だが)
だが、本当に泣きそうになることが四人を待っていた
一番最初に発見したは、咄嗟に透明マントグチャグチャにしてを隠した


、ポッター、ウィーズリー、グレンジャー・・・来なさい」



目の前にいたのは―――マルフォイをつれたマクゴナガルだった





Act.17 The penalty




「まったくあなたたちは、一体何を考えているのですか!?」


教室に連れ込まれた四人は、マクゴナガルにこっぴどく叱られていた
マルフォイは少し離れた場所でざまあ見ろという顔をしている


「こんな真夜中にベッドを抜け出すなんて。あなたたちには失望させられました。五十点ずつ減点です」
「五十点!?」

ハリーとロンが声を揃えた

「一人、五十点です。五人には、処罰も受けてもらいます。」


マルフォイの顔がひきつった

「先生、今『五人』、と仰いました?」
「ええ、ミスターマルフォイ。理由はどうであれ、夜中に外出していたのはあなたも同じです。」


マルフォイが憎たらしそうにハリーの方を向くと、こんな時にも関わらず笑いを堪えているようだった







処罰は試験を一週間程後に控えたある日だった


夜十一時、はいつもと同じようにハリー、ロン、ハーマイオニーと共に玄関ホールへ向かった



フィルチとマルフォイはもう来ていた
何故かネビルもいた。 どうやら、あの日、寮にいないたちを探しにきていて、マクゴナガル先生に見つかったらしい
マルフォイはバツが悪そうな顔をしていたが、いつもの冷静さを失っていた



「ついて来い」


フィルチはランプを灯し、先に外にでた

六人はオズオズと後に続く


「昔の体罰がなくなってまったく残念だ。親指をくくって地下牢の天井から数日吊るしたもんだ」


「昔の体罰がなくなってくれてよかったよ」
は隣にいるハリーにだけ聞こえる声で言った




一行は真っ暗な校庭を横切ってハグリットの小屋の前まで来た
ハリーはほっとした。ハグリットと一緒ならそんなに悪くはないだろう


ハグリットはなにやら元気がないようだった
フィルチは呆れたようにいった


「まだあのドラゴンの事を考えてるのか?」
「あいつはもういねぇ・・・ダンブルドアが森に返しちまった」
「その方が幸せだよ」

ハリーは思わず口を挟んだ

「でも、他のドラゴンにいじめられたらどうするんだ?」


ハーマイオニーははぁとため息をついた

「いい加減にしろ。これから入るのは森なんだぞ」
「森だって!?」

フィルチの言葉に反応したのは、ハグリットではなくマルフォイだった


「冗談じゃない!だ、だって森には・・・狼男が!」
「・・・いるのはもっと恐ろしいもんだ。」


マルフォイはヒッと声をあげた
フィルチはヒヒヒと笑うと城の方へ消えた


「僕は・・・僕は森へなんか行かないぞ。森に行くのは召使いがすることだ―――生徒にさせることじゃない」

はそれがハグリットを召使い扱いしているように聞こえて、ムッとしたので、マルフォイの足を思いっきり踏んづけてやった
マルフォイは声にならない叫びをあげた

「ホグワーツに残りたいならいかにゃならん。追い出された方がいいならさっさと城に戻って荷物をまとめろ!」



マルフォイはしばらくハグリットをにらみつけていたが、やがて視線を落とした
ハグリットはそれを確認すると、先頭にたって、みんなを森のはずれまで連れて行き、一旦止まった


「よーし、それじゃよくきいてくれ。俺たちが今夜やろうとしてることは危険なんだ。みんな軽はずみなことをしちゃいかん。しばらくは俺についてきてくれ」


森の中はしーんとしていた
ハグリットは全員を集めると、一点を指差した


「あそこを見ろ。地面に光った銀色のものが見えるか?あれはユニコーンの血だ。今週になって、二回目だ。水曜日に最初の死骸を見つけた。みんなでかわいそうなやつを見つけ出すんだ。助からないなら、苦しまないようにしてやらねばならん」
「ユニコーンを襲ったやつが先に僕らを見つけたらどうするんだ?」


マルフォイは明らかに動揺した声で言った


「俺やファングと一緒におれば、この森に住むものは誰もおまえたちを傷つけはせん。道を外れるなよ。よーし、では三組に分かれて別々の道を行こう。」
「僕、ファングと一緒がいい!」

マルフォイが即座に言った

「よかろう。いっとくが、そいつは臆病じゃよ。そんじゃ、ハリーはと、ドラコはネビルと、ロン、ハーマイオニー、おまえさんたちは俺と来い」



みんな別々の道を行った
ハリーとは下を見て慎重に進んだ

「ユニコーンを見つけたら、緑色の光を打ち上げるんだよね」
「うん。そう。」


二人とも安全な足場を見つけると、あちこち見回してしてユニコーンを探した


「いないみたいだね、。」
「うん。ん?」
「え、どうしたの?」
「・・・ううん。なんでもない」


は前の方の茂みを誰かが通りすぎたような気がしたが、敢えて言わないでおいた
そのとき、いきなりピューッと音がして赤い火花ががった


「・・・赤い火花だ!誰かに何かがあったんだ!行こう、!」


赤い火花は随分近くであがったようだ
はハリーに続いて走った


「あそこだ!ネビルたちだよ!」



ネビルは地面にへたれこんでいた
どうやら火花を打ち上げたのはネビルらしい


「何があったの?」

ハリーは横に立っているマルフォイを無視するとネビルの前にかがみこんで訊いた

「そ、その・・・マルフォイが僕に後ろからつかみかかって―――僕つい火花をあげちゃったんだ」




「まぁ、二人とも無事でなによりだけどさ、・・・ドラコ、あなたアホでしょ?」

が呆れたように言った


「何があったんだ!?」

突然、ハグリットが茂みから飛び出して、その場にいた四人ともひゃっと声をあげた
ハリーが説明すると、ハグリットは一旦マルフォイを睨み、はぁとため息をついた


「・・・とりあえずロンとハーマイオニーの所に戻るぞ。組替えだ。」


何分か経ち、五人はロンとハーマイオニーの所に戻ってきた
ロンはハグリットがカンカンに怒っているのを不思議がったが、ハーマイオニーが訊くのを止めた


「お前たち二人がバカ騒ぎしてくれたお陰で、もう捕まるものも捕まらんかもしれん。組み分けを変えるぞ。ハリー、ネビル、ファングと一緒だ」
「ファングと一緒に行くのは僕だ!」

マルフォイが食いかかった
ハグリットはついに堪忍の緒が切れたようだ


「いい加減にしろ!元はといえば、おまえさんが悪ふざけしたからこんなことになったんだ!」

マルフォイはブツブツ言いながら黙った


「ロンとハーマイオニーはさっきと同じく、俺と一緒だ。はマルフォイと行け」



マルフォイの表情が少しだけ明るくなる
どうやら、と行けるということで機嫌がよくなったようだ



はハリーたちにまた後で、と手を振ると、マルフォイと森の奥へと向かった


「なんで僕がこんなことを・・・」

マルフォイがボソッと愚痴を漏らした

「こんなことしてるって父上がきいたら何ていうか。」
「・・・ごめん。想像できない。」


は素直に答えた
―――何ていうんだろう。本当に。



更に奥へと進み、三十分程歩くと、最早道をたどるのは無理になった
木の根元に大量の血が飛び散っているのをみて、マルフォイは冷や汗を流した


地面に純白に光り輝くものがあった

二人は更に近づいた
ユニコーンだ。死んでいる。



長くしなやかな脚は、倒れたその場でバラリと投げ出され、真珠色に輝くたてがみは暗い落ち葉の上に広がっている


「・・・かわいそう。」


がもう一歩近づこうとした瞬間、ズルズルとすべるような音がした
マルフォイは叫びをあげそうになり、は慌ててその口を手で塞いだ
左腕がズキズキする。入学したときと同じ感じだ。
手を離した時、マルフォイはほんのり赤くなっていたが、は気付かなかった


―――頭をフードにスッポリ包んだ何かが、地面を這ってきた
二人はまるで金縛りにあったように動けなくなった


マントを着たその影がユニコーンに近づき、傷口から血を飲みはじめた



「う、うわぁああああああああ!!!!!」

時間が再び動き出したように、マルフォイが絶叫した
逃げ出した彼の姿はすぐに見えなくなった


残されたのは一人になってしまった
フードに包まれた影が頭を上げ、を見た
ユニコーンの血がフードに隠れた顔から滴り落ちる


それはぬくっと立ち上がると、に向かってスルスルと近づいてきた
は恐怖のあまり動けなかった
それでも顔を見据えたまま、目を瞑ろうとはしなかった


――――――か・・・――――――


クィディッチの時と同じ声が頭の中に響く


――――――あなたは一体誰なの!?――――――


数ヶ月前と同じ問いかけをする
今度は、返事は返ってきたものの、自分の質問に対してではなかった


――――――・・・俺様の側につけ、――――――
――――――名前も知らない人につくわけないでしょ!?――――――
――――――・・・なら、痛みを味わってもらおうか・・・クルーシオ――――――


「っ!!??」


その瞬間、全身を鋭い痛みが走った
今までに味わったどの痛みよりも凄まじいものだった
はその場にうずくまった


頭の中に高笑いが響く


――――――・・・さあ、決めろ。痛いのは嫌だろう?俺様の側につくんだ、・・・ッ!――――――
――――――だ・・・から・・・っ、名前知らない人に・・・つけ・・・って、いう・・・方が・・・無理な話・・・じゃない!――――――



痛みが更に激しくなり、は倒れこんだ



――――――・・・俺様とてお前を傷つけたくはない。だからはやく来い――――――


「もう・・・我慢できなっ・・・い!誰かたすけ・・・て!!!」


最後の力を振り絞って叫んだ瞬間、痛みが消えた
普通の状態だというのをこんなに幸せに感じたのは初めてだった

重い頭をあげると、目の前に奇妙な生き物がいた
腰から上は人間で、下は馬
確か本で読んだことがある


―――ケンタウ・・・ロス?


の記憶はそこで途絶えた



あとがき
あぁ〜!!やっとあの方登場!!
なんか・・・私が書くとあれですね。
キャラが違うような・・・あってるような・・・
とにかく、やっとあの方を出せて満足してます♪
早くリドルと関係持たせたい!と思ってる今日この頃。
まだ先の話なんですけどね・・・
では、ここまで読んでくださってありがとうございました。
2006.8.11 晴天マユミ
/賢者の石/