ハリーはを置いてグリフィンドール生の輪を脱出し、箒置き場へ向かった
右手にニンバス2000、左手にサンダー・ウィザード
はまだ喝采を受けているだろう
ちょっと困ったように笑ったの顔を思い出すと自然と笑みがこぼれた
も僕も、誇りにできることをやりとげたんだ。
箒置き場に来ると、ハリーはまずの箒を置いた
城の正面の階段をフードをかぶった人物が急ぎ足で降りてきた。
歩き方で誰なのかわかる。スネイプだ。
ハリーは再びニンバス2000に跳び乗り、飛び上がった
Act.16 The Norwegian Ridgeback
「ふー・・・」
なんとかグリフィンドール生の輪を抜けたは、ロンとハーマイオニーに囲まれて談話室に向かっていた
フレッドとジョージから情報を仕入れたロンの話によると、二人がキッチンから失敬してきたケーキやらなにやらで、とハリーをたたえて盛大なパーティを開催するらしい
お腹が鳴りそうなくらいペコペコなにとって、その企画はありがたかった
「そういえば、ハリーはどこ行ったんだろう?」
「ここだよ」
いつのまにか後ろにいたハリーが言った
「ハリーったら、いったいどこに行ってたのよ?」
「それどころじゃない。」
ハリーが息もつかずに言った
大事な話があるんだ、と三人を誰もいない部屋に連れ込み、今さっき自分が見たこと聞いたことを話した
「さっき見たんだ。賢者の石を手に入れるのを手伝えって、スネイプがクィレルを脅してた。フラッフィーを出し抜く方法とか、『怪しげなまやかし』とか言ってた。僕たちは正しかったんだよ」
「ということは、賢者の石が安全なのは、クィレルがスネイプに抵抗してる間だけってことになるわね。」
ロンが絶望的な表情をしてため息をついた
「それじゃ、三日ともたないな。石はすぐなくなっちゃうよ」
クィレルはハリーたちが思っていた以上の粘りを見せた
何週間か経ったが、口を割った気配はなかった
は十週間先のテスト計画表を立てているハーマイオニーを横目に、何か心の中に残っているモヤモヤを消し去ろうとしていた
―――本当に犯人はスネイプ先生なのかな?
確かに、ここ数週間、スネイプの行動はから見ても怪しい
それに、図書館の閲覧禁止の棚から逃げるとき、スネイプがクィレルに何か言ってるのを、は既に自分で目撃しているのだ
「ねぇ、はどう思う?」
「ぅん?」
突然話をふられ、思いにふけっていたはやっと現実世界に呼び戻された
「何が?」
「何が、じゃなくて、こ復習予定表のことよ。十週間先の試験の」
「あぁ・・・うん。ちょっと見ていい?」
紙を覗き込んでは驚いた
十週間先まで、ぎっしりと予定が入っている
ノートにはマーカーで色をつけてある
「す、すごいね・・・。ハーマイオニーだったらやらなくても大丈夫だとは思うけど・・・。」
「は、勉強するつもりないの?」
「・・・今の所はまだかな・・・」
ハーマイオニーが驚いた表情をしたそばから、
「それ見ろ。だってそう言ってるじゃないか」
と、ロンが勝ち誇った表情で言った
「試験はまだずーっと先だよ?今からそんなことする必要ないじゃないか。それに何のために勉強するんだよ。君はもう、全部完璧じゃないか」
「何のためですって?気は確か?二年生に進級するには試験をパスしなきゃいけないのよ?大切な試験なのに、私としたことが・・・もっと早く勉強を始めるべきだったわ」
試験が近づくにつれ、宿題も山のように出されるようになった。
復活祭の休みは、クリスマス休暇ほど楽しくはなかった。
試験勉強はあまりしないつもりと言っていたでさえ最初の方で筆記の宿題を終わらせるとはりきってろくにしゃべらないし、
(本人曰く、やらなきゃいけないことはちゃんとやる、らしい)
ハーマイオニーは杖の振り方やらなんやらを練習するので、二人も結局は巻き添えをくらってしまったのだ
結局、ハリーもロンも自由時間の殆どを復習に費やすことになった
「こんなの覚えられないよ!」
ロンはついに羽ペンを投げ出した
「ロン、頑張ろうよ!早く復習やっちゃえば、その分自由時間もはやくなるんだから」
もう宿題が終わり、杖で遊びながら実技の復習に入っているが顔をあげて言った
「そんなこと言ったって、これはないって・・・。あぁ、外に出て遊びたいなぁ・・・。・・・あ!ハグリット!」
ロンの声に、全員が顔をあげた
ハグリットがバツが悪そうにモジモジしながら現れた。
背中に何か隠してる
「いや、ちーっと見てるだけ」
嘘だとはバレバレだったが、とりあえず面倒ごとになるのはいやなので、それには触れないことにした
「おまえさんたちは何をしとんだ?まさか、ニコラス・フラメルをまだ探しとるんじゃないだろうね」
「そんなのもうとっくの昔にわかったよ。それと賢者のい―――「シーッ!!」
ハグリットは慌てて周りを見回した
誰もきこえなかったようだ
「そのことは大声でいってはいかん!おまえさんたち、どうにかしちまったんじゃないか?」
「そうそう。聞きたいことがあったんだ。フラッフィー以外にあの石を守ってるのは誰?」
「シーッ!!!いいか、後で小屋に来てくれや。ただし、教えるなんて約束はできねぇぞ。」
ハリーがやった!とばかりに言った
「そう?じゃあ後で行くね。」
一時間後、ハグリットの小屋を訪ねると、なぜかカーテンが全部閉まっていた
ハリーを先頭に、コンコンと扉を叩く
「誰だ?」
「僕だよ。ハリー」
「ああ。入ってくれや」
四人が入ると、ハグリットはまたすぐさま扉を閉めた
中は窒息しそうなほど暑かった
なんでこんなに暑い日なのに暖炉がついているんだろうと不思議に思いながら、は汗をぬぐった
ハグリットはお茶を入れると、四人に一人ずつ手渡した
「それで、何かききたいんだったな?」
「うん。フラッフィー以外に『賢者の石』を守ってるのは誰なのかな、って」
ハグリットはしかめっ面をした
「もちろんそんなことを教えられん。第一俺自身が知らん。」
「ねぇ、ハグリット。私たちに言いたくないだけでしょう。でも、絶対知ってるのよね。だって、ここで起きてることであなたの知らないことなんてないんですもの」
ハーマイオニーは言い終わると、に目配せした
は少し困った表情になったが、続けた
「私たちね、石が盗まれないように、誰がどうやって守りを固めたのかなって考えてるだけなんだ。ダンブルドア先生が助けを借りてるのって、誰なの?ハグリット以外に」
最後の言葉を聞くとハグリットは胸をそらした
三人はによくやったと目配せした
「まぁ・・・、そのぐらいなら教えてもかまわんじゃろう。さてと、俺からフラッフィーを借りて、何人かの先生が魔法の罠をかけて・・・スプラウト先生、フリットウィック先生、マクゴナガル先生。もちろんダンブルドア先生もちょっと細工したし・・・後はスネイプ先生だ。」
「「スネイプ!?」」
ハリーとロンが声を揃えた
「そうだ。まだあの事にこだわっておるのか?スネイプは石を守る方の手助けをしたんだ。盗もうとするはずがない」
ハリーは、みんな自分を同じことを考えているなと思った
もしスネイプが石を守るがわにいたなら、他の先生がどんなやり方で守ろうとしたかも簡単にわかるはずだ
―――クィレルの呪文とフラッフィーを出し抜く方法以外は
だったら―――
「じゃあハグリットだけがフラッフィーをおとなしくさせられるんだよね?誰にも教えたりはしないよね?」
「俺とダンブルドア先生以外は誰一人として知らん」
「そう。それなら一安心だ」
ハリーは他の三人に向かってつぶやいた
「ハグリット、窓開けていい?ゆだっちゃうよ」
「悪いがそれはできん」
はハグリットがチラッと暖炉の方を見たのに気付いた
目線をそちらに移すと、炎の真中、やかんの下に大きな黒い卵があった
ハグリットのやることだから、大体予想はつくが―――とは暑いなか少し冷や汗を流した
それに気付いたロンが暖炉の方を向いて驚きの声をあげた
「ハグリット・・・あれってドラゴンの卵?どこで手に入れたの?すごく高かったろう?」
「ああ。昨日の晩、町で知らないヤツからもらったんだ。賭けにかってな」
いつの間にか全員が暖炉のそばに集まっていた
ハーマイオニーが卵を覗き込みながらきいた
「だけど、もし卵が孵化したらどうするの?」
「ああ。図書館から本を借りて読んだ。『趣味と実益を兼ねたドラゴンの育て方』。ここを見てくれ。『母竜が息をふきかけるように卵は火の中に置け』。んでもって孵ったら、『ブランデーと鶏の血を混ぜて三十分ごとにバケツ一杯飲ませろ』。で、卵の見分け方だが、俺はノルウェー・リッジバックという種類らしい。」
ハグリットは大満足が熱く語ったが、ハーマイオニーは違った
「ハグリット。ここは木の家なのよ?」
ハーマイオニーの言葉が聞こえたのか聞こえなかったのか
ルンルン鼻歌まじりで火をくべているハグリットを見て、四人は深いため息を漏らした
「あーあ、平穏な生活ってどんなものかなぁ」
ロンがボソッと呟いた
賢者の石と次々と出される宿題に加えて、もう一つ悩みが増えてしまった
その上、ハーマイオニーがハリーとロンの分も復習予定表を作り始めたので、二人とも気が狂いそうだった
ある朝、ハグリットからの手紙をヘドウィグが届けてきた
たった一行の手紙だ
「いよいよ孵るぞ」
ロンはすぐに小屋へ向かおうとしたが、ハーマイオニーが無理矢理連れ戻した
「だってドラゴンの卵が孵るところなんて、一生に何度も見られると思うかい?ハーマイオニー?」
「授業があるでしょ。さぼったらまた面倒なことになるわ」
結局、ロンは渋々ながらも、一日の授業に出た
四人が夕食を終え、ハグリットの小屋に行くことができたのは、深夜だった
透明マントの中に四人でぎゅうぎゅうになりながら入り、ハリーが小屋の扉を叩いた
今度は前とは違い、ハグリットはすぐに扉を開けた
もし自分たちじゃなかったらどうするんだろうと思いながら、四人は小屋の中に入った
中は前回と同じように暑かった
しかしロンはそんなことは気にせず、すぐ卵のそばに行った
卵はテーブルの上に置かれ、深い亀裂がはいっていた
中で何かが動いている
椅子をテーブルのそばに引き寄せ、みんな息をひそめて見守った
突然キーッと引っかくような音がして(ハーマイオニーは慌てて耳をふさいだ)卵がパックリ割れ、赤ちゃんドラゴンがテーブルにポイと出てきた
黒いコーモリ傘のようだ、とハリーは思った
「すばらしく美しいだろう?ほれ、ちゃんとママちゃんがわかるんじゃ」
ドラゴンに触れようとして指に噛み付かれたハグリットが言っても何の説得力もない
指から引き剥がそうとしてふと窓の方を向いたハグリットの顔から血の気がひいた
突然立ち上がったハグリットを見て、ハリーは不思議そうに尋ねた
「どうしたの?」
「カーテンの隙間から誰かが見ておった・・・子供だ・・・学校の方へかけていく」
四人は急いでドアにかけよみ外を見た
―――間違いない。
マルフォイに見られてしまったのだ
あとがき
久しぶりの更新です・・・!
話がすごく飛んでいる気がします。。。
ちょっと映画がまざっているのですが、私としてはこっちの方が好きなので・・・
では、ここまで読んでくださってありがとうございました!
2006.8.10 晴天マユミ
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