黒いローブ。顔を半分だけ隠している仮面。

左腕にある、自分と同じ、髑髏の口から蛇が飛び出している紋章。



一人が仮面を取り、もう一人も続いた

出てきたのは、自分と同じ色の髪をした綺麗な東洋系の女性と、自分と同じ真紅の眼を持つハンサムな男性だった。





Act.15 Father and Mother




?どうかした?」


ハリーの声でははっと我に帰った
ずっと鏡を見ていたらしい。ハリーが心配そうな顔で覗き込んでいる


「なんかおかしいよ?」
「え・・・うん。大丈夫。」


はごまかした。

「この鏡、ロンに見せようよ!!」


ハリーはの腕を引いてグリフィンドールの寮まで歩いた(もちろん透明マントを羽織ったまま)
数分後、ハリーにむりやり起こされたロンが不機嫌そうな顔で鏡の前に立った

「どう?見える?」
「・・・何も見えないよ」

ロンはゴシゴシと目を擦った

「もっとこっちに来てみなよ。」

ロンはハリーに言われるまま鏡に近づいた


「どう?ほら、僕のパパとマ・・・」
「僕が見える」

ロンが唐突に言い出すものだから、ハリーはへっ、と目を丸くした


「でももっと年上みたい・・・僕、主席だよ!クィディッチのキャプテンもやってる!ねぇハリー、この鏡は未来を見せてくれるのかなぁ?」

ハリーはうつむいた。そうだと嬉しい。
でも、まさか・・・。もうママとパパは死んだんだ・・・。


はずっと、部屋の隅で何か考え事をしていた





その日からずっと、二人はあの鏡の部屋に通いつづけた
三日目にもなると、道にも慣れてきて、自分でも用心が足りないと思うくらいの音を立てて歩いた。

もハリーも、毎日同じ人が見えた
最初は格好を怪しんでいたも、次第に慣れてきて、二人を両親だと思うことができるようになった。
別に二人ともをにらんでいるわけでもなく、ただ軽く微笑みかけているだけだった。
にとってはそれで十分だった



「また来たのかい?」



鏡に見入っていた二人は一瞬凍りついた
いたのはダンブルドアだった。ほほえんでいるのをみて、ホッとした。

ダンブルドアは鏡に近づくと、二人と同じように床に座った



「君たちも、『みぞの鏡』の虜になったようじゃのう。この鏡が何をしてくれるのかには、もう気付いたじゃろう。」

とハリーが黙っているのを見て、ダンブルドアが言った


「では一つ、ヒントを与えよう。世界一幸せな人が、この鏡を見ても、うつるのはいつもの自分じゃ」

少し間を置いて、ハリーが答えた

「この鏡は、望みをうつす鏡なんですね・・・。」
「そうじゃ。しかも、心の一番奥底にある、一番強い「のぞみ」をのう。君たちには家族がいないから、家族に囲まれた自分が見えるじゃろう。しかしこの鏡は知識や真実を示してくれるものではない。鏡の魔力に魅入られて、自分を失ったものも数多くいる。明日にはこの鏡を別の場所に移す。」
「そんな!!」

は思わず言った
折角自分の両親にあえたのに!


、この鏡は現実のことを映すわけではないのじゃ。」


にはそれが『自分の両親はもう帰ってこない』といわれているようにきこえた
ぐっと唇をかむ。


「二人とも、もうこの鏡を探してはならんぞ。」



次の日、はどうしても気になって、その部屋を訪れた。
鏡は、なくなっていた。




ハッフルパフ戦が迫る一方、はみぞの鏡のことを忘れられずにいた。
ダンブルドアに二度とみぞの鏡を探さないように説得されたが、はその部屋の近くを通るたび、鏡があるかどうか見ていた。


ウッドはハッフルパフに勝てれば七年ぶりに寮対抗杯をスリザリンから取り戻せるということで、今まで以上に選手をしごいた。
激しい雨の中、ビショビショになりながらも、必死に練習している時、ウッドが(特にグリフィンドール生にとっては)悪い知らせを漏らした
双子のウィーズリーがふざけているのを見て、ウッドがカンカンになったときだった

「今度の試合の審判はスネイプだ!ふざけるのはやめろ!!」


チーム全体がシーンとなった。ジョージ・ウィーズリーは箒からおっこちそうになった
「スネイプが審判をやるって!?冗談じゃない!!」


ほかのチームメイトも口々に文句を漏らした

は不安になった。あの試合で起こった事件以来、も少しスネイプを疑い始めていた。



練習の後、寮に戻った二人は、真っ直ぐロンとハーマイオニーの所にむかった
スネイプが審判をやると知らされてすぐ、二人は反応した



「二人とも、試合に出ちゃダメ!」
「病気だっていえよ」
「40度ぐらいだって言った方がいいわね」
「できるだけ気分悪そうにすればいい。」
「なんだったら、そんな風になる呪文を探してみましょうか」
「フレッドとジョージに頼むといいよ。多分そんな感じのイタズラグッズを持ってるから」
「校則違反だと思うけど、そうするしかないわね」
「でも校則違反は校則違反で面倒くさいことになるかもな。」
「じゃあ、足を折ったことにすれば?」
「いっそ、本当に折ってしまえ」


息ピッタリのロンとハーマイオニーを見て、は苦笑した

「無理だよ。シーカーに補欠はいないから。私が出なきゃ、それこそ終わり。」
「だったらせめてハリーだけでも」
が出るんだったら僕も出るよ」



ハリーは無意識にポケットから蛙チョコレートをとりだした
蛙チョコをロンに差し出すと、自分はカードだけをもらった


「またダンブルドアだ。僕がはじめて見たカード・・・・・・あっ!!!」
「どうしたの?」
「フラメルを見つけた!どうりで見たことがあると思った!!ここにのってたんだよ!!見て!」


ハリーはカードのを三人に見せた


ダンブルドア教授は特に、1945年、闇の魔法使い、グリンデルバルドを破ったこと、ドラゴンの血液の12種類の利用法を発見、パートナーであるニコラス・フラメルとの錬金術の共同研究などで有名


とハーマイオニー飛び上がった

『ちょっと待ってて!』
そういうと二人は女子寮への会談を脱兎のごとく駆け上がり、すぐに巨大なふるい本を抱えて戻ってきた


『二人で随分前に図書館から借り出したの。』
「軽い読書をしようと思って」
最後にハーマイオニーが付け足した

「『軽い』?」
ロンが口走った


ペラペラとページをめくって、やっと探していたものを見つけ出したようだ

「これ見て。ニコラス・フラメルは我々のしるかぎり、賢者の石の創造に唯一成功した者!」
「賢者の石って?」
「もう!二人とも本読まないの?」
ハーマイオニーは期待通りの反応がなくてイライラした


は本をさしていった
「ここ読んでみて」




錬金術とは、『賢者の石』といわれる恐るべき力をもつ伝説の物質を創造することに関わる古代の学問であった。この『賢者の石』は、いかなる金属をも黄金に変える力があり、また飲めば不老不死になる『命の水』の源でもある。
『賢者の石』については何世紀にも渡って多くの報告がなされてきたが、現存する唯一の石は著名な錬金術師であり、オペラ愛好家であるニコラス・フラメル氏が所有している。フラメル氏は昨年六六五歳の誕生日を迎え、デボン州でペレネレ婦人(六五八歳)と静かに暮らしている。





「わかったでしょ?あの犬は『賢者の石』を守っているに違いないわ!」

ハリーとロンが読み終えると、ハーマイオニーが自信満々に言った

「フラメルがダンブルドアに保管してくれって頼んだのよ!誰かが狙っているって気付いたのね。」

ロンが付け加えた
「『魔法界における最近の進歩に関する研究』に載ってなかったわけだ。六六五歳じゃ、厳密に最近とは言えないよな」





ハッフルパフ戦当日、ロンとハーマイオニーは不安そうな顔でとハリーを見送った
はまだよかったが、ハリーはウッドの激励の言葉もほとんど耳に入らないまま、クィディッチのユニフォームを着て箒を手に取った


「ハリー?大丈夫だよ。今回は、ダンブルドア先生も見にきてるらしいから。」
「ダンブルドア?本当に?」


ハリーはホッとした。ダンブルドアがいれば安心だ。

「ほらっ、そろそろ入場するみたい」


がサンダー・ウィザードを取ってウッドの横に言った
他の選手もゾロゾロ後に続き、ハリーも慌てて並んだ



グラウンドに入場したとき、ハリーはすぐさま観客席を見た。確かにダンブルドアがいる。
スネイプの言葉で試合が始まってすぐ、はスニッチを見つけた

まだ試合開始から一分もたってない


どちらのチームもまだゴールしていなかった。
誰もがいまや学校中で『天才シーカー』と話題になっている少女に目をくぎ付けにされていた


はそんなことを気にしていなかった。
さらに体を前かがみにして、スピードを上げる。もう目にも止まらないほどだ。


一陣の風。
次の瞬間、スタンドがドッと沸いた。
新記録だ!こんなにはやくスニッチをつかまえるなんて前代未聞だ!!

はスニッチを高くかざして、グラウンドの上部に浮いていた
まだ試合開始からわずかしかたっていなかった。


観客席で見ていたハーマイオニーは興奮のあまり前列にいたパーバティ・パチルに抱きついた


はスニッチを握ったまま、地上二メートル程から地面に飛び降りた
ハリーもその横に降りた


「よくやった」
いつのまにか後ろにいたダンブルドアが二人だけに聞こえる声でそっと言った
「君たちが鏡のことをクヨクヨ考えず、一生懸命やってきたのはえらい。すばらしい。」



は少し赤くなったが、すぐにかけよって来たグリフィンドール生に囲まれた

めったに見られないハーマイオニーもいた。ぴょんぴょん飛び跳ねている
ロンもいた。何故か鼻血を流しているが、大きな歓声をあげていた


「僕が勝った!君が勝った!僕らの勝ちだ!」



ついに、とハリーの姿がまわりから見えなくなった

「うっ・・・苦しぃ・・・」


ぎゅうぎゅうづめにされたの苦しそうな声は誰にもきこえなかった
ダンブルドアがそれをほほえましげに見ていた



あとがき
校長先生!助けてあげようよ!!
というわけで、ヒロインがすごいことをやっちゃいました。
新記録ですよ!!
・・・ソウイウ人ニ、ワタシハナリタイ。(また!?)
では、ここまで読んで下さってありがとうございました。
2006.7.18 晴天マユミ
/賢者の石/