「おはよぅ!!」
クリスマスの朝、が両手にプレゼントを抱えて、女子寮から降りてきた
ハリーとロンはすでに下の談話室にいた
「メリークリスマッス!!!」
Act.14 The Mirror of Erised
は階段を早足で駆け下りた
最後の五段はピョンと一気に飛び降りる
「はいこれ!プレゼント!!」
手に持っている物をハリーとロンに一個ずつ渡した
「僕にプレゼント?ありがとう。」
ハリーとロンはさっそくその場で包みを解いた
入っていたのは、クィディッチ用の黒いグローブだった
ロンの包みの中にも、同じ物が入っていた
「どう?気に入った?」
「うん、すごく!」
早速グローブを手にはめながら、ハリーが言った
「四人でおそろいなんだ!ハーマイオニーの分もあるし。家に帰っちゃったから戻ってきてから渡すけどね。これ、私の手作りなんだけど・・・」
「「手作り!?」」
ハリーとロンは声をあわせた
「そう。ちょっと名前で失敗しちゃったんだけど、大丈夫かなぁ?」
二人はグローブの裏側を見た。
H・PとR・Wとそれぞれ金色の糸で刺繍がしてある。
―――――これが・・・失敗作・・・???―――
の興味はすでに他の事に移っていた
「ロンは、他になんかプレゼントもらった?」
「今きたばっかりなんだ」と、ロン
「これから見るんだ。多分・・・ママの手編みセーターは絶対あるだろうけど。そうだ、君たちの分も確かあったと思うよ。まだよく見てないんだけど。ほら、そこに。」
とハリーは顔を見合わせた。
自分たちへのプレゼント?
ロンが指差した先を見ると、プレゼントが山積みになっていた
「え!?うそっ!?」
自分にプレゼントをくれる人なんているわけがないと思っていたは驚いた。
「え・・・このプレゼントの山?」
「うん。そうだよ。」
は早速近づいてみた
一番上はハーマイオニーからだ。
包みは形が整っていて重い。開けてみると、
『発展魔術 呪文集』『クィディッチに勝つ秘訣』など、本が五、六冊入っていた
つづいてハグリット。
そして他の一年生からの(ウッドやフレッド、ジョージなどの上級生もたまに混じっていた。)お菓子がどっさり。ドラコからの分もあった。
マクゴナガルや、クィレル、フリットウィックからも『発展』の参考書が送られてきた
一番驚いたのは、スネイプと、ルシウスからも送られてきたことだ。スネイプも本。ルシウスはカードだけだった。
こんなに楽しいクリスマスは初めてだ。
―――本が異常なまでに増えてしまったが。
はグリフィンドールの一年生全員と、先生たち、クィディッチのチームの仲間に全員カードと少しお菓子を送っておいてよかったと思った
最後の残ったプレゼントの三つのうち、一つをあけると、茶色いセーターが出てきた
ロンが少し赤くなる
「それ、僕のママからだよ。まさか『ウィーズリー家特製セーター』を送るなんて。ハリーにも送ったみたい。」
隣をみると、ハリーがファッジをかじりながら、最後の包みにとりかかっていた。
とても軽いようだ。
ハリーはそれを開けてみた。
中にはいっていたものがスルスルと床に滑り落ちて、キラキラと折り重なった
「何、それ?」
ロンがハリーにきいた
ハリーは知るはずもなく、
「マント・・みたい。」
と答える
「へぇ、きてみなよ」
ハリーはそれをばっと羽織った
ロンがあんぐりと口をあける
「僕それ、なんなのか知ってるよ・・・。透明マントだ。」
ハリーは下を見た。
なんと体が消えている!
は珍しいものをみた子供(実際、そうなのだが)のようになった
「ハリー!それすごいね!」
ハリーはマントを頭まで引きずり上げた
その途端、マントから手紙が落ちた
「マントから手紙が落ちたよ!」
ハリーはマントを脱いで手紙を拾い上げた
こうかいてあった
君のお父さんが亡くなる前にこれを私に預けた
君に返す時が来たようだ
上手につかいなさい
最後にメリークリスマスと書いてあり、差出人の名前はなかった。
ロンはマントにみとれながらも、に最後の包みをあけるように促していた
ハリーがすごく珍しいものを貰ったので、にも期待をしているようだ
は残り二つの内、大きい方を手にとった。
ハリーのように軽い。一瞬、透明マントかな、と期待する。
中から出てきたのは、予想と同じものだった。
真っ黒のマント。
「にもマント!?」
ロンが驚愕の声をあげた
とりあえず、は羽織ってみることにした。
・
・
・
・
・
・
なんの変化もない。
「もしかして、普通のマントだったりする?」
ロンがハリーの透明マントに驚いて落とした百味ビーンズをひろいあげて、口にほうりこんだ
「うん。多分。でも結構かっこいいよ!これ!」
マントを羽織ったままぴょーんと飛び上がる
すると、またハリーと同じく、手紙が落ちた
ハリーと同じパターンが多いなぁ・・・と思いながらも、わくわくしながら手紙に近づく
君のお母さんが使っていたものだ
いずれ、これが必要になるときがくるだろう
では、メリー・クリスマス
こちらも、差出人の名前は書いていなかった
それでもはマントが気に入ったらしく、取らないまま、最後の包みに取り掛かっていた
今までのに比べると随分小さい。
中は箱型になっていた。
パカッとあけると、中にペンダントが入っていた
今度は何といいたそうな目でハリー(透明マントを羽織ったままだから、首だけういている)とロンがこちらを見ているので、はペンダントを手に持ってハリーとロンに近づいて、それを見せた
「それ、蛇じゃない?」
ハリーがペンダントに顔を近づけて言った
ロンも同意見のようだ。うんうんと頷いている
「誰だろう、こんなのを送ってきたの。」
「わかんない。何しろ、手紙も何も入ってなかったから。」
そういいながらペンダントを首につけると、二人が目を見開いた
「「それ、つけるの?」」
「うん。だって、送ってきた人がかわいそうだし、私結構これいいと思うよ。シンプルで。」
そういう問題か?とハリーとロンは心の中でつっこんだ
その日の夜、今まで食べたこともないご馳走を食べ、寮に戻ったは、なかなか眠れずにいた。
ペンダントをつけてから、魔力が強くなった気がする。多分気のせいだけど。
寮はすでにみんなが寝て静まり返っているので、は談話室に行くことにした
暖炉の前に座ると、ずっとベッドに座っていたせいで冷えた体があたたまった
しばらくのんびりと座っていると、突然後ろの気配を感じた
ふり返っても、誰もいない。でも、空気が動いてるような気がする
は一応持ってきておいた杖を握り、そこにいって呪文を唱えた
「ルーモス、光よ!」
そこからうわっ、と聞き覚えのある声がする
はバッと手でそこを触った
軽い感触があり、それをつかんで思いっきり引っ張った
マントがずるずると下に落ち、ハリーがその場につったっていた
「!?いつのまに!?」
「ずっとさっきからいたよ?もしかして、初めて使う透明マントにハマって、きづかなかったとか?」
「う・・・っ」
図星のようだ。
「どっかいくの?」
「え・・・うん。ちょっと談話室から出てみようかなと思って。」
今、の立場にいるのがハーマイオニーだったら大変なことになってるだろうな、と思い、ハリーは少し冷や汗を流した
「散歩?楽しそう!私もついてっていい?」
「え、うん。いいよ。」
「やったぁ!ありがとう!」
は迷わずハリーがもう一度羽織ったマントの中に入り込んだ
二人で入ると一人よりは狭いが、まだまだ余裕はあるみたいだ
肖像画を通り抜け、急いで廊下を歩いた
ずっと一緒に暮らしただけあって、息はぴったりだ
「どこに行くの?」
「図書館。閲覧禁止の棚で、ニコラス・フラメルについて調べたいんだ。」
図書館は真っ暗だった
ランプをかざすと、宙にういているように見える
自分が持っているとわかっていても、気味が悪かった
ハリーは、が一緒にいてよかったと思った
閲覧禁止の棚と他の棚を仕切る鉄製の檻のような扉をあけ、ハリーはマントを脱ぎながらランプを高く掲げ、書名を見た
「すごい。難しい本がいっぱいあるね。」
コソコソと小声でがいった
「僕もわかんないや。とりあえず、片っ端から見てみよう」
ハリーはランプを慎重におき、まず黒と銀色の大きな本を引っ張り出した
バランスをとり、本を開いた
突然、耳をつんざくような悲鳴がした
がすばやく耳をふさぎ、ハリーは本を閉じ、元に戻した
「誰だ!」
フィルチの声だ。二人は血の気が引くのを感じた
ハリーが慌ててマントを取り、頭にかぶせ、もその中に入った
その拍子に、ランプがガシャンと音を立てて割れた
「いるのはわかっている。出て来い!」
ゆっくりと、ゆっくりと・・・、音を立てずに歩く
やっと図書館から出たと思ったら、今度はクィレル先生が小さな悲鳴をあげているのが聞こえた
話しかけているのは―――スネイプだった
「我輩を敵にまわしたくはあるまい?」
クィレルがヒッと悲鳴をあげる
「わ・・・私にはなんのことか・・・さっぱり?」
「とぼけるな!とにかく、次にあうときまでに、どちらの側につくのか、しっかり決めておくことですな。」
とハリーがモソモソと物音を立てずに、移動している間、フィルチが図書館からでてきた
「先生方。閲覧禁止の棚にランプが落ちていました。まだ暖かい。生徒がうろついているようです。」
スネイプはいったんクィレルに鋭い視線を投げてから、図書館へ入った
やっと先生が全員いなくなり、とハリーは隣にあった部屋に滑り込んだ
昔使われていた教室のような部屋だった。
随分とほったらかしにされていたようだ。
大きな鏡が立ててあった。
二人はマントを脱ぎ、その前に立った。
枠の上のほうに字が彫ってある
「すつうを みぞの のろここ のたなあ くなはで おか のたなあ はしたわ」
二人は鏡を覗き込んだ。
ハリーはおもわず叫び声をあげそうになった。
ふり返って、まわりを見回してみる。誰もいない。
もう一度鏡をみた。
後ろに自分とそっくりな眼―――明るいグリーンの色をした眼をした女性がたっている
その人は泣いていた。隣に背の高い黒髪も男が立っている
メガネをかけていて、髪はハリーと同じクシャクシャだ
「・・・ママ?パパ?」
二人がにっこりと頷いた
女性の方が鏡の中でハリーの肩に手をおいた
ハリーは自分の肩に手を触れた
やはり何もない。
胸に、喜びと悲しみのまじった痛みが走った
「僕のパパとママだ」
ハリーは少し興奮した様子でに話し掛けた
「君にも見えるだろう?・・・どうしたの、。」
は鏡を見据えていた
あとがき
・・・今思ったのですが、次回どうしよう・・・?
ヒロインがハリーに「違うものを見た」というと、ロンをつれてこれないし・・・
新しく物語に登場人物が増えるのって、大変なことなんですね。
では、ここまでよんでくださってありがとうございました。
2006.7.14 晴天マユミ
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