運命の杖か・・・
私の杖・・・。
この、傷をつけた人と、同じ―――
Act.6 Nocturne Alley
ハグリットが買ってくれたのは、薄いねずみ色の、目が大きな梟だった
ねずみ色とはいっても、汚いわけじゃなく、どちらかというと白に近い。
さっきからしきりにホーホーと鳴いている
ハグリットからもらったエサを手渡しであげると、ツンツンと手をつついてきた
「まだ夕食にははぇえな。こっからは自由行動だ。時計は持ってるな」
とハリーはコクンと頷いた
「よし。五時に、漏れ鍋に集合だ。それまで、ダイアゴン横丁をまわってみるとええ。俺ぁちょいと行く場所があるんでな」
そういうと、ハグリットは奥のほうへ歩いていった
「じゃ、私もちょっと回ってみようかな。」
「うん。またね」
はハリーに一旦別れを告げると、さっきから気になっていた場所へ向かった
「えっと、どこだっけ?・・・あ、あった。」
ダイアゴン横丁の奥のほうにある、小さい通路。
「ノクターン横丁」とかかれた看板がかかっている
「ノクターン横丁・・・」
名前をきいて、少々怖気づいただが、好奇心の方が大きかった
路地にそっと入っていく
そこは、ダイアゴン横丁とはまるで違っていた
湿っぽくて暗いし、なにより、目線が痛い。
入ってこなかった方がよかった・・・けい?
しかし、随分と歩いてしまったようで、出口が見つからない。
「お嬢ちゃん・・・、何していらっしゃるのかしら?」
口元に笑みをうかべたいかにも雰囲気がやばそうな魔女が話し掛けてきた
「私にできることならなんでもしますよ・・・?」
「い、いや・・・結構で・・・す・・・。」
腕をつかもうと自分にのびてきた手をすれすれでかわして、は答えた
しかし魔女もうしろからついてくる
はなるべく自然に早足にして、まっすぐあるいた
最早、好奇心などというものはなかった。
はやく出口をみつけて、ここから出なきゃ・・・
後ろをふりむくと、さっきの魔女はまだついてきていた
(しつこい・・・!!!)
チラチラと後ろを気にしつつ、は更にスピードをあげた
と、その時
ドン、と何か―――否、誰かにぶつかった
ああ・・・この街のことだから・・・
絶対に・・・ぶつかったら・・・やばぃ・・・
そう思いながら、注意して歩いてたつもりなのに―――
恐る恐るみあげると、案の定、そこにはを冷たい灰色の目で見下ろしている男の姿が。
「あ―――・・・えっと・・・、ごめんなさい・・・」
とりあえず謝ってみたが、簡単に許されるはずないよなぁ・・・とは思った
ここにいるってことは、やばい人に違いない・・・
明晰なの頭はすぐにそのことを理解した
だが、一刻もこの場から離れたい。
なにしろ、後ろから魔女がまだこちらにオドオドした足取りで歩いてきていた
それを横目でチラチラ見ながら、は足踏みをしながら言った
「あの、では、急いでいるので、失礼します・・・」
横を通り過ぎようとしたが、腕をつかまれた
男は左腕に巻かれた包帯を神妙な目つきで見ていた
「あの―――、何か・・・?」
少し焦ったような表情で見上げると、プラチナブロンドの男は、やっと口を開いた
「・・・名前はなんという?」
「・・・です。」
「・・・そうか・・・、やはりあの方の・・・。・・・そこの、これ以上近づくな。」
その男ににらまれ、魔女はビクッと足を止めた
「さて―――、」
男は視線をまたに戻した
「私はルシウス・マルフォイだ。君は、今年で一年生だな?」
「はい。」
思っていたほど怖くない人だと知って、はほっとした
「私の息子のドラコも今年ホグワーツに入学する。せいぜい仲良くしてやってくれ。」
「わかりました。」
は小さく頷いた
「えっと・・・マルフォイさん・・・でしたよね?」
「ルシウスでいい。」
「え!?そ、それはちょっと・・・」
「いずれ、あの方のそばにつくのだ。私より、上に立つことになる」
「あのかた・・・とは?」
「いずれわかる。で、なんだ?」
「そ、そうだ・・・。あ、あの、ダイアゴン横丁に続く道・・・教えていただけますか・・・?道に迷っちゃったみたいで・・・」
はもごもごしながら尋ねた
「・・・ついてこい」
それだけいうと、ルシウスはの腕をひいて歩いた
複雑な道を、右へいったり、左へいったり・・・
自分が逃げるのに夢中で、こんな所を通っていたなんて・・・と改めては驚く
しばらく歩いて、やっと、見覚えのある場所に出た
「ここをまっすぐ行けば、ダイアゴン横丁だ。」
「は、はい。ありがとうございます!!」
はペコッと頭をさげた
すると、遠くから聞き覚えのある声がした
声をする方を目で追えば、両手に荷物をかかえたハグリットがいた
「ハグリット!!!」
はもう一度ありがとうございましたと頭をさげて、ハグリットのそばへとかけていった
「大丈夫か、!?」
ダイアゴン横丁に出てすぐ、ハグリットが慌てたような口ぶりでに尋ねた
はなんのことかわからず、キョトンとした表情をうかべる
「だから、あいつになんかされんかったか、ちゅうことだ!」
「・・・誰?」
「ああ、もう!!!ルシウス・マルフォイだ!」
ハグリットがちょっと焦ったようにいった
「え、いい人だったよ?私、道がわかんなくて、きいたら、出口までつれてきてくれたの。ハグリットこそなにしてたの?」
「あ、ああ。そうか。それならいいんだ。俺ぁ、肉食ナメクジの駆除剤を探しにいってたんだ。」
ハグリットは途端、安堵の色を浮かべた
一ヶ月後。とハリーはハグリットにもらった切符を持って、キングズ・クロス駅についた
おじさんがやけに親切に送ってくれた理由も、そこでわかった。
九と四分の三番線なんて、あるわけないと思っているからだ。
「新学期をせいぜい楽しめよ」
おじさんはニターッと笑って、さっさと車へ戻ってしまった
ハリーは困り果てた
も困った表情をうかべて、ブツブツとつぶやいていた
駅員にきいてみるも、魔法界の事なんて知るはずもなく
いよいよ二人は本当に困り果てた
「・・・まったく、ここはマグルだらけね・・・」
二人が途方にくれていると、後ろから自分たちと同じ荷物を持った一団が通り過ぎた
とハリーはあわててカートを押してその後ろについた
「パーシー、先にいってちょうだい。」
一番年上らしい少年が九番線と十番線の間にある柱にむかってあるいていった
すると、柱に差し掛かった途端、パーシーの姿は消えていた
二人は何か信じられないものを見た表情をして、ポカンと突っ立っているしかなかった
次々と、赤毛の少年たちは柱に吸い込まれるようにして消えていった
最後の一人が残ったとき、はやっと我に戻り、おばさんに声をかけた
「す、すみませーん」
最後の一人を送り出そうとしたおばさんが振り返った
「あの・・・あそこにはどうやっていったら・・・私も・・・彼もはじめてで・・・」
「九と、四分の三番線?」
はコクンとうなづいた
「心配しなくていいのよ。うちのロンも今年はじめてのホグワーツなの。」
隣にいる赤毛でそばかすだらけの少年が二人に向かって微笑んだ
「行き方はね・・・。九番線と、十番線の間の、柱に向かって走るの。」
緊張して固まっているとハリーを見て、おばさんは怖かったら小走りで行きなさい、と付け足した
「、僕が先にいくよ。」
ここぞとばかりにかっこいい所を見せようとするハリー。
の前に割り込んで、カートを押しながら小さくはしりはじめた
はハリーの後ろに続いた
後一メートル、五十センチ、三十センチ・・・
はぎゅっと目を閉じた
何故か、こういうときは目を瞑りたくなるものなのだ。
・・・・・・
まわりの音がかわり、は目を開けた
くれない色の蒸気機関車が、プラットホームに停車していた
『ホグワーツ特急 十一時発』
まちがいない。
これで、学校へいけるんだ!!!
「ハリー、やったね!!!!」
嬉しさのあまりは思わずハリーに飛びついた
「う、うん・・・!!!」
頬を少々赤らめながら、
ハリーはもう一度これから自分たちが乗る機関車を見た
あとがき
やっとホグワーツ特急まできた!!!
なかなかここまで来るのは微妙に大変でした・・・。
本とできるだけ同じ表現は使わないようにはしてるのですが・・・;;;
やっぱりそれはムリなわけで・・・(汗)
では、ここまで読んでくださってありがとうございました。
2006.1.31 晴天マユミ
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