結局、なんであんなに金貨があったのかは理解できなかったけど―――
いつかわかるだろうって思って、棚に上げとくことにした。
そうでもしなきゃ、私の脳がもたない。
Act.5 A wand of destiny
グリンゴッツから出て、ハグリットはすぐ気分が悪いから薬を買ってくると、漏れ鍋に戻った
残されたとハリーは初めてのダイアゴン横丁に戸惑いながらも、ハグリットに教えられた通り制服を買いにマダムマルキンの洋装店に入っていった
すぐ、奥から藤色ずくめの服を着た魔女が出てきた
「坊ちゃんとお嬢ちゃん、ホグワーツなの?」
がドギマギしながら小さく頷いた
「じゃあ、こちらへいらっしゃい。」
奥の方で、金髪の少年が踏み台の上に立ち、店員がローブをピンで留めていた
隣にある踏み台にとハリーはそれぞれ立たされた
店にいる魔女たちがなれた手つきで丈を合わせてピンで留め始めた
「君たちもホグワーツかい?」
「そうだよ。あなたも?」
「そうだ」
少年はいかにも傲慢そうな態度をとる
「これから、二人を引っ張って競技用の箒を見に行くんだ。校則では禁止になってるけど、一本こっそり持ち込んでやる」
「Σえ!!ずるい!!!」
はぷーっと頬をふくらませた
「私は箒に乗るのが一番の夢なのにぃ!!!」
そういう問題か!?とハリーは心の中でバシッとつっこむ
「君も乗せてあげるよ。」
「本当!?」
はやったぁっ!と小さく飛び上がる
そのせいでピンがずれてしまったことに気づき、「ごめんなさい」と呟いた
「クィディッチはやるの?」
「ううん。」
ハリーは何のことだろうと思いながら答えた
どんなものなのかは知らないけど、何故か訊くのは気がひけた
しかしはそんなことはまったく気にした様子もなく素直に思ったことを口に出した
「私はクィディッチってなんなのかわからないんだけど。。。なんせ今までマ・・・?えっとぉ?・・・そうそう、“マグル”の世界で育ったから」
「まぁ、ホグワーツに着けばわかるさ」
「さぁ、終わったわよ、三人とも」
先にきたその子となんで終わるのが同時なのかと疑問に思いつつ、は踏み台からぴょんと飛び降りた
店から外に出ると、少年は「じゃ、ホグワーツでまた会おう。たぶんね」といってとハリーがいったのとは反対方向へ消えていった
ハグリットはまだ帰ってきていない
「次は確か、杖を買うんだったよね。・・・あっ、ここだ」
ハリーは隣を指差した
紀元前三百八十二年創業 オリバンダーの店
「すごい!第三十王朝の時にはもう立ってたの、この店!?」
「・・・、それ、何?」
中は、二千年以上たっているだけあって、かなり古かった
どこにも人の姿は見当たらない。
カウンターの向こうには、数千という細長い箱が、危なっかしく積み上げられていた
「すみませ〜ん・・・」
反応はない
「すみませ〜ん。」
本当に誰もいないのかと思って、振り向こうとしたとき
ガタン。
突然響いた音にとハリーは飛び上がった
見ると、動くはしごのようなものに乗った老人がこちらを見ていた
「まもなくお目にかかれると思っていましたよ。ハリー・ポッターさん、・さん。」
「な、なんで名前知ってるんですか?」
「魔法界で貴方達の名前を知らぬ者はいますまい。詳しいことはルビウスに訊くといいですぞ」
老人は指をぶるぶるいわせながら箱を二つ取った
そして、それぞれから杖を取り出し、とハリーに握らせた
「さぁ、ふってみたまえ」
びゅん。
二人はいわれた通りにふってみた
ハリーの方は花瓶が落ち、の方が引き出しが飛び出した
二人は慌てて杖をケースの中に入れた
「ごごごごめんなさい!!!こんなことするつもりじゃ・・・っ!」
は完全にパニくっている
「いや、こういうこともたびたびあるからな」
その後も、杖選びは延々と続き、店の中はぐちゃぐちゃになった。
はどうやって片付けるか心配したが、老人は慣れっこのようで、大して気にしていなかった
老人は杖を一本一本見ながら選んでいる
そして、何かを思いついたように、一瞬、動きが止まった
まさか―――
二本杖を選び抜くと、一本をハリーに、そして、それより少し長いもう一本をに渡した
ハリーは杖を取った。すると、急に指先があったかくなったような気がした
戸惑いながらもふってみると、杖の先から火花が流れ出して、光の玉が踊りながら壁に反射した
「ブラボー!」と老人が叫ぶ
そしての方を見る。瞬間、老人は「なっ」と声を漏らした
何事かと思ってハリーもの方を見た
ハリーは目を丸くして、思わず杖をおとしそうになったた
は杖を握ったまま、緑色の光につつまれていた。
肩からは銀色の光ようなものが見え・・・そう、まるで翼が生えたように
風が起こったように黒い髪はなびいていた。
そして一番驚いたことは・・・は地面にたっていないのだ
一センチ程はなれた所に浮いていた
しばらくして、はふわりと地面に降り立った
「・・・・・・」
一番驚いているのは本人だった
「これも・・・よくあることなんですか?」
「いや・・・」
老人は不思議な表情をして、の紅い眼を見つめた
「不思議じゃ・・・まさか・・・こんなことが」
一言一言老人はゆっくりと話した
「ポッターさん、さん。今、あなた方にためしてもらったのは、両方とも、不死鳥の羽根を使った杖じゃ。あなた方の杖にはいっている羽根は、同じ不死鳥が尾羽根をもう一枚だけ提供した・・・、この世に、後たった一枚だけじゃ。運命とは不思議じゃ・・・。兄弟羽が・・・貴方がたに傷をおわせたというのに・・・」
老人はハリーの額と今は包帯がまかれているの左腕を交互に見た
「あれは、三十四センチのイチイの木、不死鳥の羽根で出来た協力な杖じゃった。ポッターさん。あなたに試して頂いたのは、二十八センチの、柊と不死鳥の羽根で出来た杖じゃ。めったにない組み合わせじゃがな。そしてさん・・・。」
一呼吸おいて、老人が静かに話した
「さん。あなたの杖は・・・イチイの木と不死鳥の羽根、三十四センチの杖じゃ」
う・・・そ、でしょ?
驚きで声が出ない
「オリバンダーの杖は一本一本、強力な魔力を持った物を芯に使っているのじゃ。その芯に使っている不死鳥やドラゴンものも、みな違うのじゃから、オリバンダーの杖には一つとして同じ物はないのじゃ。だがな。」
何・・・?
まさか・・・。
老人はの思っていることを見透かしたように続けた
「その、まさかじゃ。それは、唯一、この世にもう一つだけ、同じ・・・まったく同じ杖があるのじゃよ・・・。同じ不死鳥の羽根を使い、同じイチイの木を使った。わかりますな、さん。」
「この・・・この傷をつけた人と・・・」
左手をあげてが弱弱しくいった
「さよう。杖は持ち主の魔法使いを選ぶ。そういうことじゃ・・・。ポッターさん、さん。あなたたちはきっと偉大なことをなさるに違いない。『名前をいってはいけないあの人』もある意味では偉大なことをしたわけじゃ・・・恐ろしいことじゃったが、偉大には違いない。」
「・・・・・・」
コンコンコン
静まりかえった部屋に戸を叩く音が響いた
振り返ってみると、窓の外に、両手にふくろうかごを持ったハグリットが立っていた
『ハッピーバースデイ、、ハリー。』
口の動きからはそういっていると読み取れる
沈んでいた気持ちが、少しだけ、明るくなった。
あとがき
いつもよりちょっと短いですが、キリのいい所で。
ヴォル様と同じ杖、だというのは、
あくまで管理人がそうしたかっただけですが(今のところ)
いつか、意味のあることになるかもです。
では、ここまで読んでくださってありがとうございました。
2006.1.22 晴天マユミ
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