初めてみる、ロンドンの街。

僕たちにとっては、すべてが新鮮なものだった。





Act.4 Diagon Alley




「必要なものは杖、大鍋、薬瓶、望遠鏡、真鍮製はかり。希望者はふくろう、ねこ、またはヒキガエルをもってきてもよい。」

慣れない言葉にハリーは戸惑いながら、準備するものを読み上げた。

はまださっきのことが理解できずに首をかしげている

さっきのこと―――すなわち、『漏れ鍋』で起こったことである。



時は少しさかのぼる。

ロンドンの街から小さなパブ、『漏れ鍋』に三人は入った
ハグリットは相当なじみ客のようで、店員から「いつものやつかい?」ときかれた。


「悪いな、今日はだめなんだ。とハリーの入学準備をしにきた」


マグルがきけば、ごく普通の会話だっただろう。
だが、魔法界では違った。

名前が出た瞬間、店が一瞬静まり、その後全員に握手を求められた。

二人はなんだかわからなかったが、とりあえず握手はしといた





漏れ鍋から出てすぐ、ハグリットに自分たちがなんであんなに有名なのかきいたが、「後で教える」といったっきり、教えてくれないのだ。



ずっと考え込んでいるを横目に、ハグリットは二人にダイアゴン横丁を案内した

いつか教えてくれるだろう、とも思い、やっとまわりをゆっくり見回し始めた


ふくろうから月球儀、さらにはドラゴンの肝までうっている。
魔法使いって、いろんな意味ですごい・・・と、は改めて思った


「あ〜そういえばぁ・・・」

は何か思い出したようにハグリットに話し掛けた


「あのさ、お金、持ってないんだけど・・・」
「僕もなんだ。」


忘れ去られまい!とばかりに、ハリーも慌ててつけたした


それをきいて、ハグリットが困ると思ったが、予想外の展開だった。


「お前さんたちの金なら、あそこにある。」

ハグリットの指差す先をたどってみると、『グリンゴッツ』と書かれた建物


「グリンゴッツ・・・?」

「ああ、あそこほど安全な場所はないぞ!ホグワーツを除いてはな!」
「ふ〜ん・・・」


とりあえず、ハグリットに従うことにした。




+++



「うわ〜・・・、近くで見ると大きいね〜・・・。」


はグリンゴッツを見上げて言った


今までは、殆どの休みの日は、ダーズリー夫妻に留守番をさせられていたから、ここまで大きな建物はあまり見たことがないのだ



銀色の扉を入ると、テレビで見たホテルのチェックインカウンターのようになっている

しかし、カウンターの向こうがわを見たは、驚きのあまり一瞬フリーズした。


「おっ、鬼・・・???」
「さよう。あれは子鬼だ。頭はいいがあまり愛想のいいヤツらじゃねぇ。離れるな」


ハリーは慌ててハグリットのそばによった
は子鬼を怖いというより面白いと思っているようで


「魔法界ってなんでもありなんだね。」

と言った


ハリーはごもっともな意見だと思った。



カウンターに近づくと、ハグリットはコホンと咳払いした
それに気づいた子鬼がおもむろに顔をあげる


「ハリー・ポッターさんとさんの金庫から金を取り出したいんだが」
「ああ・・・」


子鬼はゆっくりと立ち上がると、カウンター越しにハグリットよりも幾分小さい二人を見た

「鍵はお持ちでいらっしゃいますか?」



ゴクンとハリーが唾を飲み込む



「どっかにあるはずだが・・・」



ハグリットが助け舟を出すと、子鬼は一瞥し、またゆっくりと座った


「う〜んと・・・―――、あった」



ポケットから金色の鍵を二つ取り出すと、子鬼に渡す



「・・・承知いたしました。」

「あと、ダンブルドアからの手紙を預かってきているんだが・・・」




「例の・・・713番金庫にある・・・、あれを・・・」



ハグリットは周りに聞こえないように呟いた



「・・・では。」







トロッコに乗り込むと、それはいきなりビュンと走り出した

ハグリットも乗り込んでぎゅうぎゅうだったが、ハリーはよかったと思った

もし、シートベストなしのすかすかの状態でこんなのに乗ったら、振り落とされかねない。




「ねぇ、ハリー。ここって大声出していいと思う?」
「いきなり何??」
「あのね、この前間違えてきた手紙を届けにいったら家にあがらせてもらったんだけど、そこで『怖い、楽しい、風を切って飛べ、絶叫マシーン!!−あなたもきっと乗りたくなる−』っていう番組やってて、それでスタッフの人が大声あげてたの。それでこういうのって叫ぶべきなのかな〜?と思ってね。」
「ふーん、やってみれば?」
「うん、じゃぁ・・・」



「キャーーーーーーーーー!!!!!」
「んぬぇっ!!!???」



いきなりがトロッコにも劣らぬ大声を出すものだから、気持ち悪そうに目を瞑っていたハグリットは驚いてよくわからない声を出した
子鬼はというと大して気にした様子もない



、頼むから大声ださないでくれ・・・はきそうだ」


それだけいうとハグリットのまたぎゅっと目を瞑った


「あのさ、僕いつもわからなくなるんだけど」

ハリーは聞こえるようにの耳元に口を近づけていった


「鍾乳石と石筍ってどうちがうの?」

「えっと〜・・・」


は考え込む



「確か、鍾乳石は、鍾乳洞の天井からつらら状にたれさがった、石灰質の結晶。石灰岩を溶かした雨水、地下水が天井からしたたるとき、水分が蒸発し、石灰分が固まって出来たもの。で、石筍は鍾乳洞の床に天井から滴り落ちた炭酸石灰が積もってたけのこ状になったもの・・・だったと思うよ。」
「・・・ぼ、僕いつも思うんだけどさ・・・」
「ん?」
「その知識はどこから??」
「ああ、ダドリーの部屋に移してもらったとき、まだ使われてない辞書があったの。それを何回か読んだんだ。」
「ふ、ふ〜ん・・・」


今度からはちゃんと本を読もうとハリーは本気で思った


「ハリー・ポッターさんの金庫になります。」


子鬼がトロッコから降りる
とハリーもぴょんと飛び降りた

ハグリットものそのそと降りたが、足元がふらついている



「鍵を拝借」



子鬼はハグリットに向かって手を差し出したが、どうも鍵を出せる状態ではないようなので、が代わりにハグリットのポケットの中に手をつっこんだ
そして金色の鍵をひっぱりだして子鬼に手渡す
自分の金庫にいったときでも、そうなることは大体予想できたから、もう一つの鍵もとっておいた




鍵を子鬼に渡すと、彼はそれを扉の鍵穴に差し込んだ
緑色の煙があふれだしてきて、それが消えた瞬間、ハリーはあっと息をのんだ


金貨が高くつみあげられ、銀貨、銅貨もあふれるほどある

「これ・・・本当に僕の・・・?」
「ええ、ハリー・ポッター様のもので、間違いありません」




ハリーは恐る恐る金庫の中へと足を踏み入れた



いつのまにか回復した(足元はまだふらついているが)ハグリットが隣に来ていた




「金貨はガリオンだ。銀貨がシックルで、十七シックルが一ガリオン、一シックルは二十九クヌートだ。」


がキラーンと眼を輝かせた

「なんか、数学っぽいね♪不揃いな数字Love♪」



初めてハリーは数学という「物」に嫉妬した




子鬼はハリーの金庫の扉を閉じて、隣にある扉の前に移動すると、の方に振り向いた


「次は、様の金庫になります。鍵を」
「私とハリーの金庫って隣だったんだ・・・。うん、どーぞ」




このとき、一回トロッコに乗る回数が減るとしって、ハグリットが内心ほっとしたというのは、いうまでもない。

金庫の扉を開く

・・・・・・・・・・・・・・・・・

状況を理解するのに数分経過

「ワ、わっつ、あー、ど、どぅず?」
「あなた様のご両親が残した金貨になります」



が驚くのも無理はない。
金庫の中には、さっきのハリーにも劣らない、否、それ以上の金貨が部屋の隅から隅までつみあげられていたのだ。
銅貨がないかわりに、それが銀貨になっている。
奥の方には扉があった




「あの扉の事が気になるようですね。」




子鬼がの気持ちを察したかのようにいった


「いってみますか?」



の脳はまだ状況を整理しきれていないが、取り敢えず子鬼の後のついていった


「ハリーも来る?」


ふりむいてハリーに呼びかける


「いや、僕はいいよ。ハグリットがまだ回復できてないみたいでさ。」


苦笑を漏らす



「うん・・・ならいいや。ハグリットよろしく」
「うん」



扉をくぐりぬけて中に入ると、外と同じような扉が十数個あった



子鬼はその内の一つを鍵で開ける



そこには―――


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「へ?」




金貨が部屋中にザックザク。



しかも銀貨や銅貨がなく、すべてがガリオン金貨。





状況を理解するのに更に十数分



「何これ!!!???」



やっと情報を整理し終えると、は大声をあげた

(五十メートル離れた所にいたハリーは、驚いてとびあがった)





「さっきの十数個の扉の中のものは、すべてここと同じです」






は足元がフラっとした



+++



!?大丈夫っ???」



眼を開くと、視界一杯にハリーの姿が



「っ!!??」



驚いて起き上がろうとしたが、額がゴチンと当たった


『〜〜〜っ!!!!!!』



二人とも声にならない叫びをあげて、その場にうずくまる


「あっ、そうだ!!!!」


起き上がろうとしたついでにまた額がぶつかりそうになったが、ハリーがさっとよけた


「私、なんでこんなところに?」


自分が寝かされていたのは、ホールの端だった



「君、自分の金庫を見た瞬間、気絶したらしいんだよ。そんなに凄かったの?」



・・・ああ、思い出した。

「凄いも何も―――あれはありえないよ・・・」


記憶が本当のものなのかどうかでさえ疑わしいよ、本当。



「そんなに凄かったんだ・・・。あ、それと、君の分のお金は、ハグリットが必要だっていってた分出しといたからね」
「そう、ありがとう、ハリー。」



礼を述べるとは再度、記憶の整理にとりかかった




あとがき
ハリーはさんの事が好きなようです・・・。
基本的には一応逆ハーなんですよっ!?(アセアセ
あぁー、早くリドルorヴォル様出したい!!!(ジタバタ
では、ここまで読んでくださってありがとうございました。
2006.1.17 晴天マユミ
/賢者の石/