僕たちに初めて手紙が来た。

自分たち宛てであっているのかな?

でも確かに、僕たちの住所、僕たちの名前なんだ。

僕たちにこんな手紙をくれたのは誰?





Act.2 Letters





あの動物園の事件が起こってから、とハリーは、罰として物置に閉じ込められた。
それでもは、毎日ダドリーやその悪友と会うよりかはまだましだと思った。
学校でも一部の男子とはなかなか仲のいいだが、女子との関係はかなり悪かった。
多分原因は男子にもてる容姿への嫉妬と、ダドリーのおふるのダブダブの服をきているから。

ハリーはというと、それよりもかなり悪かった。
学校ではイジめられるし、それに外に出ても、のように遊ぶような友達もいないし―――とにかくいいことがこれっぽっちもなかった。
だから閉じ込められてもそこまで嫌でもなさそうだった。


結局、物置から出るのを許されたのは、夏休みがはじまってからだった。


は学校で勉強をしていない分算数の勉強が遅れるっ!!といって、夏休みの最初のほうは毎日物置に閉じこもって教科書や学校で配られた算数の参考書の問題に取り組んでいた。
そこまで勉強好きではない(むしろ勉強は嫌いな)ハリーは、休みの間ダドリーの考え出した遊び、『ハリー狩り』の相手をさせられるはめになった。

バーノンとペチュニアがいないときは、もハリーと協力してちょっとダドリーたちを懲らしめることができたが、さすがに二人の前では無理だった。
そういうわけで、ハリーとはできるだけ家にはいないことにした。




夏休みもだいぶ過ぎた頃、とハリーが夜キッチンへ行くと、ピカピカの制服を着たダドリーが居間を歩き回っていた
おじさんとおばさんはダドリーを誇らしそうな目で見ていた
それをみて、ハリーは笑いを必死でこらえ、は途端吐き気に襲われ、恐ろしいものでも見たかのように、視線をそらした




ズカズカと地震でも起こったかのような音をたてて、ダドリーがとハリーの方に歩み寄ってきた
ハリーは遂に笑いをこらえきれなくなって、「クスッ」と小さく音をたててしまった
はあわててハリーをかばうように自分の後ろに隠した


「どうだ、ぼくの新品の制服は!」


ダドリーはくるりと回って見せた
ハリーの方から今度ははっきりと笑い声が聞こえてくる
幸い、ダドリーには聞こえなかったようだ。

「お前らの入学するストーンウォールじゃ、登校日に新入生の頭をトイレにつっこむらしいぜ」
「そんなのただの噂に過ぎないよ。本当にそんなことされるっていう証拠は、どこにもないんだからね」


はおじさんとおばさんに聞こえない程度の声でいった。


「ダドリーや、もっとその服をきたおまえをわたしたちに見せておくれ」


ペチュニアおばさんの声にこたえて、ダドリーは「どうだかな」と言い残して、さっきよりもっと大きい音をたてながら走っていった。
おじさんとおばさんがダドリーに集中してるのをいいことに、はハリーの手を引くとキッチンで食べ物を少し盗ってきた
できるだけ音をたてないようにして、居間をでると、そのまま物置にすべりこんだ

ハリーはこらえていた笑いが一気に溢れ出して、ベッドにつっぷしって大笑いしはじめた
はさっきの光景がまだ目から離れなくて、苦虫を噛み潰したような顔をしながら食べ物をハリーにわたした
それをうけとると、ハリーはナイスとばかりに親指をつきだした

がもってきたのはホワイトチョコ一枚とダドリー用のお菓子が数袋、それと飲み物だった。
さすがにご飯とかは気づかれそうだからもってこなかったようだ。
ハリーは久しぶりにこんなにおいしいものを食べたことに感激していた。
ちなみにまだ笑いはおさまっていなかった。

はホワイトチョコが嫌いだったので、ポテトチップスにくらいついていた
お菓子を食べることができて感激しているというのはハリーと同じだった。

このときばかりは二人ともダドリーに感謝した



***



翌日、はいつも通り手紙をとりにいった(ついでに昨日のゴミを捨てた)
床に四通。一通一通確認してみる。
間違えて届けられた手紙を近所に届けるのはの仕事になっていた。
実はそれはの密かな楽しみとなっていた。
彼女は結構近所では人気者で、手紙を届けると、たいていは食べ物をもらえる。

請求書らしき手紙、『バーノン・ダーズリー様』
マージおばさんからの手紙、『バーノン宛』
分厚い羊皮紙の封筒、『ハリー・ポッター様』
同じく、『様』


一瞬、間違えて送られてきたものかと思った。(ちょっと喜んだり)
でもよく見てみると、間違いなく自分とハリーの名前。

「・・・・・・」

しばらくの間。


なかなか戻ってきないを心配して、ハリーがこっちへ歩いてきた

「どうしたの、?」

は無言で手紙をさしだした
ハリーもそれを見てしばらく固まった


「・・・ねぇ、これって同姓同名とか?」
「・・・多分ね。」


でも正真正銘、ハリーと宛なのだ。
同姓同名はいても、まったく同じ地名はないはずだ。


もう一度、まじまじと手紙を見つめた



サレー州
リトル・ウインジング
プレベット通り4番地
階段下の物置内
ハリー・ポッター様




―――仮にもし、同じ地名はあっても、『階段下の物置内』はないだろう・・・―――


「遅いぞ、はやく手紙をもってこんか!!!」


おじさんの怒鳴り声には「はいはい」と面倒臭そうに小声で返事をした
キッチンに戻ると、はおじさん宛の手紙を渡し、ハリーと一緒に自分宛の封筒を開き始めた

このとき、物置に行って読むべきだったんだろう。
二人が手紙を読んでいる事に気づいたダドリーが、声を張り上げた

「パパ!パパ!ハリーとがなんか持ってるよ!!!」

そういうと、ダドリーはとハリーから手紙をひったくった
はなんとか反抗しようとしたが、おじさんに睨まれて縮こまってしまった

ダドリーも二人を睨んだが、とハリーが睨み返すと、あわてて視線を逸らして手紙をおじさんに渡した

「おまえらが手紙を盗もうとするとはな」
「僕たちの手紙だよ!」
「ふんっ!誰がお前なんぞに手紙を書くか」

そういったおじさんだが、手紙を見た瞬間、顔がみるみる青ざめていった

「ペチュニアッ!!!“例の学校”から、手紙がっ!!!」


それをきいた途端、おばさんの顔も青ざめていった


「な、なんですって・・・??」

ペチュニアおばさんに手紙を渡すおじさん
ダドリーは初めて無視されて、機嫌が悪くなったようだ

「パパ、ぼくにも見せてよ!!」
「僕の手紙だ、読ませて!!!」
「私の手紙を返してよ!!」
「あっちへ行け!!!全員外へ出るんだ!!」

おじさんはありったけの声を張り上げて三人を追い出そうとした。
怒鳴られることに慣れていないダドリーは黙り込んだが、とハリーは慣れていたので、動じなかった

「「私(僕)の手紙を返して!!」」

「出て行け!今すぐにだ!」


そういうとおじさんはダドリーとの襟首をつかんで、ハリーを足でけりながら外へ出し、ドアを閉めた

「パパに初めて殴られた・・・!ハリー、おまえのせいだぞ!」
「うるさい!」

ハリーはそば耳をたててバーノンおじさんの声をききながら、ダドリーを怒鳴りつけた
ダドリーはそれでもハリーをドアから引き剥がそうとしたが、がダドリーをおさえつけた

「ハリー、なんかきこえた?」
「全然きこえない・・・」



ハリーがくやしそうな顔をした
結局、中の会話は聞こえなかった。



***


日曜日。おじさんはやけに上機嫌だった。
あの日から、やハリーへの手紙は絶えなかった
そのため、おじさんは会社を休んで、家のあらゆる隙間に板を打ち付けた



「日曜日はいい。実にいい日だ。なぜだかわかるか、ダドリー?」


おじさんはダドリーに答えを求めたが、ダドリーはまったくわからないという顔でおじさんを見返した


「郵便の配達がないから。」


考え込んでしまっているダドリーのかわりに、ハリーが答えた


「そのとおりだ、ハリー。」

おじさんはクッキーをひとつつまんで口へ入れる


「今日は手紙なんぞ見る必―――」

サッ


言い終わらないうちに、何かがおじさんの頬をかすめて飛んできた

「な、なん・・・」


シュババババババ!!!!


それに続いて、暖炉から、そして板をうちつけたはずのポストから手紙が家の中に飛び込んできた

ダドリーとペチュニア、そして今日は平和に過ごせるはずだと思っていたバーノンは、パニックになって部屋から逃げ出した。
はめったにない(正確には絶対ありえない)事にテンションをあげて喜び、ハリーは飛び上がって手紙をつかもうとした
も自分宛ての手紙を拾い上げると、物置に逃げ込もうとした。

だが手紙をバーノンに奪われた

「返してよ!!私の手紙!!」


そう話している間も、手紙はどんどん降ってくる

「もう嫌だ!!こんな家!!!!」



***


夜中の静まりきった小屋では、荒波の音だけが響いた。
バーノンはもうこんな家は嫌だ!といって、海の上にたっている家に住み移ったのだ。
暖房も何もない薄暗い家だったが、おじさんは『手紙がくるよりかはましだ』と満足そうにいっていた。
今だけは、巻き添えをくっているダドリーを哀れに思う。(でもいい気味だ)


おじさんとおばさんは奥の部屋に行き、ダドリーはとても清潔とはいえないソファでまるまっていた
おきているのは、とハリーだけだった。

「明日僕との誕生日だよね」


ダドリーたちを起こさない程度の小声で、ハリーが呟いた

「ああ、そういえば。そうだったような気も・・・。」
「忘れてたんだね・・・;」
「だって、誰も祝ってくれないし。特にいい事ないじゃん。」
「それもそうだけど、なんだかなぁ。。。」


ダドリーの誕生日と自分の誕生日を比べてみて、ハリーはため息をついた


「後二分だね。」

はダドリーの手首についている腕時計の蛍光表示盤を見た

「そうだ、地面に『ハッピーバースディ』って書いて、明日になったら、蝋燭がわりに吹くっていうの、どうかな?」
「うん、ナイスアイデア!」


そういうと、ハリーは地面にハッピーバースディ、と書いた
も、ハッピーバースディ、ハリーと書いた


十一歳まで後三秒、二秒、一秒・・・


フーッ


二人は同時に地面を吹いた。

その瞬間



ドンッ!!!


ものすごい音と共に、扉が床に落ちた




あとがき
ちょっと書き方を原作風に・・・(なってない)
ヒロインとハリー、誕生日が同じだったりします。
にしても、原作と映画、混ざってるなぁ・・・;;
では、ここまで読んでくださってありがとうございました。
2005.12.1 晴天マユミ
/賢者の石/