数日後、はいつもの三人組と一緒に大広間に向かった
誰も口をきかなかった

入ってすぐ、ロンが顔をしかめた
広間はグリーンとシルバーのスリザリンカラーで飾られていた


「ちぇっ、スリザリンの優勝か」


ロンは小声で悪態をついたつもりだったが、いきなり部屋全体がシーンとなったために大きく響いたので、慌てて口を塞いだ

みんながみんな、ハリーやを見てはコソコソと話していた
声はどんどん大きくなり、やがて広間に入ってきたときと同じ大きさになった


四人はグリフィンドールのテーブルの開いている席に座った


みんながハリーとをしっかり見ようと個々に席を立つのを、ハリーは無視しようとした
は困ったように手を振っている



賢者の石についての一件はダンブルドアが言っていた通り、全校生徒が知っているようだ
中にはサインをもらおうと羊皮紙を持ってきている者までいた



ハリーはスリザリンに負けたことでイライラしていた

そこに運良くダンブルドアが現れた



「諸君、静粛に!」


一言で部屋中が静まり返った
ハリーはダンブルドアに感謝したい気持ちでいっぱいだった





Act.22 See you soon to Hogwarts




部屋中が静まった事を確認すると、ダンブルドアはにっこりして切り出した



「また一年が過ぎた。ご馳走にかぶりつく前に、寮対抗杯の表彰を行うとするかの。」



少し間をあけて、ダンブルドアが続けた



「四位は、グリフィンドール。292点。」



少しだけ拍手が起こる
ハリーとハーマイオニーは打ち合わせをしていたかのように同じタイミングで頭を抱えた


「三位、ハッフルパフ。352点。二位はレイブンクロー。426点。」


二つともグリフィンドールの時と同じような拍手が起こった。



「そして一位は、スリザリン。472点。」



スリザリンのテーブルから嵐のような歓声が上がった



はマルフォイと目が合ったので、取り敢えず口ぱくで『おめでとう』と伝えた


「よしよし。スリザリンの諸君、よくやった。しかし、つい最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまいて。」



スリザリンのテーブルの熱気が少しさめた
みんなそれぞれの顔を見合わせ、なんなんだろうと囁いた




「かけこみの点数をいくつか与えなければならないのでのぅ。まず最初は、ロナルド・ウィーズリーくん。この何年間か、ホグワーツで見ることができなかったような、最高のチェス・ゲームを見せてくれたことを称え、40点与える。」



グリフィンドールの歓声は天井を吹き飛ばしかねなかった
思いがけない得点だ

まだそのことを教えてもらっていないはよくわからなかったが手を痛くなるほど思いっきり叩いた


ダンブルドアは歓声が収まるのを待ち、次の言葉を発した


「次に、ハーマイオニー・グレンジャー嬢。火に囲まれながら、冷静な論理を用いて対処した。40点。」




ハーマイオニーの顔がかぁっと赤くなった


「ハーマイオニー!!すごいじゃん!!」


はハーマイオニーの肩をポンポンと叩いた
ダンブルドアがそれを笑顔で見て更に続けた


「三番目に・・・、ハリー・ポッター君と嬢」



がその場でカチーンと固まった



「その完璧な精神力と、並外れた勇気を称え、グリフィンドールに100点与える。」



耳をつんざく程の歓声が上がった
グリフィンドールの生徒はみな我を忘れているように見えた


「スリザリンとならんだわ!!」



ハーマイオニーが大声で言った
歓声がいきなり途切れ、全員が全員、ダンブルドアに注目した




「―――最後に―――、敵に立ち向かっていくのにも大いなる勇気がいるが、味方に立ち向かうのには、もっと勇気が必要じゃ。そこで、10点を―――ネビル・ロングボトム君に与える」




部屋の音がすべて消えたと思った次の瞬間、爆発が起こったような歓声が上がった
グリフィンドール生だけでなく、レイブンクロー、ハッフルパフの生徒も立ち上がって喝采した
スリザリン生は全員青ざめていた



「したがって、飾りつけをちょいと変えねばならんのう」


ダンブルドアが手を叩くと、部屋を飾っていたグリーンの垂れ幕が真紅に、銀色が金色に変わった
スリザリンの巨大なヘビが消えて、グリフィンドールのそびえたつようなライオンが現れた
部屋全体の雰囲気が一気に明るくなったようだった



歓声はなかなか収まらなかった
ハリーには、スネイプが苦々しげな表情でマクコナガルと握手しているのが見えた

―――危うく黒ハリーが降臨しそうになった




その夜はハリーにとって一番すばらしい夜だった
今夜のことはきっと、ずっと忘れない









ホグワーツを離れる当日、ハーマイオニーが突然切り出した




「そういえば、試験の結果、返ってきたわよね。みんなどうだった?」



ハリーもロンも意外とよかったと頷きあったが、だけ一人、首を傾げた




「そんなの、あったっけ?」
「「「・・・えっ」」」



しばらくの沈黙の後、が「あ!!」と手を叩いた



「もしかしてこの前返されたあの紙のこと??だったら、今持ってるかも!」




がゴソゴソとバッグをあさり始めた



三人はそれをあきれたような目で見た


「そういえば、ハーマイオニーはどうだったの?・・・やっぱり学年トップ、だよね?」




ロンの問いかけに、ハーマイオニーがう〜んと困ったような顔をして答えた



「それが、私よりも上の成績がいるみたいなのよ・・・。」
「え!!嘘!!」


ハーマイオニーが「誰かしら」・・・と悩み始めた
ちょうどそのときがバッグの中から一枚の封筒を取り出した



「ねぇねぇ、これ??」

は封筒をパタパタさせながら三人の輪に加わった


「あ、うん、そう。これ。」

ハリーが封筒をまじまじと見た
見事に、開けようとした形跡さえない


「後で開けようと思ったまま忘れてたんだよね・・・」


が封筒を綺麗にあけながらあははと笑い、中から一枚の紙を取り出した


三人が後ろから覗き込む




「えっと、魔法薬、S+。薬草学、S。飛行訓練、S+。」



は上から下までざーっと目を通した


「・・・全部SかS+・・・ってあれ??」



はくるくるっとまわりを見回した


「「「じゃ、じゃあ・・・」」」


声のした方を見ると三人が三人とも固まってを指差していた


「「「学年トップって・・・」」」

は一瞬ポカンとしてから、自分を指差した



「えっと・・・私???」
「「「嘘ぉおおおっっ!!!???が!?ありえない!!」」」
「し、失礼な!!」



が赤くなって頬を膨らませた



!?一位!?学年トップ!!??」


ロンが一番慌てていた
いつものの言動から学年トップなんて考えられないが、そういえば、は今まで授業で悪い成績を出したことがなかった
考えてみれば、授業で寮の得点を一番稼いだのはだったかもしれない


とうの本人は事の重大さにあまり気付いていなかった


「一位!?本当に!?やったぁ!!!」


ハーマイオニーは苦笑した
無邪気に喜んでいるを見ると、くやしがる気さえ起きなかった






、ハリー、ロン、ハーマイオニーはそれぞれ自分の旅行かばんを持って、ロンドン行きホグワーツ特急のプラットホームに立った



列車に乗り込もうとしたは、遠くにいるハグリットを見て、ロンとハーマイオニーに「ちょっと待ってて」と告げると、ハリーの腕を引っ張ってハグリットの元へ歩いていった


「別れも言わずに行っちまうのかと思った」


ハグリットがにっこりして二冊の皮表紙の本を差し出した


「ほれ、お前さんたちにだ」


それぞれ一冊ずつ受け取り、あけてみると、中には写真がぎっしり貼ってあった

グリフィンドール柄のマフラーとスリザリン柄のマフラーをした人たちがハリーとに手を振っている
二人の父親と母親だった


「そんなに写真が集まらなかったから、二人ともほとんど同じ写真になっちまったが・・・、気に入ったか?」
「うん。とっても!!」
「ありがとう、ハグリット!!!」



二人がハグリットに抱きつく
ハグリットは少しあたふたしたが、二人をぎゅっと抱きしめる




「ほれ、そろそろ列車が来るぞ。」
「うん。じゃあ、またね、ハグリット。」


二人はハグリットに手を振ると、ロンとハーマイオニーの元に駆け寄った



「なんか、家に帰るのって・・・変な感じね。」



ハーマイオニーが複雑な表情で言った


「帰るんじゃないよ。・・・僕たちはね」



とハリーは目をあわせて笑った




そう

私たちは、“家”に戻るんじゃない

“家”を離れて、ちょっと遠くまで旅をしにいくだけ




二ヶ月ぐらいしたら、また、帰ってくる

そのときは、笑顔で、「ただいま」って言おう







The 1st Story-Fin






あとがき
一発書きです。割とすらすら書けましたw
自然教室、予餞会+生徒会で忙しく、
やっぱり更新が遅くなりました・・・;
でも、取り敢えず賢者の石編、完結です!!
では、ここまで読んでくださってありがとうございました!
2007.3.13 晴天マユミ
/賢者の石/あとがき