Silver Soul
第二話



「土方さん!総悟!」






真選組屯所




制服を着たままテレビを見ていた土方の元へ、が走ってきた


手には、なにやら数枚の紙を持っている





「何だ、書類なんか持ち出して。ミーティングは終わったぞ」





テレビ画面からは目を離さず、全く興味なさそうに土方が言った




「あれ?総悟は?」



ついさっきまでいた筈・・・・・・と、は部屋を見渡すが、そこに沖田の姿はなかった





代わりに土方が




「総悟なら、もう仕事に出たぞ」



そう答えた




「あらま、いつもサボってるくせに・・・・・・まあいいや。土方さん、覚えてます?池田屋の事件」






そういうと、は手に持っていた書類を床に広げ始める



“池田屋”という言葉を聞いた途端、土方はテレビを見るのをやめて、の方に振り向いた






「あの銀髪野郎、どっかで見たことあるなと思って調べたんですよ。そしたら・・・・・・」




そういいかけて、広げた書類の中から数枚を選んで土方の前に並べた
どうやら、最近起こった事件の調査書のようだ







「遊郭作った天人が逮捕された事件とか、変な奴が多いんですけど・・・あの人、かなりこういうの関わってるんです」



更に、また別の紙を土方の前に出す







「これ、覚えてます?入国管理局が雇った奴が、央国星の王子のペット殺して国際問題になりかけたやつ」




調査書を見た土方は、微かにうなずいた



その事件をきっかけに、幕府の入国管理局局長が首になったのを知っているからだ

当時は幕府内でもかなり話題になっており、恐らく、知らない者はいない





「この時に雇われてたのが、あの銀髪らしいんです。今度は、ちゃんと写真もついてます」





細かい文章の下には、血まみれでカメラにピースをしている銀時が写っていた
横には、同じく血まみれの新八もいる




「資料はないんですけど・・・池田屋の取調べが終わった直後に、脱獄犯に逃走手伝わされたりもしてますね」



なんなんでしょうね。と、が最後に付け足した




そこまで聞くと、今まで黙っていた土方が




「まったくだ。何がしたいんだか、読めねえ野郎だ」


と、口を開いた





「総悟も気になってたみたいだから、教えてやろうと思ったんですけど・・・・・・一足遅かったみたいですね」





それだけ言うと、広げた書類を一つにまとめだした


土方は、に回収される前に、一枚だけ書類を手にとって読み始めた






「・・・・・・池田屋のですか?それ」




順番に並べて、足りない書類が池田屋の書類だったので、土方に聞いた





「ああ。桂にも関わりがあるっつーのは、特に気になるからな」






沖田やと同じように、土方も銀時に少なからず興味はあった




今回が調べてきた資料だけを見ても、どうやら、自分の感じた興味は本物らしい・・・・・・そう思った










それと同時に、土方はあることに気がついた




「・・・・・・なんだ?どこにもこいつの名前が書いてねえじゃねえか」




土方の言ったとおり、どの調査書にも、銀時の名前は書いていなかった
それどころか、所在にも一言も触れていない





「国際問題の奴は、いつの間にかいなくなってたそうです。池田屋の時は、取調べした奴の聞き忘れと聞きました」







これだから俺達がやるっつったのに・・・・・・



話ながら、は思った





銀時たちの取調べは、真選組の役ではないと、別の管轄に回されてしまった



何度も異議を唱え、結論を覆そうとしたが、最終的には大江戸警察に一任することに決定





案の定、重要参考人本人について聞き出すのを忘れるという大失態を犯した






上も、この件をそれだけ甘く見ていた・・・・・・ということだ






「他のはたいした事件じゃないので、現場に居合わせた警官がさっさと帰しちゃったらしいです」



それを聞くと、土方は飽きれたように




「警察の質も落ちたもんだ・・・・・・」


と、呟いた








「さてと・・・・・・市内巡回の時間だ。局長は?」


に紙を返しながら、土方が問う
局長とは、真選組の局長。要するに、真選組で一番偉い人





「えーっと・・・・・・有給ですね、今日」



偉い人にも休みはある。たまたま今日がそうらしい





「そうか。なら、何も報告する必要ねえな」



それだけ言うと、近くに置いてあった刀を腰に差す
落ちないことを確認すると、その上から制服の上着を羽織った





「行くぜ、。巡回してりゃ、その銀髪野郎にも会えるだろ」




どうやら、そっちの方が目的のようだ





「それもそうですね。それじゃ・・・・・・歌舞伎町周辺の方がいいですね」




もかなり乗り気のようで、表情からもそれがうかがえる
しかも、場所まで指定してきた






「歌舞伎町?なんでまたそんなところに」



歌舞伎町四天王って知ってます?と、は切り出した




「その内の一人がスナックを経営してて、二階に居候してる奴が、万屋をやってるって話です」





「・・・・・・それが?」



ここまでだと、何の話だか全くわからない





「店の名前は“万屋銀ちゃん”。居候してるのは、銀髪の侍らしいです」





ピッタリでしょ?と、は土方に問いかけた





「・・・・・・ま、それしかねえなら、行ってみる価値はありそうだな」



余程の情報に信頼があるのか、迷う様子もなく、土方が言った




「局長に話すと、何しでかすかわかんねえ。帰ってくる前に行くぞ」




上司なのに、軽く邪魔者扱いする土方
かなり急いでいるらしく、の返事を聞く前に、表へ出ようと歩き出した




「あっ!待ってくださいよ」







突然歩き出した土方を追って、が一歩踏み出した瞬間―――



の制服のポケットで、携帯がなった





「ハイハイ、どーしたの?」



隊員の無線通信だったらしく、その場ですぐに出た





「・・・・・・え、また?メンドくせーなァ。今日で何件目?」




どうやら、事件らしい


しかも、会話を聞く限りでは、何件も報告が入ってるようだ





「は?歌舞伎町?今までの全部?・・・なんでさっき言わねーんだよォ」


更に、全て歌舞伎町で起こっているようだ





「つーか、俺らの担当じゃねーじゃん完全に。なんでくるかなァ」



そこまで重要でもないようだ





「・・・・・・まあいいや。土方さんと俺でそこ行くことのなってっから、お前ら退いていいぞ。他巡回して」




ある程度話がついたらしく、最後にそう言うと、電話をきった





「なんだ?何かあったのか?」



が遅いので、先に歩いていったはずの土方が戻ってきた




いや、大したことじゃないんスけど・・・・・・とが話し始める





「今朝からやたらと通報が多いんですよ。しかも、全部歌舞伎町周辺で起こってるんです」



「犯人は?」



「捕まってません。ってか、犯罪じゃなくて、近所迷惑だからとかで通報来てるんですよ」




まったく・・・・・・と言いたげな表情の





「面白いことに、現場は全部歌舞伎町付近。犯人も、目撃情報から一定の人物みたいです」



歌舞伎町?と、土方がに聞き返す

それに対して、は無言でうなずいた




「もっと言うと、ストーカー行為に近くて・・・・・・電柱登って叫んだりとか、あちこちで騒ぎが起きてるみたいです」

「完全な犯罪じゃねえか」





なぜ近所迷惑程度の通報で済まされているのかと、つっこむ土方






「ま、百聞は一見にしかずというし・・・・・・この件の調査も兼ねて、行きますか。歌舞伎町」




土方が待っていたのだが・・・・・・が先頭になって、玄関から飛び出す



急に走り出したを追って、土方も屯所を出た














「・・・・・・なんで道場なんだ?」



通報通り、現場に行った二人
ついた場所は、“恒道館”という道場だった


ずいぶん使われていないのか、家はそれほどでもないが、看板は古びている






「この道場のすぐ近くの電柱に、ストーカー野郎がよじ登って叫んだそうです」



通報によれば、ストーカー被害にあっているこの道場の娘


この娘がまた凄いらしく、電柱によじ登っていたストーカーに灰皿を投げて対抗したらしい
見事灰皿は顔面にヒット。犯人は電柱から転落



かけつけていた警官が話を聞こうとしたが、いつの間にかいなくなっていたそうだ






「・・・・・・ってことは、もうここには何もねーんじゃねえのか?」



の話を聞いて、土方がようやく気付く





「ええ。目撃した近所の人たちも、詳細だけ聞いてさっさと帰しちゃいましたから」


「無駄足じゃねえか!!何のために来たんだよ、ここに!!」




それもそうだ。と、は全く気付いてなかったらしい





「ってか、他の場所聞いてないんです。細かすぎてめんどくさいんで」

「ちゃんと聞いとけ馬鹿野郎ォォオオオ!!」




予想外の展開に、怒る土方





「一箇所目でもう行き詰ってんじゃねえか!!話続かねーぞ!!」

「慌てなさんな、土方さん。ドラマのストーカーってのは狙った女の家のまん前にいるじゃないですか。きっとここにも」

「いるかッ!!通報されて終わりじゃねーか!」





要するに、一箇所目でもう手がかりが尽きたということだ








「手がかりはないですけど、いい機会です。銀髪野郎探しながら適当に巡回しましょーや」



そう言うに、反省の色はない




「もしかしたら、案外こういう事件にからんでるかもしんないじゃないですか」





僅かな可能性をが口にしたのと同時だった






さん!!また出ました!!』


緊急用の無線から隊士の声が聞こえた




「え、マジ?どこどこ!?」



『歌舞伎町のレストランです。今から住所を言います・・・・・・』







メモを取りながら、細かい情報を聞きだす

めんどくさかったからと言っていた人には、とても見えない




「土方さん、捜査続行です。行きましょう!」






ツキが回ってきたとばかりに、は走り出した














とあるレストラン



教えてもらった住所のレストランに行くと、今度はしっかり情報を聞くことができた

どうやら、被害者と接触したらしく、大騒ぎになったらしい





ところが、話を聞いていくと・・・・・・






「・・・・・・でも、なんだか和解したらしくて、一緒にどこかに行っちゃいましたよ?」



いろいろ聞きだした割りに、あっさり解決していたのだ








「つまんねーの。こっちは苦労してここまで来たってのによォ」

「いや、苦労したのはお前の所為だろ」



店を出ながら、二人は帰路を辿ることになった
詳細は分からぬままの未解決とはいえ、和解したというならもう出番はない




「ホントに無駄足でしたねェ。あの侍にも会えなかったし」


は、かなり残念そうだ




「ま、今に始まったことじゃねえさ。帰るぞ。俺ァ疲れた」



初めは乗り気だった土方も、目的の侍が見つからなかったので残念そうに見えた
に付き合わされたので、疲れているのがよく分かる






「はぁい・・・・・・・・・。あれ?なんですか、あそこ」



が指差す先には橋があり、何故か人垣ができていた





「行ってみっか。帰り道だ」


言いながら、土方が真っ先に歩き出す
それを追って、も慌ててついていく





「オイオイ、何の騒ぎだ?」


橋の手すりにもたれかかっている二人の男に、土方が尋ねた




「エエ、女とり合って決闘らしいでさァ」


二人の服が真選組の物だと気付いた方が、素直に答える





「女だァ?」



タバコを手に取りながら、土方が呆れ顔になる

何も言わなかったが、もかなり呆れていた





「で、決闘してたってのは、どんな奴等だ?」


呆れつつも、本業は忘れない
どんなにくだらない決闘でも、見つけたからには調査書は取らなければならないからだ





「まだ下にいますよ。負けたのは黒い髪の方で、勝ったのは銀髪」




銀髪?と、と土方は声を揃えていった




「白髪にも見えますけどねェ・・・・・・・・・あ!それと、両方とも侍でしたよ」





侍ィ?と、またしても二人は声を揃える






「馬鹿な奴もいるもんですねェ、土方さん。んなもんで決闘してもしょーがねえだろうに」




そう言いながら、二人は橋の手すりに近づく


河原にいるであろう女を取り合った馬鹿の顔を見ようとしたのだ







河原には、一人の男が仰向けに倒れていた



黒髪だった





あの話があっていれば、こちらは負けた方だろう






「全くだ、くだらねェ。どこのバカが・・・・・・あ」




その男の顔を見た土方が、言葉を失う






「どうしたんですか?土方さ・・・・・・あ」




も同じように、言葉を失った










「「近藤局長・・・」」







倒れていたのは、真選組局長・近藤勲


言葉を失うのも、当然のことであった







「あ、あ〜らまァ・・・・・・・・・拾ってきますか?」




これ以上放置しておくわけにはいかないと、は橋を降りようとするが・・・・・・





「いや、帰るぞ」



土方はそれを止めた

え?とが振り返ると、既に土方は屯所の方向に歩を進めていた






「帰るぞって・・・・・・局長どーするんですか?」



土方に駆け寄りながら、が問う

もっともな問いだが、土方は間髪いれずにこう答えた






「バカ言え。真選組局長が女賭けた決闘で負けましたなんて、死んでも言えるか」





要するに、今近藤の元へ駆け寄れば、真選組だと自らばらすようなもの


真選組のためもあるが、近藤本人の名誉のためにも、今ここで近藤を回収できないのだ






「これ、誰にも言うんじゃねえぞ。なにやらかすか、分かったもんじゃねえ」



隊士は近藤を慕っている
喧嘩で近藤が負けたなんて言ったら、何をしでかすか分からない









「・・・・・・総悟には?」



的には、総悟なら別に何もしないような・・・・・・そう思った





「一応言っとけ。あいつは・・・・・・まあ、何もしねえだろ」



多少思い当たる節はあるようだが、土方もと同じ考えらしい






「ハイハイ。じゃ、帰りましょうかね」


近藤を置いて、二人の姿は、どんどん橋から遠ざかる








銀髪の侍・・・・・・まさかな




そう思いながら、は帰路を辿っていった








あとがき
今回はオリジナルです。最後だけ原作沿いですけど
真選組の話は少ないんで、この後も何回かこういう感じになると思います
えーっと、今回の話は、銀魂のノリが上手く書けませんでした・・・・・・(泣
ヒロインの性格は総悟に近い設定なんですけど・・・・・・相方が話に出てこないので、軽く不発でした
土方さんも不発でした。頑張ってみたんですけどねェ
次回頑張ります!
では、ここまで見てくださってありがとうございました!!
ちなみに今日は瞳の誕生日ですw(マユミより
2007.5.9 煉城瞳
/Silver Soul/