Silver Soul
第一話
――戌威星大使館前――
余程の身分の者でなければ入れないその敷地の門へ、一人、近づく人影があった
髪は短めで、服は上下とも黒。ズボンをはいていて、身長は165前後
手をポケットに突っ込み、静かな足取りで歩くその姿からは、男か女かの区別はできない
ここまでなら、どこにでもいる一般人のようにも聞こえる
だが、この人物には、普通の者にはあるはずのない特徴があった
それは、腰に刀を差しているということ
地球に突如舞い降りた異人『天人』
何のことだかわからない人には、宇宙人と言えばわかるだろうか
彼らは地球へくると江戸城に大砲をぶち込み、無理やり開国させてしまった
その上天人は、廃刀令で侍から剣と地位を奪い、現在は幕府の中枢にまで根を張る
その所為で、侍は弱体の一途を辿るのみとなってしまった
そんな世の中で堂々と腰に剣を差して町を歩けるのは、幕臣ぐらい
あとは、侍を捨て去り、勝手に天人と不平等な条約を結んでしまった幕府を倒そうともくろむ攘夷浪士
どちらの場合にしろ、常人ではない
「ここか・・・・・・」
その人物は、そう静かに呟くと、今度は人目に付かないような路地へ移動した
そして壁に寄りかかり、大使館の入り口から目を離さないまま、ズボンのポケットから携帯を取り出した
「あ、土方さん?俺です、つきましたよ。・・・ええ・・・・・・はい、異常なしです」
会話から、どうやらこの人物は、大使館前の見張りに来たらしい
「・・・・・・え?戻るんですか?・・・・・・はい、わかりました。すぐ行きます」
そういうと電話を切り、再びポケットへとしまい込んだ
そのまま、先ほど来た方向へ逆戻りを始める
「あ〜あ・・・・・・せっかく一暴れできると思ったのになぁ」
呟きながら路地をぬけ、大使館沿いの通りへと出て行く
ある程度広い通りだが、戌威星大使館があるとあって通行人は少ない・・・・・・というかいない
戌威星は、地球に一番初めに来た天人
いきなり地球に来て江戸城に大砲をぶち込み、無理やり開国させるような天人だったので、近づき難いのだろう
自分達の星だってのに・・・・・・ちょっとおっかねえ位で通りも歩けなくなるたァどういうこった・・・
一旦立ち止まり、静まり返った道をぐるりと見回してそう思った
そんな中、その視界の中に、3つの人影が入った
近づき難いとは言え、まったく通行人がいないわけではないようだ
少しその場にとどまっていると、数分もしないうちに、その3人は横を通り過ぎた
一人はメガネをかけた少年。もう一人はチャイナ服の少女
最後の一人は・・・・・・死んだ魚のような目をした銀髪天然パーマ
メガネの少年と銀髪の人物にいたっては、腰に木刀を差している
・・・侍か・・・・・・
そう思ったとき、突然電話が鳴った
慌てて取り出し、通話ボタンを押すと・・・・・・
『オイ!!帰るまでに何分かかってんだ!』
いきなり怒声が聞こえてきた
「わかってますよ!もう付きますから。今度はちゃんと戻りますから!」
そう言うと、また通話を切った
さっきまでは歩いていたが、今度は携帯をしまったと同時に走り出す
その途中で、ふと来た道を振り返る
すでに、先ほどの3人組の姿は見えなかった
・・・あの銀髪の奴・・・・・・どっかでみたな・・・・・・・・・
今度はまっすぐ向き直りその人物は走っていった
「・・・・・・ふう・・・。何やってんだ、あいつは」
先ほどの電話の相手・・・・・・土方は、電話を切ると同時にため息をついた
真選組・鬼の副長土方といえば、江戸で知らない者はいない
今現在、土方はとある部屋で待機中
連続爆破テロ事件の捜査で指揮を取っている彼は、大使館の近くにあるこの部屋を臨時本部としているのであった
その調査の一環として、土方は大使館周辺を数名の隊員に見張らせている
ここまで言えばわかるだろう
土方と電話をしていたあの人物は、真選組の人間
名前は。真選組の秘書をしている
外見での判断は難しいが性別は女。本人は知られたくはないようで、性格から言動まで全て男と変わらない
なので、秘書とは言っても任務となれば刀を振り回し、バズーカまでも引っ張り出す
「オイ、総悟。が戻ったらいったん全員集めるぞ・・・・・・・・・・・・総悟?」
土方は、後ろにいるはずの、同じく真選組の沖田に声をかけるが・・・・・・返事は無かった
沖田は、真選組でも一・二を争う程の剣の腕の持ち主で、小隊の隊長も務める
だが、今はアイマスクを装着し、完全睡眠体制で仰向けに居眠りをしていた
こんのやろッ・・・・・・!
刀を抜いて叩っ斬りたくなったが、そこは必死に抑え、今度は・・・・・・
「・・・・・・はぁ・・・」
もう一度ため息をついた
も帰ってこないことには何も行動が起こせないので、土方は窓際に移動しながらタバコに火をつけ、吸い始める
そのまま、窓枠に肘をつき、下の通りに目を落とす
妙に静かだな・・・・・・人っ子一人いやしねえ
人通りの少ない通りとは聞いていたが、まさかここまで誰も通らないとは思ってもみなかった
「・・・・・・死ね土方・・・・・・」
そんなことを思っているのをよそに、沖田は日頃の本音を土方に寝言でぶつける
通行人はいないうえ、後ろには居眠り野郎
土方と沖田の入る部屋は、異常な静かさだった
だが、その静かさも・・・・・・
「戻りましたッ!!!」
息を弾ませながら戸を開けたの声によって、終わりを告げた
「おう、戻ったか」
そう言うと土方は、に向かって双眼鏡を放り投げて「交代だ」と言って窓際を離れた
はそれを受け取ると、居眠りをしている沖田の上を飛び越え、土方に代わって窓際に陣取る
「なんでェ、結局見張りですか。それならわざわざ戻らなくても良かったのに」
双眼鏡から、先ほどの大使館方面を覗き込みながらいう
それを聞いた土方は、タバコの煙を吹きながら
「いいんだよ。騒ぎが起きねえっつーのに、見張ってたって意味ねえだろうが」
そう言い放った
「起きてないから見張るんでしょうが」
「・・・・・・俺たちの任務は、大使館守ることじゃねえんだよ」
反論するに、めんどくさそうに回答する
「朝いったじゃねーか。攘夷志士のアジト探るから、大使館張り込むって」
「すんません、聞いてませんでした。土方さんの話だったんで」
「完全に意図的じゃねえかァアア!!!」
バンッと壁をたたきながら、土方が怒鳴る
「まあまあ、そんなに怒鳴らないで下さいよ」
「オメーのせいだよ、オメーの!!」
今度は、タバコをくわえたままつっこんだ
「で・・・・・・理由は分かりましたけど、テロ起きないじゃないですか」
依然双眼鏡を覗き込みながら、が不満そうに言う
「そりゃそうだろうよ。情報は入ったが、確かかどうかはわからねえんだから」
そんなに対して、静かに土方が答える
言葉からして、大して何も思っていなさそうだが、やはりこうして見張り続けているのはつまらないらしい
双眼鏡をもう一つ取り出すと、の横に立って同じ方面に目を向けた
「ちぇッ。さっさと爆発でも何でもいいからおきてくれりゃいいのに・・・・・・・・・」
そうが言いかけたときだった
ドカーン!!と、ごく一般的だがとんでもない大きさの爆発音がした
その数秒後、大使館から黒い煙が立ち上る
「噂をすればなんとやらってわけか・・・・・・」
それは正真正銘、テロによる大使館爆破であった
「どーすんですか、土方さん」
目の前でテロが起こったわりに、あまり動揺していない
まあ、それは土方も同じだが
「何もしねーよ。犯人見つかるまでここにいるだけ・・・・・・ん?」
突然、土方の口が止まった
「あれは・・・・・・・・・。、そこ見てみろ」
そういわれて、は黙って土方の視線の先に目を落とす
丁度その時、服装も何もかもバラバラな4人組と、どうやらそれを追っている天人の団体が通り過ぎていた
しかも、そのうちの3人には見覚えがあった
「あ、さっきの連中」
それは、先ほど、この場所へ戻ってくるときにすれ違った3人だった
「バッカ、そっちじゃねえよ。その前だ、前」
土方に言われて、もう一度・・・今度は3人組の前方を見据える
そこには、非常に髪の長い人物が、同じく天人に追われて走っていた
には、その人物にも見覚えがある
「ありゃあ・・・・・・桂!」
一連のテロの首謀者との情報が入っている、攘夷派過激浪士・狂乱の貴公子、桂小太郎
真選組が追っている人物でもある
「とうとう尻尾出しやがった」
そう呟くと双眼鏡から目を離し、「山崎」と後方の扉に向かって呼びかける
それと同時にガラッと音を立てて、扉が開く
「何としても奴らの拠点おさえてこい」
「はいよっ」
短い返事のあと、再び扉の閉まる音がして、山崎と呼ばれた男は外へ出て行った
「・・・・・・、あれあるか?桂の手配書」
「ぐじゃぐじゃですよ」
そういって差し出された桂の手配書は・・・・・・本当にぐしゃぐしゃだった
だが、土方はそんなことには構わず、「人相一致か」と呟いた
「天人との戦で活躍したかつての英雄も、天人様様の今の世の中じゃ、ただの反乱分子か」
攘夷志士は、かつての攘夷の際、天人と戦った侍が大多数を占めている
桂もそのうちの一人であり、今回の一連のテロは、彼らの手によって行われている“攘夷”なのだ
「この御時世に天人追い払おうなんざ、大した夢想家だよ」
幕府は現在、完全に天人を受け入れてしまっている
そんな中で天人を追い払おうなんて考えは、不可能に等しいというわけだ
「・・・・・・さて、総悟起こすか」
そういって、手元の紙と沖田を交互に見比べる土方
それを見たが「それ、捨てても構いませんぜ」といった途端、土方は紙を丸め、沖田に投げつけた
「オイ、沖田起きろ」
紙は見事に命中したが・・・・・・沖田は何も感じていないようで、ノーリアクション
「、総悟起こせ」
「りょーかい」
そう返事を返したは、沖田の所でしゃがみこむと
「そーご。今なら土方さんの後ろ、がら空きだぞ」
「何ィ!!」
の言葉に、今まで寝ていたのが嘘のような速さで、沖田はその場に起き上がった
そして、手にはどこから取り出したのかはわからないがバズーカが握られていた
「土方覚悟!!!」
そう叫んだ沖田は、土方がいるほうとは正反対の方向を向いていた
アイマスクは着けっぱなしなので、そうなるのは当たり前である
「コノヤロー。真っ暗で何も見えねえじゃねえかィ」
「何してんだテメーは!!」
「こうでも言わなきゃおきねーだろうが、テメーは」
「誰がそんなアブねー起こし方しろっつったよ」
静かにキレる土方をよそに、二人のボケは今日も絶好調であった
「・・・・・・にしてもお前、よくあの爆音の中寝てられるな」
話の筋を戻そうとしたのか、土方が沖田に向かって切り出した
沖田はそれを聞くと、アイマスクを首まで下ろしながら
「爆音って・・・またテロ防げなかったんですかィ?何やってんだィ土方さん、真面目に働けよ」
「もう一回眠るかコラ」
もちろん、これにも土方が冷ややかにつっこむ
「大体、今日は大使館警護なんて任務はねえよ」
「あれ?そうでしたっけ?俺ァてっきりテロ防ぐために張り込んでるんだとばっかり」
「なんだ、テメーもアレか?と同じか?」
どうやら、沖田も話を聞いていなかったようだ
「・・・・・・まぁいい。俺ァ天人の館がいくらフッ飛ぼうがしったこっちゃねェよ」
「職務放棄ですか?」
「いけねぇな土方さん。副長ともあろう人が、問題発言ですぜ」
「テメーら少し黙ってろ!!」
土方が叫んだところで、ようやく二人が話すのをやめる
「・・・・・・連中泳がして雁首揃ったところを、まとめて叩き斬ってやる」
そういうと土方は鞘から刀を抜き、刃を上にして手をかざす
「真選組の晴れ舞台だぜ。楽しい喧嘩になりそうだ」
警察とは思えないような言葉を口にする土方
彼がかなりの喧嘩好きということがうかがえる
「副長!攘夷志士のアジト、突き止めました!!!」
丁度そこへ、先ほど調査に出かけた山崎が戻ってきた
「場所は“ホテル池田屋”。目撃情報から、やはり桂一派の犯行と見られます」
「そうか。ご苦労だったな」
刀を鞘に納めながら、土方が言う
「、今の全部伝達しろ」
「は〜い」
そう言われると、はポケットから携帯を取り出した
「・・・こちら。大使館周辺の張り込み、並びに見回り中の各隊に伝達。メンドくせーから一回だけなァ」
正確に伝達しなければならないのに、ここもある程度は適当である
「一連のテロは桂一派の犯行と判明。潜伏場所はホテル池田屋。今やってる仕事全部そのままでいいから急行せよ」
『そのままってどういうことですか!!』
『今取調べ中ですよ!!』
『ここから池田屋までどんだけあると思ってんですか!!』
一通りが言い終わった所で、今度は電話口から隊士たちの不満の声が大音量で聞こえてくる
あまりにもうるさいのでが携帯から耳を話すと、今度は土方が携帯に向かって
「俺たちより遅かった隊は、全員切腹だ。わかったならさっさとしろ」
そう付け足す
「・・・・・・だそうです。伝達以上」
そうが言った途端、全隊の通信が一気に途絶えた
どうやら、土方の一言が効いたようだ
「さて、俺たちも行くぞ。ぐずぐずしてたら逃げられちまうからな」
そういって扉に向かって歩き始めた土方の後を、と今まで座ったままだった沖田、それに山崎が付いていく
今までの言動が嘘だったかのように、その時は全員が無言だった
―――ホテル池田屋―――
土方・沖田・山崎・そしての4人が付いた時、既に真選組は全隊が集合していた
全員刀の柄に手をかけ、突入する気は満々
あとは、土方の“突入”の指示を待つばかりだった
「よーし、そろってるな」
そろうようにしたのは土方なのだが・・・・・・それは誰も言わなかった
「山崎。桂がいるのは何階だ?」
「15階です。後を着けてた時にフロントで確認したんで、間違いないかと」
それを聞くと、土方は「15階か・・・・・・」と呟いて
「しょうがない、全員で突入すっぞ。・・・各隊突入準備。は先に、誰でもいいから一言いってこい」
と、指示を出した
まずが行動を起こし、ホテル内へ走っていった
他の隊士たちは肩にバズーカを担ぎ、土方と沖田を先頭にホテルの入り口まで足を進める
そこから1分もたたないうちに、が戻ってきた
「土方さん、こっちオッケーです」
「そうか。・・・・・・全員突入ッ!!!」
「おお!!!」
土方の指示で、一斉に真選組は突入していった
―――ホテル池田屋15階―――
階段を駆け上がり、ようやく15階へ到着した
あまりにも静かだったので、付いた途端、全員が息を潜める
部屋へ続くふすまは全て閉じられ、中が確認できないようになっていた
土方は隣にいるに合図を送る
それに従い、はふすまの前に立つと・・・・・・
「いっきまーす!・・・・・・おりゃあッ!!」
そういって、ためらいもなくふすまを蹴破った
バンと音を立ててふすまは外れ、今まで見えなかった向こう側の部屋が見えるようになる
そこには、先ほど確認された攘夷志士桂と、がすれ違った3人組がいた
そして、その部屋になだれ込むように、一気に真選組が突入する
「御用改めである!!神妙にしろ、テロリストども!!!」
いつの間にか刀を抜いていた土方が叫ぶ
「しっ・・・真選組だァっ」
「イカン、逃げろォ!!」
桂と一人の攘夷志士が叫んだが、そんな事はお構いなしに
「一人残らず討ち取れェェ!!」
土方は全員に指示を出す
もちろん、真選組はそのために来てるわけであって、指示が出る前に既に突入を始めていた
攘夷志士も攘夷志士で、捕まってたまるかとばかりに逃げ出す
「なななな、なんなんですか、あの人ら!?」
攘夷志士に混じって、のすれ違った三人・・・・・・坂田銀時・志村新八・神楽は逃げていた
ちなみに、今のコメントは新八である
「武装警察“真選組”。反乱分子を即時処分する対テロ用特殊部隊だ」
さすが攘夷派集団の首領だけあって、完璧な回答である
「厄介なのにつかまったな。どうしますボス?」
「だーれがボスだ!!お前が一番厄介なんだよ!!」
と、自分がボスなのに銀時へそれをなすりつけようとする桂
銀時はかなり迷惑そうだ
「ヅラ。ボスなら私に任せるヨロシ。善行でも悪行でもやるからには大将やるのが私のモットーよ」
「オメーは黙ってろ!!何その戦国大名みたいなモットー!」
完璧この状況分かってねーだろとツッコミたくなるぐらい、神楽の悪乗りも銀時のツッコミも最高潮
だが、こんな状況下でずっとボケやらツッコミやらが続けられるわけもない
「何だ、あんたら。ホントに攘夷志士か?」
少なくとも、攘夷志士ではないと分かる声に4人が振り向く
そこには刀を抜き、今にも斬りかかりそうながいた
「え?ちょっ・・・・・・マジで?」
予想以上に早く追いつかれたので、かなり驚いている銀時
「マジで」
はニターっと笑うと、容赦なく刀を振り下ろした
床の板が砕け散り、同時に埃などで煙が立ち込める
「あ、アブねーだろうがアアァァ!!」
その煙の中から飛び出す形で、四人は転がり出てきた
幸い、誰もの攻撃をくらった者はいないらしい
が、そんな四人にまたも新たな刺客が襲い掛かる
「オイ」
に比べて、かなり声の低い人物
今度は、何の前置きも無しに銀時向かって刃が飛んできた
「ぬを!!」
先程襲われたばかりだからかは分からないが、銀時は間一髪その攻撃を避ける
標的を失った刃先は、丁度銀時の頭上の壁に刺さった
攻撃の主は・・・・・・土方である
「逃げるこたァねーだろ。せっかくの喧嘩だ。楽しもうや」
銀時を見下ろす形で、土方が行った
「オイオイ、おめーホントに役人か。よく面接通ったな。瞳孔が開いてんぞ」
そんな土方に負けず劣らず、銀時はわざわざこういう返事を返す
「人の事言えた義理かてめー!死んだ魚のよーな瞳ェしやがって!!」
「いいんだよ。いざという時はキラめくから」
ここまでくると、子供の口喧嘩レベルだ
だがそこへ、またまた新たな刺客が現れる
「土方さん、危ないですぜ」
声の主は・・・・・・沖田
廊下の先に立った沖田は、肩にバズーカを担いでいる
そして、土方が避難する余裕も与えず、沖田はバズーカの引き金を引いた
「うおわァァァ!!」
突然の出来事に、驚きの声をあげながらも土方は間一髪、それを避ける
煙が立ち上り、パラパラと壁の破片が飛び散った
「生きてやすか、土方さん」
その中をゆっくり沖田が土方の元に歩み寄ってくる
やったこととは裏腹に、沖田の声は軽い
「バカヤロー!おっ死ぬところだったぜ!!」
「チッ、しくじったか」
「しくじったって何だ!!オイッ!こっち見ろ、オイッ!!」
どうやら、狙っていたらしい
「覚悟ッ!!」
と、今度はが廊下に充満していた煙の中から出てくる
そして、まだ銀時達がいなくなったことを知らなかったらしく、そこにいた土方に刀を振り下ろした
「なーにやってんだてめえはアアァァァ!!」
とっさに刀を抜き、の一撃を受け止めながら土方が叫んだ
「あらら、土方さんだった」
「あららじゃねえッ!!」
刀を鞘に納めながら、先ほどと似たような会話が続いた
「・・・・・・で、あいつらはどこ行ったんスか?」
そういえば、と思いついたようにが言った
その言葉で、皆本来の目的を思い出す
「そういやそうだったな・・・・・・」
「すっかり忘れてたぜィ。どうしてくれんだ土方さん」
「また俺か!!」
「そうですよ。土方さんがしとめてりゃ、こんなに長引かなかったんスから」
「テメーらも逃がしただろうがッ!!」
もはや攘夷志士のことなど忘れ、大騒ぎの三人
「副長!」
それを止めるかのように、一人の隊士が走ってきた
「攘夷志士の残党が一室に立てこもっています!!」
真選組から何とか逃れた攘夷志士たちが、どうやら最後の抵抗をしているようだ
「そうか。・・・・・・総悟、。俺らも行くぞ」
案内をする隊士の後に、土方が続く
それを追うかのように、二人が歩き出す
「副長。ここです」
片方のふすまが外れかかっている押入れのような部屋の前に、三人は案内された
最後の抵抗がこんな崩れかかった砦とは・・・・・・攘夷志士たちもかなりの所まで追いつめられたようだ
「立てこもりたァ、まためんどくさい事してくれたな・・・・・・」
ふすまの前に立ち、やる気なさそうに土方が言った
「オイッ、出てきやがれ!無駄な抵抗は止めな!ここは十五階だ、逃げ場なんてどこにもないんだよ!!」
中に呼びかけるが・・・・・・返事は無い
どうやら、まだ諦めていないようだ
「・・・・・・しゃーねぇな。砲撃隊、構え」
土方の指示で、数名の隊士が肩にバズーカを構えた
これ以上時間がかかるようならば、武力行使でいくらしい
「オーイ、出てこーい。マジで撃っちゃうぞ〜」
その状態で更に呼びかけるが、やはり反応はなかった
既にかなりの時間が経過しており、そろそろ我慢の限界がきている
「土方さん。夕方のドラマの再放送、始まっちゃいますぜ」
ここにきて、また関係のない話を沖田が持ち出す
「やべェ、ビデオ録画すんの忘れてた。、やってあるか?」
「あ、忘れてました」
「ならさっさと済まそう。発射用意!!」
ドラマ一つで心変わりした土方が、発射の指示を出そうとした時だった
突然ふすまが蹴破られ、中から人が出てきた
あまりに突然の出来事だったので、隊士の誰もが呆然としている
そのため、誰も取り押さえるどころか、道を開けてしまっており、そこを飛び出してきた人たちが走っていく
飛び出してきたのは・・・・・・銀時・新八・神楽の三人
「なっ・・・何やってんだ、止めろォォ!!」
土方は指示を出すが、隊士たちが反応するよりも先に銀時が
「止めるならこの爆弾止めてくれェ!!爆弾処理班とかさ・・・なんか、いるだろオイ!!」
と叫んだ
その手には、球状の時限爆弾が握られていた
秒数は、残り30秒になっている
「おわァァァ!!爆弾もってんぞコイツ!!」
それを見た途端、その場にいた隊士の大半が逃げ出した
「ちょっ、待て、オイぃぃぃ!!」
叫びもむなしく、呼びかけた相手は全て逃げていってしまう
「・・・・・・。お前爆弾処理できたよな?」
隊士とは一緒に逃げず、未だふすまの前に土方・沖田・は立っている
話の流れを一通り見て、土方が突然に言った
「簡単なものなら」
「じゃあいって来い。このままだと、たぶんこのホテル吹っ飛ぶぞ」
土方に言われ、何の返事もせずには、爆弾を持ったまま慌てふためいてる銀時たちのところへ行った
「なんだよ!いねーじゃん!!爆弾処理班いねーじゃん!!」
銀時にいたっては、まだ騒いでいる
そこへ、が到着した
「は〜い、爆弾処理班!」
「マジで!?爆弾処理班!?はやく分解して!!」
銀時はすぐさまに爆弾を手渡し、一歩後ずさった
「じゃ、ドライバー貸して」
は、爆弾を持っていないほうの手を銀時に差し出す
「へ?ドライバー?」
「そう、ドライバー。貸して」
「・・・・・・いや・・・普通持ってるでしょ?爆弾処理班なんだから」
「持ってないよ。処理できるだけだから。はやく貸してよ」
「いや、普通のごく一般人はドライバーなんか持ち歩かないから」
「「・・・・・・・・・・・・」」
少しだけ、嫌な空気が流れる
「ダメだ、ドラーバー無いや。返す」
そう言って、銀時の手に爆弾を返した
再び手元に帰ってきた爆弾を見つめ、銀時はしばらく黙る
秒数は・・・・・・残り6秒
「げっ!!あと6秒しかねェ!!」
ようやく我にかえって、残りの秒数を知った
「銀さん、窓、窓!!」
もう解体する時間も安全な所へ持っていく時間もない
窓から捨て、空中で爆発させるしか方法は残っていないのだ
「無理!!もう死ぬ!!」
しかし、6秒では窓まで行けたとしても投げる時間は残されていない
「銀ちゃん、歯ァくいしばるネ」
そこに、何を思いついたのか、神楽が傘を構えて銀時の後ろへ立った
「ほあちゃアアアアア!!」
そのまま、思い切りフルスイング
傘は銀時を打ち、そのまま窓の方へ吹っ飛ばした
「ぬわアアアアア!!」
銀時が叫んだのと同時に、窓を割り、外へと突き抜ける
残り・・・・・・3秒
「ふんぐっ!!」
空中へほうりだされた銀時は、無理やり態勢を立てる
残り・・・・・・1秒
爆弾を握り締め、思い切り振りかぶると、上空に向かって爆弾を投げた
爆弾が宙に浮いた・・・・・・そのとき
ドガァン!!
凄まじい音を立てて、爆弾は爆発した
「ぎっ・・・銀さーん!!」
「銀ちゃん、さよ〜なら〜!!」
神楽と新八は、割れた窓の所で銀時を探す
爆発音を聞きつけ、真選組の面々は窓ガラスの近くに集まっていた
皆一様に空を見上げ、薄れていく爆発の煙を眺めている
「・・・・・・終わりましたね、一応」
危うく室内で爆発する原因を作ったは、何事もなかったかのように言った
まあ、全部が全部彼女の所為ではないが
「一応じゃねえよ。こっちは危うく死ぬとこだ」
「ドライバー持ってないとは、爆弾処理班失格だぜィ?」
「俺爆弾処理班じゃねえから。秘書だから」
相変わらず、三人は言い合いを続けている
「大体、あいつ等が爆弾なんて取り出したからこうなったんだよ。元はといえばあいつ等の所為」
「まァ、そういうことにしとくかィ。・・・にしても・・・・・・」
「にしても・・・・・・なんだ?」
突然話すのをやめた沖田に、土方が問う
「何者ですかね。あんな危険なことしてまで爆弾処理しようなんざ、普通の奴にはできませんぜ」
そう言って下を見下ろした沖田の目には、隣のデパートの幕にぶら下がっている一人の銀髪の人物が映っている
先ほどの行動とは打って変わって、今はビクつきながら下を見ている
「俺らの攻撃全部かわせた奴、今までにいましたかィ?」
「いねえ・・・・・・な」
「確かに」
そう言った後で、しばらく誰も話さなくなる
その沈黙を破ったのは、土方の一言だった
「・・・・・・帰るぞ。桂も逃げちまったしな」
土方はそれだけ言うと、上がってきた階段の方へ向かって歩き出した
と沖田はあわててその後を追う
「いいんですか?あの三人を放っておいて」
小走りで駆け寄ったが、土方に聞く
それに対し土方は
「どうせあいつらからはなにも出てきやしねーよ。時間の無駄だ、帰る」
適当な返事ですませた
それを聞くと、はその場に止まった
そして、窓の方に目をやり、数名の真選組隊士に救助されている銀時を見た
・・・・・・あんな無茶やる奴、見たことねェ。しかも元侍ときた
「何やってんでィ、」
着いて来なくなったに気付き、沖田が止まった
「あ、悪ィ」
はっとして、は沖田の横へ走っていく
その途中でも、はまだ、銀時のことが頭から離れなかった
この分だと、また会う事になりそうだな・・・・・・
あとがき
やっちゃいました。銀魂
いやね、そりゃ受験シーズン近いしBLEACHもやってるからやめようとは思いましたよ?
・・・・・・結局欲に負けましたけど
つーわけで、へぼいですが銀魂の原作沿いを始めます
かなり難しいんです、ボケやらツッコミやらが多くて
へたっぴですが、見てくださるとうれしいです!!
では、ここまで読んでくださってありがとうございました!
2007.3.9 煉城瞳
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