〜BLEACH!!〜
第三十四話
「よお」
「おっす」
刀を通して、矛の勢いを止めた衝撃が伝わってくる
斬魄刀百万本分に値する攻撃力に対して、普通の刀より強度が強いとはいえ、斬魄刀二本ではさすがにきつい
でも、俺達の後ろにはルキアがいる
こうして矛も止めた
俺達は、処刑を止めたんだ
「―――あ・・・」
俺たちを見たルキアは、何か言おうと口を開いたが、すぐに思い直したかのように唇をかんだ
そして、再び口を開くと
「馬鹿者!!何故また来たのだ!!!」
・・・・・・怒鳴られた
「あ・・・あァ!?」
怒られるなんて思わなかったから、一護は驚嘆の声をあげる
「貴様等ももう解っているだろう!貴様等では兄様には勝てぬ!!今度こそ殺されるぞ!!」
助けに来たのに怒られた
でも、ルキアはいたって真面目な顔をしている
「私はもう覚悟を決めたのだ!!助けなど要らぬ!!帰れ!!!」
挙句の果てに、帰れとまで怒鳴られた
オイオイ。こりゃァ、いくらなんでもひどい言われようだな・・・・・・
その頃地上では、突如現れた二人組の死神に視線が釘付けだった
現れたのが旅禍だからというのもあるが、たった2本の斬魄刀で矛を止めたことの方が衝撃的だったようだ
皆呆然とし、遥か上空を見上げている
「・・・ば・・・莫迦な・・・!!」
そのうちの一人・・・・・・二番隊隊長、砕蜂が口を開いた
「止めたというのか・・・!斬魄刀百万本に値する破壊能力・・・その双極の矛を斬魄刀二本で・・・!」
そう言っているうち、不意に砕蜂が目を見開く
その視線は、一護でもルキアでもなく・・・・・・に向けられていた
「・・・・・・何故・・・あそこに奴がいる・・・・・・!!何故、あんな所に立っている!!」
今までの死神たちと同じような反応
だがその目には、異常なまでの殺気が込められていた
その殺気を、直にに向けている
「それに・・・・・・隣の奴は・・・奴は何者だ!!!」
砕蜂の言葉が、双極の丘にいる全ての者へ響いた
再び上空
砕蜂の声が、ここまで響いてきた
といっても、一護には聞こえてないんだろうけど
「一護、そろそろまずいぞ」
柄を握る手に、再び力を込める
押される力は増すばかり。何か行動を起こさないと、あと何分もつかわからない
「そうだな・・・・・・とりあえず、押し返してりゃ何とかなる・・・・・・」
キアアアアアアアアアアアア!!!
突然、双極の矛・・・・・・だった鳥みたいなのが鳴き、一護の声がかき消された
「うおっ!?」
さらに突然後退し、俺たちとの間合いを取った
そのため、今まさに押し返そうと力を込めた一護は、そのまま後ろによろけた
「一護!!」
それを見たルキアは、一護に向かって叫んだ
「第二撃の為に距離をとったのか・・・・・・いいぜ、来いよ」
ルキアの心配をよそに、一護は矛の真正面に立ち、斬魄刀を構える
する必要もないのに、挑発までして
「・・・・・・目立ちすぎだなこりゃ。一発で終わらして、さっさと逃げるぞ」
その横に、俺は立つ
一護と同じように、刀を矛に向けて構えた
だが、それを見たとたんルキアは血相を変えた
「よ・・・よせ一護!!もうやめろ!!二度も双極を止めることなどできぬ!!」
必死に叫び、俺たちを止めようとするルキア
だが、矛はそんなことには構わず、俺ら諸共ルキアを消そうと突っ込んでくる
「次は貴様等まで粉々になってしまう!!」
粉々にならないように・・・・・・宙を蹴り、矛に向かって突き進む
どの道、こいつを止めなきゃ俺たちはお終いだ
逃げる時間はない。仮に逃げられたとしても、ルキアを助けられなかったのなら死んだも同然だ
だったら・・・・・・斬るしかない
ルキアには、後で無理にでも納得してもらおう
目の前に矛が迫る
あと数秒もしないうちに、衝突するだろう
生きるか・・・・・・死ぬか。一瞬で決まる
柄をもう一度、更に強く握り締める
覚悟は固まった。あとは・・・・・・相手を斬り伏せるのみ
距離は何メートルもない
一護と同時に、刀を振ろうとした・・・・・・そのときだった
突然目の前を紐のような物が通り過ぎ、俺たちは動きを止めた
それが何なのかを確認する暇もなく、その紐は矛の首を二周ほど巻き、地上へ落ちていく
紐の先には棒のような物がついていたらしく、地上へ到達したそれは、地面に突き刺さった
紐の反対側・・・・・・これの発射元をたどる
そこには、ある人物がいた
「あれは・・・・・・」
「う・・・浮竹隊長!?清音も・・・!」
突然の妨害。その元は、ルキア直属の上司である浮竹からだった
左手に白い盾のような物を持ち、後ろに二人の席官が付き添う形で双極に向かって走っている
そして、それとほぼ同時に、呆然と立ち尽くす死神たちの中から飛び出す二つの影があった
浮竹たちに並走するかたちで、二人は地に落ちてきた棒の元へ駆け寄る
更に、片方の人物は棒が抜けないように上から手で押さえ、頭にかぶっている笠を軽く持ち上げた
「よう、この色男。随分待たせてくれるじゃないの」
「京楽隊長!!!」
八番隊隊長、京楽春水。隣には副隊長の伊勢七緒もいる
「すまん。解放に手間取った」
まわりのことなど気にも留めず、浮竹は平然と京楽に言葉を返す
さらに、手に持った白い盾のような物を地面に力強くつきつけ
「だが・・・これでいける!!」
そう叫んだ
浮竹の持つ道具には、よく見るとある家紋がついていた
普通の貴族の家紋ならば、大した意味を持たない。それを見たところで、反応を起こす者などいるわけない
だが・・・・・・その家紋は違った
「止めろ!!」
今まで何も言わなかった砕蜂が、その家紋を見たとたん声をあげた
「う・・・ええ!?俺がスか!?」
命令を受けた副隊長は、何故命令が降りたのかもわかっていない
隊長達が慌て出した理由すら、分からないからだ
理由はただ一つ
その家紋が、四大貴族のうちの一つ『四楓院家』のものだったから
「奴等・・・双極を破壊する気だ!!」
止めようと必死に命ずる砕蜂
それに構わず浮竹と京楽は刀を抜き、つき立てた道具に盾についている切れ込みへ、一気に振り下ろす
その途端、矛を取り巻く紐が、まるで導火線の様に下から上へ変化していく
そして、その変化が矛の元までたどり着いたとき・・・・・・
バアァァン!!!
「ぅあッ!?」
大きな爆発音と、それと同様の強い爆風
空にもう、矛の鳥は飛んでいない。本体ごと・・・消滅した
「一護、やるなら今だ」
「・・・・・・だな」
そう俺とやりとりをしたあと、一護はひらりと磔架の上に飛び移る
俺も、その後を追って場所を変える
「な・・・何をする気だ一護!?」
巻き布を持ち、刀を振り回し始めた一護に向かってルキアが叫ぶ
「お前なァ・・・・・・ここまできたら、決まってんだろ?」
ルキアの質問に勝手に答えて、一護の方を見る
「なっ?」と話をふると、一護は視線を戻して俺の言葉に続いて
「壊すんだよ。この・・・処刑台を!」
こう答えた
「な・・・」
一護の回答に、ルキアは一瞬言葉を失う
だがすぐに・・・・・・
「よ・・・止せ!!それは無茶だ!!」
またもルキアは一護を制止しようとする
だが、一護も一護で刀を振り回すのをやめる気配はない
俺も、その様子を横で黙って見るのみ
一護を止めることはできないと知ってる筈なのに、それでもルキアは一護に説得を続ける
「いいか!聞くのだ一護!!この双極の磔架は・・・」
「いいから」
そんなルキアの言葉を、一護は、静かだが強い声でさえぎった
そして、ようやく振り回していた刀の柄を握ると
「黙って見てろ」
ゆっくりと上へ振りかぶる
「・・・・・・一・・・・・・・・・護・・・」
ルキアが呟いたのとほぼ同時に、一護は垂直に刀を振り下ろした
ドンッ!!
一護の斬撃が処刑台から天へ、そして地面をつきぬける
磔架の中央部は斬撃で崩れ、磔架全体を囲むように、大きな砂煙が舞う
やがて徐々にその砂煙も晴れ、中心部分をなくした磔架があらわになる
残っているのは、縦にそびえる柱に接するごく僅かな部分のみ
そこに、俺と一護は立っていた
一護に抱えられた、ルキアと共に
「・・・助けるなとか、帰れとか・・・ゴチャゴチャうるせーんだよ、テメーは」
そう、一護が静かに話し出す
同じ静かな話し方でも、今の話し方はさっきほど強い言い方じゃなかった
「言ったろ。テメーの意見は全部却下だってよ」
それは、現世で俺達と・・・・・・ルキアと話す時と同じ口調だった
「二度目だな。・・・今度こそだ」
天踏絢を風になびかせながら、一護は一番言いたかった言葉をルキアに告げる
「助けに来たぜ。ルキア」
それを聞いた途端、ルキアの目に、涙が浮かぶ
「・・・礼など・・・言わぬぞ・・・・・・莫迦者・・・」
軽くかすれた声で、ルキアはそれだけ言った
「・・・ああ」
それを宥めるかのように、一護も短い返事で答えた
「そ・・・双極の磔架を・・・」
「ブッ壊しやがった・・・!!」
「・・・な・・・・・・何なんだあいつは!?」
下では、次々と驚きの声が上がっていた
死神の力を持っているとはいえ、元は人間の旅禍
それが、斬魄刀百万本の防御力に値する磔架をたった一回の斬撃で破壊した
ありえないことなのだ。普通では
で、そのありえないことをした張本人は、何もなかった様な顔をして目線を下に向けていた
もちろん、その相手は朽木隊長
下で他の連中が何か騒いでいても、二人ともまぶた一つ動かさなかった
「い・・・一護・・・。・・・・・・」
ようやく視線を動かしたのは、ルキアが一護に話しかけてからだった
「訊くが・・・これからどうする気だ・・・?これ程の目の前で上手く姿を晦ませる方法など・・・」
「「逃げる」」
こればかりは、俺も一緒にキッパリと言った
「む・・・無理だ!相手は隊長だぞ!!逃げ切れる訳が・・・」
「じゃあ全員倒して逃げるさ」
ルキアの言葉をさえぎり、全く動じないキッパリとした口調で一護が言う
「お前だけじゃねえよ。井上も石田も、チャドだって来てるんだ」
みんな、ルキアを助けるために一緒にここへ来た
結局ここまで来れたのは俺と一護だけになっちまったが、みんなあっちこっちで頑張ってくれていた
始めに思った。みんなで帰るって
「岩鷲も、花太郎も、手伝ってくれた連中はみんな、助け出して連れて行く」
どんなに無理でも、俺らはみんなを助けなきゃいけない
そのために、今まで修行してたんだ
「・・・・・・・心配ばっかするなっての。こいつの言うこと、少しは信じてやれよ」
ルキアは何も言ってこなかったけど、代わりに少し笑顔が浮かんだ
もう大丈夫だ。そう思った
あとがき
祝、ルキア救出!!!(お前じゃねえだろ)
と言うわけで、ついにルキア救出までかけました!!今まで長かったです・・・・・・。
今回は場面がころころ変わるんで、ヒロイン視線と入れ替えたりとかいろいろ大変でした。
しかも、ヒロインの言葉を入れる機会がなかったもんで、たぶんほとんど喋ってないんじゃないかと・・・・・・
とりあえず、次あたりはもっと喋ってもらいたいです。
では、ここまで読んでくださりありがとうございました!!
2007.4.8 煉城瞳
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