〜BLEACH!!〜
第三十ニ話
隣では一護が、修行を続けている
その少し奥では、恋次が修行している
その様子を、俺は出入り口に近い岩山のところで眺めていた
一足先に習得を終えた俺は、こうして夜一様の横で待機しているのだった
・・・・・・とても暇だ
そう感じたが、口に出して言うわけにもいかず、更に暇と感じさせられた
もう我慢が効かない・・・・・・そう思ったその時、恋次が静かに、刀を鞘に納めた
そして、修行で緩んだ髪紐をしっかりと結び直し
「じゃあ、俺は行くぜ」
それだけ一護に告げた
「・・・ああ」
一護も大して気にとめていないのか、それ以上は何の返事もしなかった
無愛想な返事を聞いた恋次は、ゆっくりと出入り口へ向かって歩き出す
やがて、夜一様と俺の横を通り過ぎる所まで来たとき
「夜一さんよォ」
と、声をかけてきた
「あいつは・・・本当に大丈夫なのか?」
「・・・案ずるな」
恋次の質問に夜一様は、俺と話したときのように、恋次と向き合わないまま返事をした
「・・・誰も案じちゃいねーよ。勘違いすんなよ。死なねえかどうかを訊いてんじゃねえぞ」
じゃあ何を訊いてんだ
「修行もあそこまで進みはしたが、本当に卍解まで辿り着けんのかって訊いてんだよ!」
一護の修行は、一対一だったのだが、つい先ほど斬月が分身し、十数人を相手に戦っている
進歩はしている。わずかな望みに賭けている奴がいるのに、それ以外の奴が疑うことは許されない
だから、習得すんのなんかあたりまえ・・・・・・
「・・・さあ・・・」
「うおーい」
「よ、夜一様・・・・・・」
すかさずつっこむ
「・・・恋次、」
つっこまれたことは気にも留めず、話を進める
「おぬしら・・・自分が初めて立って歩いた時のことを憶えておるか?」
「あ?憶えてるワケねーだろそんなもん!」
「そうですよ!いつの間にか立ってたからそんなこと・・・・・・」
「憶えておらぬということは、意識しておらぬということじゃ。ならば、なぜ立ち上がった?」
急に話が難しく・・・・・・
「人は皆、生まれながらに立ち上がることを知っておる。鳥は皆、飛ぶことを知っておる。魚は皆、泳ぐことを知っておる。それは、本能というやつじゃ」
本能・・・・・・
「本能で知っておるからこそ、皆、迷いなくその力を手にしようとする」
もし、一護に卍解に辿りつく本能があるとしたら・・・・・・
「奴の、一護の迷いの無さは、その本能を思わせるのじゃ」
今までの全ての一護の行動が、そこへ行き着くためだけの物だとしたら・・・・・・
「奴は恐らく、本能的に判っておるのじゃろう・・・、自分がその力を持っておることを・・・」
あいつは・・・・・・
「じゃから儂は信じる・・・奴が・・・・・・“卍解に至る者”じゃということを」
あいつは、必ずそこへ辿りつく
辿りついて、必ずルキアを助け出してくれる
それだけの力を、あいつは持っている
「そうか・・・・・・。それなら、そういうことにしておくぜ・・・・・・じゃあな」
そういうと、再び歩き出す
もう出口に差し掛かる・・・・・・そこまで行ったところで、恋次は急に歩くのをやめた
「あんたは、行かねえのか?」
俺の方を向いて言ってるから・・・・・・俺に言ってるんだよな?
「・・・・・・行かないよ。まだ一護が残ってる」
「何でだ?あんたもルキアの事助けたいんだろ?修行も終わったってのに、何ですぐにいかねえんだ?」
行きたいさ。今すぐ行って、ルキアを助けたい
でも、俺がそれ以上にやりたいのは・・・・・・
「俺には俺のやり方がある。お前らとは、やりたいことも、それを実行するタイミングも違う」
俺は、一護が動くまで行動はしない
一護の力でルキアが助かれば、それが俺の本望。だから、こうして一護を待っている
「・・・・・・あんたは、何でルキアを助けたいんだ?」
俺がルキアを助ける理由・・・・・・
そう考えたとたん、脳裏に、朽木隊長について歩くルキアの姿が浮かんだ
ルキアと俺は似ている
流魂街の出身でありながら四大貴族に拾われ、護廷十三隊へ入隊した
貴族に入ったばかりの頃は、周りから冷たい目で見られ、仲間の一人さえも・・・できはしなかった
自分とは違う人しかいなかった
ただの学生・ただの新入隊員なのに、貴族として扱われる
貴族に生まれた者にはわからない。これが、どれだけ辛いことかを
その辛さを、俺とルキアは知っている。だから、俺たち二人は似ている
一つ違うのは、自分のことを見てくれる人が俺にはいたこと
朽木隊長は、ルキアを見てはいなかった
自分のことを、対等な見方をしてくれる人が、ルキアにはいなかったんだ
支えてくれる人が、いなかったんだ
だから、初めてルキアを見た日、ルキアは悲しい目をしていた
現世に駐在していたルキアからは考えられないような、悲しい目
だから、このまま死なせたくない
ルキアに、こんな形のまま死んで欲しくない
頑張っていれば朽木隊長だって、ルキアを見てくれるようになる筈だ
俺の事を、夜一様が見てくれたのと同じように
だから、ルキアにはもっと長く生きてて欲しい
それが・・・・・・俺の理由だ
「お前には、一生わからねえよ・・・・・・一生な」
答えになってないけど、こういうしか恋次に伝える方法は無かった
貴族に入って感じた辛さは、伝えることすらできないのだ
「一生か・・・・・・。それじゃあな」
そういうと、恋次は外へ飛び出していった
それを見届けると、今度は一護の方に目をやる
次は、お前の番だ・・・・・・一護
とっとと習得して、ルキアを助けるんだ
必ず習得するって信じてるから。お前が終わるまで、待つから
一緒に行こうぜ・・・・・・ルキアの所へ。みんなの所へ
あとがき
散々間開けといて断章です・・・・・・(泣
何かと忙しくて更新遅れてます。あ〜・・・どんどん間が離れていく・・・・・・
さて、とりあえずそろそろクライマックスに入ります!!(前にも言ったような・・・・・)
戦闘が多くなるんで、表現が・・・・・・
ってかどういう構成にしようかも考えてないんですけどね・・・・・・
とりあえず!!ここまで読んでくださってありがとうございました!!
2006.12.14 煉城瞳
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