〜BLEACH!!〜
第三十話

改竄された手紙・・・厄介なことになったな
しかし・・・藍染隊長を殺したのが日番谷隊長でないとすれば、一体誰がこんなことを・・・?

藍染隊長は、犯人の目的を阻めようとして殺された。今わかっているのはそれだけ。犯人につながることは何一つわからない
まず、情報が少なすぎる
この事態だって今知ったんだ。事前に軽く調べてるならともかく、何もしてないんだから分かるかっつーの

よくよく考えりゃ、手紙が改竄されているのだって一つの可能性にすぎない
だから、日番谷隊長は犯人じゃないなんてこと自体、確信できる物じゃないんだ

根拠もないのに決め付けるのは推理じゃない。ただの推測
勝手に推測して、もしそれが仮にも合っていても、それは真実とはいえない
今は、ここで見守ってるしか・・・

「・・・そうか・・・これもか・・・」
空中に上がった日番谷隊長が呟く
いつの間にか、桃の方ではなく、ギンの方をむいていた

「これも全部てめえの仕業か!!!市丸!!!」
血相を変えて怒鳴り散らし、後ろに背負った刀の柄に手をかけ向かっていく
・・・・・・これも?これもって・・・まさか・・・

そう思った途端、下降する日番谷隊長の前に、桃が刀を構えて飛び出してきた
しまった!!いくら隊長でも空中じゃ・・・相手の剣はかわせない
「・・・雛森・・・ッ!」

きっと隊長もわかったんだ。桃の言ってる藍染隊長の手紙は、改竄されていた事を
そして・・・思い当たる節が、ギンにあったんだ。だからギンを倒そうとした
でも、今の混乱している桃には、そんなことが分かるはずない。手紙に書いてあった通りに隊長を討とうとしている

戦わせちゃいけない。ギンがもし犯人なら、こうなることを望んでいる
イヅルも当てにならない。ややこしいことになるとか・・・・・・考えてる場合じゃない!!


構えながら想像する
桃の剣速よりも、隊長の行動よりも早く・・・・・・一筋の黒い閃光のように走る、自分の姿を
疾風のごとく夜空を駆ける、自分の姿を

その途端、意識していないのに体が動き出す
屋根を蹴り風のように飛び出す
一瞬のうちに二人の間に入り込んだ

「・・・・・・お前は・・・・・・!」
後ろから日番谷隊長の声がする
「あ・・・・・・さん・・・?」

戦いの最中だというのに、突然の俺の乱入で、かなり驚いているようだ
今なら・・・二人を止められるかもしれない
「ダメだよ桃、剣を引け」

片手で刀を押さえながら、静かに言う
「こんな戦い、あっていいはずがない。わかるだろ?」

だがそのとたん、桃の表情が変わった
「何で・・・・・・あっていいはずないの・・・?」
・・・逆効果?

「日番谷君は藍染隊長の仇なの!!隊長に倒してって頼まれたんだもん!!!やらなきゃいけないんだもん!!!」
そうか・・・・・・
「藍染隊長が嘘なんか言うはずない!!藍染隊長は日番谷君に殺されたの!!だから・・・そこをどいて!!!」
いくら言っても・・・無駄なのか・・・

「・・・藍染隊長が、本当にそう言うか・・・・・・よく考えろ」
刀をおさえていた手を離し、一瞬で桃の後ろにまわる
「お前がそんなことをすることを・・・俺は、藍染隊長が望むとは思わないな」

右手に霊力を集中させ、桃の背中に押し付ける
軽い爆発音と共に、桃が下に落下を始める

急いでその下にまわり、桃をうけとめ、地面におろした
「雛森!!」
隊長の声がしたかと思うと、俺のすぐ横に降り立っていた

「大丈夫です、気絶させただけですから」
余程安心したのか、一瞬だけ、表情がゆるんだ

だがそれもつかの間、すぐにまた、険しい表情へと戻った
「どうかしたんですか?」
桃の方へ目をやる

床に倒れている桃の姿を見て、俺は愕然とした

「・・・あらら。酷いなァちゃん」
あんな場面を見たって言うのに、何もなかったような顔でギンが話しかけてきた
「何がだ?」
「傷ついて我を忘れた女の子に、あない思い切り技しかけんでもええのに」

ギン・・・・・・お前、どうかしちまったのか?
二人が潰しあうのも黙ってみてるし、さっきだって・・・その光景見て、笑ってたじゃねえか

「・・・市丸・・・」
先に日番谷隊長が口を開いた
「・・・てめえの目的はなんだ」

自分が仕組んだことだから、止めなかった・・・
それが・・・真実なんだな・・・ギン
「藍染だけじゃ足りねえか・・・。雛森まで・・・こんな目に遭わせやがって・・・」

藍染隊長を殺し、手紙を改竄し、桃を利用した・・・
「はて、何のことやら」
相変わらず、ギンの表情は変わらない

まるで、自分は何も悪いことはしていない・・・とでも、言いたそうな・・・冷たい表情
「何のことやらじゃねえ!!お前!いつからそういう奴になったんだよ!!いつから!人の感情を利用するような奴になったんだよ!!」
桃の、藍染隊長へ対する尊敬・信頼・憧れを・・・こいつは利用しやがったんだ!!!

「なんや、ちゃんまでそないなこというん?」
そして、あたかも自分が正しいような顔して・・・ここに立っている
「言うさ!お前が間違ってるから!!自分が間違ってないって言うのなら、何で桃を止めな・・・・・・」

「・・・下がれ、
俺の言葉を、静かに日番谷隊長が遮る
一見冷静のようだが、今の一言は、隊長の高ぶる怒りを感じさせた

「・・・言ったはずだぜ市丸」
前に出ながら、柄に手をかける
「雛森に血ィ流させたら、てめえを殺す!!!」

凄まじい霊圧が、俺の体に伝わってくる
鞘が塵のように消滅し、月光で鈍く光る刃が姿を現す

俺は日番谷隊長の事を、名前・所属以外、ほとんど知らない
親しくもなかったし、何より俺の直属の上司でもなかったから、任務も一緒にした事はない

だが・・・・・・これだけはわかる


日番谷隊長は、俺の何倍も・・・怒ってる


「・・・あァ・・・あかんなァ。十番隊長さん」
そんなことには構わず、ギンも刀に手をかける
「こないな処で刀抜かれたら・・・ボクが止めるしかないやないの」

こいつ・・・あくまで認めねえ気か
「・・・・・・い・・・市丸隊長・・・」
ギンの更に後方から、微かな声が聞こえた

「退がっとき、イヅル」
そうか、イヅルか・・・って、納得してる場合じゃないっての
「まだ、死ぬん厭やろ」

あ、戦う気ね
「・・・バカ言うな。足りねえよ、退くだけじゃ」
へ?

「てめえは消えろ吉良。目が届かなくなっても、まだ遠くへな」
そういうと日番谷隊長が、斬魄刀を肩の高さまで上げる
「四方三里に居るうちは・・・巻き込んで殺さねえ自信は無え」

両手で刀を持ち直すと、勢いよく空中へと飛び上がった
刀を持つ腕を中心に、水が渦を巻く

「霜天に坐せ!!氷輪丸!!!」

言葉と共に、さっきの渦が、巨大な水と氷の竜へと変わる
柄の先には、鎖でつながれた三日月上の刃がついている
そして、さっきまであんなに晴れていた夜空が、真っ黒な雲に覆い隠され始めた

天候を操る能力・・・・・・か

空中に飛び上がった隊長が刀を一振りする
その動きに合わせて、水と氷の竜がギンへと向かっていく

水と氷で構成された緩慢な竜にしては、恐ろしいほどの速さだった

ドパン!!

激しい水しぶきを立て、形を崩す竜
陸だというのに、その光景は荒れ狂う海そのものだった

「くッ・・・!」
その中から、誰かが飛び出してきた

「あいつ・・・まだあんなところに・・・!」
それは紛れもなく、逃げ遅れたイヅルだった
隊長が逃げろといったのには、何か特別なわけがあるはずだ

その隊長の攻撃を直接受けたイヅルをほっといたら、何が起こるかわかったもんじゃない
「バカ!何してんだイヅル!!早くこっちに来い!!」
めいいっぱいの力で怒鳴る

だが、その時
「・・・う・・・うあああああああっ!!!」
イヅルが叫び声を上げる
さっき水をかぶった所が、凍り始めている

氷雪系最強・・・・・・

日番谷隊長の斬魄刀の特記の一部を思い出した
こういうわけだったのか

途端にイヅルが降下を始める
腕から足までが、凍りつき始めている。身動きが取れないんだ
「ち・・・ッ!」
急いでイヅルの元へ飛び、体を抱えて着地する

「アホ。消えろって言われたら、素直に退けよ」
地面にイヅルをおろし、ギンと日番谷隊長の方を見る

さっきと同じように刀を一振りした所から、水と氷が姿を現し、ギンへ向かっていく 
負けじとギンも、刀を一振りし、飛んでくる危険物を斬っていく
だが、斬った先に、日番谷隊長の姿はなかった

・・・速い・・・!

一瞬のうちに後ろへ回り、気がつけば、凍りついたギンの左腕に鎖を巻きつけ、動きを止めていた
そして、刀を構える
「終わりだ。市丸」
ギンに刀を突き刺そうとした瞬間・・・

「射殺せ、神鎗」
ギンの斬魄刀が、隊長の左目に向かって伸びはじめた
「くッ!!」
すぐさま回避する日番谷隊長

「・・・ええの?避けて」
ギンが呟いた
・・・ちょっと待てよ・・・・・・まさか・・・!

ギンの剣先を見る
その先には、俺が気絶させた桃が倒れたままだった
「死ぬで。あの子」

こいつ・・・・・・!!

怒りがこみ上げてきたかと思うと、先に足が動いた
瞬間的に、風景がゆがむ
そのゆがみが止ると、自分でもわからない間に、桃の元へとたどり着いていた

急いで桃を抱え、逃げようと足に力を入れる
だが、その時気がついた
切っ先は、もう俺のすぐそこまで迫っていた

・・・しまった!逃げる時間が・・・

そう思ったその時
目の前を、黒い影が横切った
・・・金色の髪に十番隊の副官章
まさか・・・・・・!

ガンッ!!!

刀が擦れあう音がする
俺の代わりに、ギンの斬撃を受け止めてくれたのだろう
動きが止まり、今、姿がはっきりと認識できた

こいつは・・・
「・・・・・・乱菊・・・」
十番隊副隊長、松本乱菊

「松本・・・!!」
何故か隊長も驚いている
「・・・申し訳ありません。命令どおり隊舎へ帰ろうとしたのですが・・・氷輪丸の霊圧を感じて戻ってきてしまいました・・・」

そう言い終ったあと、微かに「ビキッ」という音がしたのを、俺は聞き逃しはしなかった
「・・・刀をお退き下さい・・・市丸隊長。退かなければ・・・・・・ここからは、私がお相手いたします・・・!」
さて、これで退いてくれるかどうか

「・・・・・・しゃあないわ」
そういうと、神鎗を元に戻した
そして、今度は何も言わずに振り返り、その場を立ち去ろうとした

「待て市丸!!」
逃がしてなるものかと、日番谷隊長が引き止める
「ボクを追うより、五番副隊長さんをお大事に」

そういって、姿を消した

「・・・・・・行きましたね。いいんですか?逃がしちゃって」
あれだけ怒ってたのに、こんなに潔く退くとは思っていなかった
「ああ。雛森のこともあるからな」

そういって、そっぽを向いてしまった
なんなんだかなあ・・・。よくわからない人だ

「・・・にしても、あんたがこんな所にいるとはねえ、
刀を鞘にしまいながら乱菊がいった
「何で?どこにいたって不思議じゃないだろ」
とりあえず、霊圧らしきものを感じたことは言わないでおこう

「そう?こんな夜に出歩くなんて、あんたにしちゃ珍しいじゃない。しかも隊長の所に」
あ・・・いや、それは俺も馬鹿だって思った・・・
「でしょ?ビックリしたわよ〜。隊長追っかけてきたらギン・・・でいいか、本人いないし。ギンと隊長が戦ってるし、はいるしで」

そ、そんなに変か?
「めちゃくちゃね。それに・・・・・・」
突然乱菊が黙った
「どうした?」

「・・・いやね・・・・・・あいつ、また何にも言わないで消えちゃったなぁって・・・」
さっきまでの様子が嘘のように、静かになる
ギンのことか・・・でも俺からしてみりゃ、ありゃいつものことだ

乱菊は違うんだろうけど
「・・・・・・。聞きたいことがある」
黙った乱菊と入れ替わりに、隊長が話しかけてきた

「何でもどうぞ?あ、残りの旅禍がどこにいるかってのはダメですからね」
違うと思うけど
「違えよ。・・・雛森が藍染の手紙を読んだところからいたな?」
あ、ばれてた

「はい。全部聞きました」
何のことだか理解するのに時間がかかったけど
「・・・あの手紙の内容を聞く限り、何もしらねえお前は俺が犯人としか考えられねえ筈だ」

ま・・・・・・そりゃな
「何故俺を犯人ではないと断定した?藍染の手紙には俺の名が書いてあったことは、知ってただろ」
知ってますとも、聞いてたんだから。でも・・・

「まず一つ、手紙の内容が矛盾している」
聞いたもの全てが真実とは限らない。情報が少なすぎるこの状況は特にな
「初めの方には桃を巻き込みたくなかったと書いてあるのに、最後の最後で、桃に隊長を討って欲しいと書いてある。どう考えたっておかしい」

俺の知ってる藍染隊長なら、そんなこと言わない
「二つ目。藍染隊長を日番谷隊長が殺したなら、あの場面で桃を殺さないのはおかしい」
日番谷隊長は、こっちを見たまま、何も言わない

動揺しているわけでもなく、ただ俺の考えを聞いている
「自分の目的を邪魔する者は、たとえ藍染隊長でも殺したような奴だ。仮に隊長が犯人だとしても、桃を殺した」
感情に左右されるような相手じゃない。そう思った

「そしてたどり着いたのが、二人を潰し合わせるために“手紙を改竄した”ということ」
恐らくそれが、一番真実に近い。俺の知っている、現段階では・・・
「桃にとって戦いにくい相手を犯人に仕立て上げることで、桃は完全に混乱。さらに潰しあってくれれば好都合。真実を知る者はいなくなり、犯人は日番谷隊長となる」

まさに犯人の思う壺。桃を利用した、とんでもない計画だ
「自信はありませんよ。俺は隊長のこと、何も知らないんですから。実際、この手紙が改竄された証拠も何一つありません」
桃が、この字は藍染隊長のものと言い張った。それは正しいと判断していい

「だけど、隊長は誰も殺さなかった。誰も傷つけなかった。何より・・・桃のためにギンに向かっていった」
氷のように詰めたい目。桃と戦った時とはまったく別物の目だった
「俺は、そんな人が藍染隊長を殺すとは思えません」

これだけは、証拠がなくても自信を持って言える
「・・・・・・そうか」
そうかって・・・それだけ?
「それだけっすか?」

「いや・・・適当な考えで乱入してきてるんじゃねえかってな。理由無しで面白半分で乗り込んでくるような奴だったら、ここで叩き斬ってる所だ」
まあ・・・あんなところに面白半分で乗り込まれたら、俺だってキレるわな
「・・・・・・あそこに乱入した時、俺の考え、全くまとまってなかったんですよ」

思いついたことはあった。でも、それは証拠のない推測。隊長の言う、適当な考えだった
「でも思ったんです。二人が戦っちゃいけない。いくら隊長の名前が書いてあっても、二人はその戦いを望んではいない。だったら、戦っちゃダメなんです」
仲間と戦うには、それなりの覚悟がいる

桃には・・・そんな覚悟をする事はできもしないし、そんな事する余裕もない
文面一つ見ただけで、あの変わり様・・・すぐに判断できなかったのが不思議なくらいだ

そして・・・その様子を見て、ギンは笑った。止めようともしなかった
日番谷隊長は桃との戦いを望まず、ギンはその様子を見て笑う・・・どっちがおかしいかなんて、一目瞭然だ

「それはそうと・・・」
今までずっと黙り込んでた乱菊が話し出した
「あんた、旅禍よね?こんなところにいていいの?」

・・・え?
「だーかーら!こんなところにいたら、いくらあんたがあたし達の隊だからって、捕まえないわけないでしょ」
・・・・・・やばっ!
「さいならっ!!!」

すぐに景色がゆがみ、さっきまでいた場所ははるか後方になる
「こらーッ!ー!!」
微かに乱菊の声が聞こえたが、風の音ですぐにかき消された

「わ〜・・・そういや俺、あそこから逃げようとしてたんだった・・・」
桃のことで、すっかり忘れてたよ
って言うか、急いで戻んなきゃまずいなぁ

「たっく・・・・・・確かめたらすぐ帰るつもりだったのに。ギンの野郎め・・・」
でも、情報収集はできた。それもとびきりの
だが・・・それで問題もできた

どうやら、そう易々とルキアは助けさせてくれないみたいだな・・・
夜一様には・・・報告しなければな

真夜中の帰路を、俺は行きよりも速いスピードで走った


あとがき
お・・・おわった〜・・・
体育祭の関係でしばらく書けなかったもんで・・・話の内容メチャクチャです
この後も何かと行事が多くて・・・話がメチャクチャになりそうです・・・
では、こんなメチャクチャな話を読んでくださってありがとうございます!!続きます!・・・きっと
2006.9.18 煉城瞳
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