〜BLEACH!!〜
第二十八話
「私を屈服状態にさせたくば、私に殺される前にそいつを見つけ出せ!そして・・・私を斬り伏せてみろ!!!」
そう、斬月は叫んだ
刀で刀を斬り伏せるんだから・・・仲間割れ?って何考えてんだ俺は
目の前のことに集中するために、さっきの想像を頭の中から追い払う
いくら修行とはいえ、殺すつもりで戦っている斬月
自分の持ち主でも、新たなる力を発現させる為にはこうする他無いという事を知っているのか
どっちにしろ・・・一護が卍解に辿りつくには、過酷な試練をを覚悟しなければならない
・・・俺は・・・そんなことを幼い時にしていたのか・・・?
・・・何百年も昔、死神になってからわずかしか経っていないうえ、何も知らない俺が何故卍解など習得できたのか
逆に・・・“死”すらも知らなかったから・・・習得できたのか・・・?
「夜一様・・・」
隣に立っている夜一様を呼ぶ
「なんじゃ?」
「俺・・・この修行をしたんですよね。強くなりたくて・・・貴女に追いつきたくて」
かなり昔、でもはっきり覚えている
斬魄刀で本体を倒した、あの日
護廷十三隊に入隊して、俺がどれだけ無力かを知った
普通の死神よりは強い・・・でも、隊長達には及ばない
そして、死神は護廷十三隊だけではない。鬼道衆・隠密機動、他にもまだ、たくさん強い人たちがいることを知った
だったら強くなりたい。誰よりも強くなって・・・夜一様とずっと一緒にいるんだ。そう思ったのを、今でも覚えている
だから夜一様に、もっと強くなりたいと言った
そうしたら、卍解のことを教えてくれた。修行も見てくれた
その時も・・・一護と同じように卍解の説明を受け、あの人形に斬魄刀を突き刺した
何日戦っていたかはわからない。短かったかもしれないし、長かったのかもしれない
今すぐ強くなりたくて・・・休み無しで続けた
傷だらけ、ボロボロの体で、やっと斬魄刀の本体を討ち倒した
光と共に消えた本体は・・・今一度、俺の中へ入っていった・・・
卍解を手にした瞬間。不思議な感じだった。だが、この中に新たに増えた力は・・・しっかりと感じ取っていた
だが・・・夜一様以外に、このことはしばらく話さなかった
ちゃんと扱えるようになるまでは、けっして誰にも話さなかった
この力は、自分のために使うものじゃない。だからいちいち話す必要もないと思った
いずれくる時の為に使えるように、それだけを思って胸の内にしまいこんだ
今思えば・・・ただの思い出となっていたあの日
でも・・・今は違う
「お願いします。あの時と同じように・・・一護と同じ方法で習得させてください・・・!」
表情は変わらなかったが、やれやれ、そういった顔をしたように見えた
「・・・何を今更言っておる」
そういうと、また真っ直ぐ一護の方を向いた
「おぬしは3日で、一護と同じ方法で卍解を習得する。それ以外に・・・おぬしが強くなれる修行はないのじゃ」
もう俺は卍解は持っている
これから手にするのは・・・もう一つの卍解
今年の春に受け取った・・・こいつの卍解だ
腰にさしてある斬魄刀に目をやる
普通なら一本。でもそこには二本
二刀一対というわけじゃない。それぞれが、別の斬魄刀
俺を・・・救ってくれた死神の最後の力。昔の俺には無かった・・・新しい力
「別の者の力を制御するには、さらに強い力がいる。あの修行ほど、ピッタリなものはなかろう?」
一から・・・別の人の卍解を俺が習得する
あの人が今生きていたなら、これを一番望んだと思う。だから・・・俺がやる
「じゃが・・・今、力を手に入れることを一番望んでいるのは一護じゃ。必然的に一護の修行が主になる。おぬしの時間は一護以上に少なくなる」
ルキアを助けたい意志が強いのは・・・確かに一護だ
「構いません。俺はルキアを助けるためなら、どんな形でもいいんです」
いつも俺は、一護の意志に負ける
それは・・・俺の何倍も・・・一護はルキアを自分の手で助け出したいと思っているからだ
「初めは、一護ができないのなら俺が助けようと思ってました。でも・・・一護に助け出させてあげたい。俺はサポートをする、そうしたいんです」
一護の修行になる。初めからわかっていたことだ
「修行はいくら少なくても構いません。その少ない時間で・・・俺は強くなる。一護と一緒に」
俺にもできたんだ、一護が卍解までたどり着けずにくたばるなんて・・・絶対にない!!
だから・・・一護を信じる。そんで、この修行を精一杯やってもらうためにも・・・俺は我慢しなくちゃな
「そうか・・・」
それ以上、何も話さなかった
ただずっと・・・一護を見ていた
一護は強くなった・・・でも、斬月はさらに上をいく
既に30分は経過している・・・だが、傷一つ付けられてない
・・・一護が苦戦をしいられているのは目にみえていた
今まで以上の相手に、少し疲れたのか、力がゆるんだように見えた・・・その瞬間
組み合っていた一護が弾き飛んだ
斬月が気のゆるんだ隙を見て、一護を押し飛ばしたのだ
そのまま体制を崩したところを、思い切り蹴飛ばす
地面に叩きつけられながら、大きく転倒する一護
額からは血がにじみ出る
そして・・・伏したまま、動かない
「立て、一護!まだこんなものでは終わらぬぞ!」
俺の横から夜一様が言った
いつもの夜一様からは想像できないような・・・容赦ない言葉
「もう一度言うぞ。立て、一護」
起き上がろうとしない・・・いや、起き上がれない
ほんの少しの戦闘でも・・・溜まったダメージは大きいらしい
「どうした!モタモタするな!時間を無駄にする気か!」
その言葉でようやく手を着き、上半身を起こした
「・・・・・・構わん。そいつが自分で立てないのなら・・・私が引きずり起こしてやるまでだ」
斬月にも、この修行の間はいたわる気持ちは存在しないようだ
「・・・・・・オッサン・・・!」
しばらくにらみ合う
そしてすぐに後ろに飛びのき、近くにあった斬魄刀を掴んだ
引き抜いたと同時にまた斬りかかる
二人同時に斬りかかるもんだから、ただ単に組み合うだけ
そんでいつも一護が気をぬいたりするから、一護にばっかりダメージが溜まる
これの繰り返しで、結局二人とも、刀が折れる
もう一度距離をおき、向かい合う
しばらく・・・何も起こらない
疲れたわけではない。見計らっているのだ・・・相手の隙を
そう思ったとたん斬月が動き、一気に距離を縮め、一護の手にしている刀を砕いた
「くッ!!」
後ろへ砂埃を上げながら後ろへ下がる一護
柄から何センチも残っていない刀が使えるわけもない
「くそッ!!」
持っていた刀の残骸を放り投げ、別のを探し始める
「・・・18本目・・・」
今まで一護が使い、砕けていった刀の数
岩壁から岩壁へ飛び移りながら、背を向けて走る一護
それを後ろから追う斬月
何やってるんだ・・・探すより戦え!!それしかないんだ・・・
「あった!!」
それが通じたのか、地面に刺さっている刀に向かって走り出し、掴み取った
手にしたのは・・・いつもの形の斬月
「やっぱり本物の形は・・・これしかねえッ!!」
引き抜きながら、後ろに迫る斬月に対抗しようとした
・・・違う。あれは・・・本物なんかじゃない
根拠はない。でも・・・なんとなく違った
その考えは正しかったようだ
やすやすと、その斬撃は手で押さえられ、刀ごと砕け散った
驚きの表情を隠せない一護
「緩い」
斬月はそうはき捨てた
そして、手に持っていた刀で一護の肩から胸にかけてを深く斬りつけた
飛び散る紅い、血
「・・・言ったはずだ一護。ここにある刃達は全て、お前のこころの一欠片。これはその中から戦いの為だけに容られた一欠片を見つけ出す試練」
ここにある刀は、一護のこころをそのまま映し出したようなもの。それぞれの形に意味がある
そして、恐らく今の形の刀は・・・
「今のは、斬月に頼ろうとする、お前のこころの脆さの一欠片」
今まで、斬月の強度に頼りっぱなしの戦法が多かった一護のことだ。自然とあの形を、こころの脆さはつくるのだろう
「それすら見極められぬうちは、卍解など口にもするな!」
て、手厳しい・・・
「さあ、次だ一護!伏してる暇など・・・無い筈だ!!」
地面に肩膝を着いていた一護が、近くに刺さっていた刀を手に取る
「・・・あたりまえだ!」
そういうと、もう一度斬月に向かっていった
「・・・・・・さて、場所を移すかの」
修行を始めた場所から一歩も動いてないから、今は結構離れている所にいる
「離れちゃいましたね・・・」
「まあの。仕方ないじゃろう、一歩も動かずに修行しろとはいえんしな」
そりゃあ・・・修行じゃなくなるな、完璧
「とりあえず・・・あそこがいいじゃろう。ゆくぞ」
「は!」
地面を蹴り、一気に上昇すると空中でさらにもう一段、空中を蹴りあがる。そのままさっきより少し高い所に着地
「さっきよりは一護達が見えますね」
「ここまでは戦闘の影響も及ばぬからの、じっくり見れそうじゃ」
確かに、あの斬撃に巻き込まれないようにいちいち逃げる必要もなさそうだ
衝撃は外に影響するわけでもないし・・・修行をするのに、これほど便利な場所はないだろうな
ただ一つ不便なのは・・・この空間は、時間がまったくわからないってことだけなんだよな・・・
何時間経っただろう
こんなに長い時間動かないのは久しぶりなぐらいだから、結構な時間だ
時間の流れはわからないが・・・一護が成長していることはわかる
またいつもの通り、一護の刀身が折れ、後ろへ弾き飛ぶ
だが一護自身は体制を崩すことはなかった
「・・・51本目・・・」
いつの間にか、刀の本数はとんでもない数になっていた
そんなことには構わずすぐに、岩に刺さっている刀を引き抜いた
「次だ!!」
声を張り上げながら走っていく
斬月も、すばやく一護に向かって刀を横に振るった
それを受け止めながら、相手の速度にあわせて刀身を逸らして受け流し、そのまま思い切り前に突き出した
だが、多少驚きはしたものの、斬月はすぐに上へ大きくジャンプ
手に持っていた刀を勢いよく下へ投げ、一護の刀を砕く
そこに目を取られていた一護の元へ一気に近づき、思い切りたたき飛ばした
またもやものすごい勢いで飛ばされた一護は、岩に叩きつけられた
「・・・敵から目を離すな・・・52本目だ」
また増えた
「くそ・・・もうちょいだったのによ・・・」
確かに、今のは惜しかった。というよりよく一日で、ここまでレベルが上がるものだ
・・・一日も経ってないのにどんどん戦いの形が、根本的に変わってきている・・・
やっぱり・・・一護は戦いの中であらゆることを、恐るべき速さで吸収できるようだ
お前に俺の事を聞かれる前に・・・こっちがお前のこと、聞きたいぐらいだよ
ひそかにそう思った
刀が折れることにも慣れたのか、いちいち驚くこともなくどんどん刀は折れ、傷は増える
しかし少しずつだが、一本の刀で戦い続けられるようにはなっているようだ
隙を見せれば刀は折れる・・・折れないということは、隙を見せることが少なくなってきているという事だ
今までは、ひどいときには一分間に5本ほど。1本1本は、長くもっても30秒ほどが限界だった
だが・・・現在使っている刀は、結構な時間使っていると思う
1分は、見方によっては短いが・・・意外と長いもの(バスケとかやってる人には、よ〜くわかると思う)
傷はつく。それは戦闘において、致し方ないこと
今、この修行で刀が折れることは、普通といっちゃ普通
その普通が、普通でなくなってきている・・・・・・つまり、何かが変わってきているということ
微かな望みだった卍解が・・・確実に近づいている。そう感じるんだ
さっき、結構な時間使っていると思った刀は、今でも使われている
刀と刀でぶつかり合い、また距離を開く
だが、刀は折れることも、弾かれることもない
いよいよ・・・本当の修行が始まったようだ・・・・・・そう思ったのだが
「・・・そろそろ限界か・・・」
夜一様が呟いた
・・・え・・・・・限界?終わりってこと?
「ど、どういう意味ですか?」
「これ以上は・・・一護の精神力が持たぬ。もう一日が終わる。相当な時間戦っておったようじゃ」
・・・つーことは・・・もう夜!?
「まだだッ!!!」
下からまた、一護の声が聞こえる
「・・・本人はやめる気ないみたいですよ」
事実です
「いや、やめさせる・・・」
そう言うと、夜一様が手に持っていた紐にまとわれていた微かな空気の揺れが消えた
そして同時に・・・なんと、斬月の持っていた刀が吹き飛んだ
一護が弾き飛ばした・・・のではなく、斬月の具象化状態がきれた為、支えを失った刀が飛んだのだ
ガシャン!と音を立てて、転神体が倒れる
「・・・あ?」
よっぽど不思議だったのか、不満の声をあげながらも状況が全く飲み込めない一護
その一護の元へ、夜一様が降り立つ
・・・俺も行こっと
すぐに夜一様の隣へ飛び降りる
「刀を置け、一護」
髪紐を解きながら言う
「・・・一日目、終了じゃ」
それでもなお、目が点の一護
「終わりって・・・3日で卍解できるようにならなきゃいけねえのに、終わりなんてあんのか!?」
・・・ぶっ続けでやる気だったんかい!!
「続けてやったらお主の体が持たぬじゃろう!!今日は終わりじゃ!夜が明けたらまた始めるから早く休めといってるんじゃ」
やっとわかったのか、ポンっと手を打つ
「あっちの端に温泉がある。はいって疲れをとれ」
指差した方向は・・・この空間の、本当に端っこ
「お・・・おう」
あまり納得がいかないようだが、刀を置き、その方向へ歩いていく
岩と岩の間を通ったところで・・・その姿は見えなくなった
「・・・さて、一護もいなくなったことじゃし・・・・・・始めるかの」
改めて、夜一様が言う
「っていうより・・・一つの人形で二人修行できるんですか?」
できなきゃ困るんだけど・・・すっごくきになる
「儂が、そんな無責任なことなぞするかっ!!」
「はい、しょっちゅうですね。ずいぶん前のことですけど」
「うっ・・・・・・とにかく!できるものはできるんじゃ!!早く刺せ!一護が帰ってくるぞ」
それは困る
「は〜い・・・それっ!」
説明は聞かずともわかる。何のためらいもなく刺す
一護の時と同じように人形は消え、代わりに・・・髪の長い女の人が現れた
服は真っ黒(斬月とはちょっと違うけど)
にしても・・・人間の姿だったとは・・・
「・・・・・・そんなにこの姿が不思議か?」
静かな声が響く
「うん。おもいっきり」
だって、そんなの一護以外見たことないもん
「私自身、あまりこの姿は好まぬが・・・まあ、この修行には適した姿だとは思うぞ」
確かに。これから一勝負するのに、図体でかくてもねぇ
「まあ、姿かたちは関係ないからな」
「しかし・・・こうして対面するのは初めてだな」
そりゃそうだ。今の今まで使わなかったもん・・・戦闘では
「まあな。でも、お前の名は知っている。問題はないよ」
今、そんなことはどうでもいい
「時間がない、もう始めなければならぬぞ」
本体に向かって、夜一様が言った
「私はいつでも大丈夫だ。今すぐにでも始めたいなら、そうするがいい」
おお、やる気満々
「・・・準備はよいか?」
「はい・・・一護が来たら、さっきと同じように具象化状態を断ち切ってください」
あまり・・・修行ってのは人に見られたくない
余計な心配をかけることがあるから・・・。それに、こういった修行は、見られてないほうが集中できるからな
「・・・ああ、わかっておる。集中して臨め!時間は少ないぞ!!」
「は!!」
もう一度、具象化した姿を見る
「ねえ。聞いてたでしょ?まわりくどいことをやってる暇はないんだ。だから・・・こんなのはどうだ?」
顔が結構上にあるので、見上げながら話す
「屈服ってのは、従うって意味。相手の方が上で、従うしかない・・・そんな状況を示す言葉だ」
ちゃんと調べたんだよ?電子辞書だけど
「一対一・・・俺が勝って、お前が敵わないってなったら屈服と一緒だろ?手っ取り早い、いい方法だと思わないか?」
数秒間の沈黙
「・・・いいだろう。私は・・・貴様を殺す気でいく。それでいいな?」
その回答を聞いて、すぐに刀を抜く
「上等っ!!」
すぐにでも始まりそうな勢い
何も聞かずに、修行を始めようとしてくれる・・・時間がない俺には都合がいいことだ
それに・・・未知の体験じゃないのに、すっごくワクワクする
対峙してる相手は、まったく知らない奴だけど・・・この感じ、楽しめそうだ
「私は、そう簡単には倒せぬぞ」
ズンっと、空気が重くなる
「・・・・・・なめてもらっちゃ困るな。お前が思ってるほど・・・」
霊力を強める
「俺は弱くないんだよ」
また、一段と空気が重くなった
「・・・いくぞ・・・!」
そういうと、手を上にかざす
そこに光が集中したかと思うと・・・巨大な炎の塊が飛んできた
避けてる暇は・・・なさそうだ
地面に落ちて、大爆発。一変が、炎の海になった
「・・・ほう・・・一振りで相殺させたか・・・確かに手ごたえはありそうだ」
俺は・・・しっかりと、その炎の海の中心に立っていた
「当たり前だろ・・・こんなところで・・・くたばってたまるか!!」
そう叫んで、刀を握り締めながら本体へ斬りかかっていった
修行に気をとられていて、気がつかなかった
時間がわからないだけじゃなかったんだ。ここにいる限り、全ての情報は・・・入ってこない
一見なんともないように見えるが、これがこの先、どれほど影響するかは・・・計り知れないのだ
だから・・・俺達は知らなかった
俺達を捕らえようと動いていた死神たちの中で・・・不穏な動きが見え始めていたことを
この尸魂界全てを巻き込む陰謀が・・・既に始まりを告げていたことを
あとがき
・・・一対一の勝負となると、人間の姿じゃなきゃ書けないんですよね・・・(考えてなかった)
というわけで、沙雪さんの斬魄刀の本体は炎を操る髪の長い女の人でした
思いついたらすぐ書く!っていう人なんで矛盾点が多いです。ごめんなさい・・・
とりあえず!修行へんもがんばって書きます!これからも読んでくださるとうれしいです!
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!!
2006.7.4 煉城瞳
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