〜BLEACH!!〜
第二十七話

「しっかし・・・重いなぁ・・・」
背中に大きな人形を背負いながら俺は、屋根を上を跳びながら走っている
足はもう完治。人一人ぐらいなら、担いで走れるぐらいになった・・・たぶん
でも今の俺には、こんな人形を背負っていることよりも

「逃がすな!!旅禍の一味に間違いないぞ!!」
後ろから聞こえてくる声。明らかに味方の発言ではない
要するに・・・大変な事態である


一時間前

「・・・どうしてだよ・・・どうして俺だけ連れ帰ったんだ!!!」
目覚めた一護は夜一様の胸倉を掴んで叫んだ
「あそこに残されて生き残れる可能性が一番高いのは俺だ!!これじゃ岩鷲も花太郎もルキアも皆殺されちまう!!」
生き残れる可能性が高い・・・そいつは間違いだ

「自惚れるな。おぬしとて可能性はない。あそこにおった誰一人、白哉を相手に生き残れる者なぞおらぬ」
「てめェ・・・」
一護が何か行動を起こす前に、今度は夜一様が一護の腕を掴んで、そのまま叩きつけた
「騒ぐな。折角閉じた傷口を、また開ける気か」

前にもあったな・・・こういうの
「・・・一護。あそこでなんでお前を無理に止めて帰ったか、わからないわけじゃねえだろ」
「わかるかよ!!ルキアたちあそこにおいて帰る理由なんてあんのかよ!!」
・・・アホか、何考えてんだよ

「・・・確実に白哉から逃げ切るためには、一人抱えて逃げるのが限界じゃった。とて足がまだ不完全じゃ」
「幾ら敵が怪我を負っているとはいえ、旅禍の逃走補助を見逃すほど、あの人たちは甘くないんだよ」
この怪我さえなければ・・・一人でも多く助けられたのに・・・

俺が気を抜いたのが悪い・・・それだけだ。あとは誰も悪くない
「・・・それなら・・・どうしてルキアじゃなくて俺を・・・」
「確かに・・・あの時あそこにおった者の中で、白哉を倒せる可能性のある者なぞ皆無じゃった」
一護はもちろん、夜一様を除いて、あそこにいた人は・・・誰も朽木隊長には勝てない

俺も・・・悔しいけどそのうちの一人だ
「じゃが3日あれば、おぬしだけ・・・いや、もその可能性が見えてくる。そう思うたから、儂はおぬしを連れ帰った」
夜一様も知っている。一護が、どれだけ自分の手でルキアを助け出したいかを
だから・・・一護にルキアを助け出させてあげたいんだ

「・・・あそこには、白哉の他に浮竹もおった。奴はルキアの直属の上官で義理堅い男じゃ。賊とはいえ、ルキアを助けに来た岩鷲と、あの四番隊の小僧を牢に入れこそすれ、殺すことなぞ考えられぬ」
一護が今、最も気にかけていることの答えを、夜一様が話した
その言葉を聞いて、一護は気が晴れたようだ

「じゃから一護、案ずるな、おぬしはここで強くなれ」
ゆっくりと立ち上がる一護
「今のままでは白哉には勝てぬ。じゃが3日で勝てるよう鍛え上げてやる。そしてもう一度おぬしの手で・・・今度は皆を、まとめて助け出せ!!」
ゆっくりと顔を上げた一護には、もう迷いなどなかった

、おぬしもじゃ」
振り向きざまに夜一様が言った
「おぬしは強い。じゃが全ての者より強いというわけではない。ルキアを助け出したいならば・・・ここで強くなる他ない」
朽木隊長だけじゃない。全部の隊長格を倒さなきゃ・・・ルキアは助けられない・・・いや、助けたことにならない

「・・・覚悟は決まっています。どんなこともします。それで・・・ルキアが助かるなら。俺が・・・強くなれるなら」
もっと・・・強くなりたい。誰よりも・・・強く
「よかろう。鍛錬するのにもってこいの場所に案内する。着いてまいれ」
くるっと背を向けて歩き始める

それに続いて歩き出す俺と一護
「あ、そうじゃ!」
突然歩くのをやめたので危うくぶつかりそうになった
「どうかしましたか?」

「・・・、ちょっと話がある」
何か忘れてたのか・・・?
「おぬし、一っ走り隠密機動の本部に侵入してきてはくれぬか?」
「は!?」

侵入だぁ!?んなことできるわけな・・・い・・・・・・まさか・・・!
「まさか・・・あの道具・・・持ってきてないんですか?」
「実はの・・・あんなもの、めったに使わなかったからのう・・・ここにはおいてないんじゃ。でかくて邪魔じゃから」
それなのにこの方法で一護を鍛えようとしてたのか・・・

「・・・わかりました行ってきます。先に行っててください」
棒読みで言った
「頼むぞ〜」
その言葉を最後に、あの洞穴から飛び出した


目撃情報多数の俺は、数多くいる隠密機動の軍団員にまぎれてもすぐ見つかる
いくら前総司令官とは言え旅禍は旅禍だもんな
無理な話なんだよ・・・こんな大きい人形抱えて、見つからずにそっと帰ってくるなんて

現に見つかったから、瞬歩で逃げている真っ最中
このまま帰るわけにはいかない・・・潜伏場所が知れたら何百人もの死神が討伐にくる、修行どころではなくなってしまう
「いい加減ついてくんな!!疲れるだろ!!!」
振り向かずに叫ぶ

瞬歩の連用は禁物。そう教えられている
教えを守れとか、そういう堅苦しいことで言われた言葉じゃない
要するに・・・疲れない程度にしろという意味。瞬神夜一が、こんなことちゃっかり言ってていいものなのか、今だ不明

・・・追跡は・・・・・・ん?
「気配が消えたな・・・諦めたか・・・?」
気配を消して、隠れ家を見つけ出そうとしているのか・・・?いや・・・視線も、微かな霊力の移動も感じられない

「誰も、追ってこないな・・・・・・おっ、見えた見えた」
ようやく夜一様と一護がいるところへ戻ってこれた
地下につながるはしごから飛び降りると・・・見えた、夜一様だ

「夜一様、只今戻りました」
「すまぬな。持ってこれたか?」
「はっ、この通り」
背負っていた人形を見せる

「よし。では・・・そこの岩の陰にでも立てかけておいてくれ。少し一護に話があるのでな」
言われたとおりに人形を下ろす
「一護!!準備はよいか!?」
俺が戻ってくると夜一様が一護を呼んだ

「ああ、ばっちりだぜ」
俺と夜一様がたっているところよりも、少し低い位置に一護が姿を現した
何も言っていないのに刀を抜いて構えた
やる気満々って感じ

「・・・最初に訊いておくがおぬし・・・その斬月が常時解放型の斬魄刀だということには気付いておるか?」
「そうなのか!?常時解放っていうと剣八みたいな?」
初めて知ったのか・・・
「どうも他の連中と形が違いすぎるからおかしいと思ってたんだ。名前呼んでも変形しねーし・・・」

あ、一応おかしいと思ってたか
「・・・やはり気付いとらんかったか・・・では・・・その斬月がもう一段階解放できるということも知らぬな?」
そりゃ・・・しらんだろうな
「斬月に限らず全ての斬魄刀は、実は二段階の解放が可能なんじゃ」

結構驚いてるみたいだ。目を大きく見開いたまま、動かない
「一つ目の解放を「始解」、二つ目の解放を「卍解」と言い、この二つの解放ができることが隊長になる為の必須条件の一つとされておる」
「必須・・・」
「そうじゃ。つまり隊長格は、唯一人の例外を除いて、全員がこの“卍解”を習得しておるという訳じゃ」

「・・・例外・・・?」
本当は、卍解ができないと隊長にはなれない。でもそれすらも覆す人、それは一人しかいない・・・
「わかるんじゃない?一人だけ、そんな人と戦ったはずだよ」
「・・・あ・・・!」

感づいたか
「そう。十一番隊隊長更木剣八のこと」
「長い尸魂界の歴史の中でも、卍解ができぬどころか自身の斬魄刀の名も知らぬまま隊長位につけたのは奴ぐらいじゃ」
本当に、自分自身の力だけでここまで登ってきた人。だから、あんなに強い

「それほどやつの戦闘能力と、それに対する執着は護廷十三隊にとって大きかったのじゃろう。それは戦ったおぬしが一番よく解っておる筈じゃ」
名すらもわからない斬魄刀で、一度は死に掛けた。わからない筈がない
「始解状態と卍解状態での斬魄刀の戦闘能力の差は、個人の資質と鍛錬の度合いにもよるが・・・」

一呼吸おく
「一般的に、5倍から10倍と考えていい」
だから・・・それを習得した者が隊長格にふさわしいとされ、必須条件にまでなっている
「10倍・・・!!」

今の実力が、さらに別次元へ跳ね上がる・・・驚くのも無理はない
「驚異的な上昇率じゃろう?じゃがそれが故に、始解から卍解に至るには才のある者でも十年を優に超える鍛錬が必要となる」
「ちょっ・・・ちょっと待ってくれよ!そんな時間は・・・」
「無論、解っておる」

強く夜一様が制止した
「誰もそんなにやれなんて言ってないよ。処刑が終わっちゃったら意味ないでしょ」
の言う通りじゃ、最後まで聞け。十年二十年とかかるのはあくまでまともに修行を重ねた場合の話・・・」

要するにまともな修行じゃない
「かなりの危険がつきまとうが、おぬしにはまったくべつのやり方で・・・3日で卍解を習得してもらう」
3日で習得させようとすること自体、まともな考えじゃない

「・・・本当に・・・3日で習得できるのか?そんなすげえもん・・・」
ほら、一護だって疑問に思ってる
「そうじゃ。成功例は無いわけではない。おぬしが維持でも習得しようと思えば・・・できないものではない」
できない可能性も・・・無いわけではない

「案ずるな、現にも習得しておる。しかもおぬしよりも下の12の時じゃ」
「・・・あ!?ホントか!!」
また余計なことを・・・!!
「う、うん。もう完成してるよ」

「う・・・やってやろうじゃねえかッ!!!今すぐやろうぜ!!」
・・・俺、何か一護がやる気になるようなこと言った?
「わかっておる。、さっきのやつを」
「あ、はい」

岩陰に立てかけておいた人形を引っ張ってくる
「どうぞ」
夜一様に手渡し、すぐ横に立つ
「な・・・なんだその妙な人形は・・・?」

「妙なって言うな!ただでさえ重くて邪魔で大して使い道がないのに妙なってつけたら余計変な人形になるだろ!!」
「・・・、おぬしな・・・・・・ともかく!!」
人形の首にあたる部分を持ち直す
「転神体、隠密機動の最重要特殊霊具の一つじゃ。斬魄刀の本体を、強制的に転写して具象化することができる」

「・・・よくわかんねえな。それが卍解の修行に要るのか?」
だから・・・必要じゃなかったら俺は持ってこないって
「無論じゃ。始解に必要なのは斬魄刀との“対話”と“同調”、対して卍解に必要なのは斬魄刀の“具象化”と“屈服”」

今までの中で聞いたこともないような言葉の連続に、一護の頭はこんがらがっている
「“具象化”とは対話の際、こちらが斬魄刀側の世界に行くのではなく、斬魄刀を我々の世界に呼び出すことを指す」
「大体は、ここまでで十年以上鍛錬を必要とする。第一段階にたどり着くのだって難しいんだよ、卍解は」

具象化は今言ったとおり、卍解にたどり着くまでの足がかりに過ぎない
その足がかりすらも・・・普通の死神には遠すぎる、それが卍解だ

「いかにも。じゃが、おぬしは相討ちとはいえ更木剣八と対等に戦った。潜在的には既に具象化か、それと同等のレベルに達してると儂は見る」
しばらく一護が黙る
「・・・・・・あ・・・」

そうだ、一護は更木さんと戦った時に斬魄刀の本体、斬月と話していた
それはつまり、斬魄刀をこちらの世界に呼び出す・・・具象化をしたというわけだ

「・・・覚えがあるようじゃの」
軽く笑いながら夜一様が言う
「斬月をこいつに刺せば、その具象化の状態に強制的に持っていける。そうすれば儂の力で具象化状態を保ってやる」
その具象化状態の間に、斬魄刀の本体を・・・屈服させなければならない

「ただし、この方法で具象化できるのは一回きり!期限は3日!その間に何としても具象化した斬月を討ち倒して屈服状態にしろ!」
・・・何故3日?失敗しない限りいくらでも期限はある。むしろ処刑ぎりぎりまででいいはずだ
危険・・・ということか

「それができなければ・・・」
それから先を、夜一様は話せなかった
一護が、何も聞かずに転神体に斬月を刺したからだ
「お前・・・いいのか?何も聞かずに始めて」

夜一様も転神体を見つめてる
「・・・できなかった時のことはきかねえ。それしか方法がねえんなら・・・やるしかねえだろ!」
その途端に人形は消え、代わりに黒衣をまとった長身の男が現れた

これが斬月の本体・・・あの時は見えなかったけど、今ははっきり見える
「・・・どうやら、随分回復したようだな・・・・・・一護」
「・・・オッサン・・・!」

いや、刀の本体にオッサンって・・・
「・・・話は聞いておったな?」
「無論だ」
刀の状態でも話って聞こえるんだ

「戦闘方法は任せる。すぐに始められそうか?」
「・・・ああ」
そういうと、地面に手を着いた
微かに空気が震え、地面が割れ、崩れるような音がした

それもその筈、この空間のいたる所から・・・あらゆる形の刀が出てきた
「・・・な・・・何だこりゃ・・・!?」
持ち主である一護も、驚嘆の声をあげている
「この中に一本だけ・・・本物の私がある・・・私を倒すことができるのはその一本だけだ」

私って・・・刀のことだよな?
「私を屈服状態にさせたくば、私に殺される前にそいつを見つけ出せ!そして・・・私を斬り伏せてみろ!!!」
両者距離をとるために後ろに跳ぶ
修行が・・・始まった


あとがき
あんま関係ないけど、死神はテストないからいいなーと思いました
こういう修行が毎日できるんならメチャクチャうれしいです
どういう風にしたら、戦闘の場面がかっこよく書けるかが今だよくわかりません・・・
ここまで読んでくださってありがとうございました!!次回も一護の修行だと思います・・・きっと
2006.6.29 煉城瞳
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