〜BLEACH!!〜
第二十四話

「お前の考えてることもわかる。心配して言ってくれてるってわかる。でも俺はお前のことも心配なんだ・・・悪いな」
謝るべきだ・・・そう思った
「・・・しょうがねえな!じゃあ邪魔すんなよ!!」

そう言うとまた前を向いて構え直った
「・・・意外だな・・・二人揃って追っかける素振りもナシかよ・・・俺らを止めるのがあんた等の仕事じゃねえのかよ」
「言っただろ、俺はてめえと殺し合いに来たってな。てめえの仲間だの朽木何たらだのがどこで死のうが興味無えよ」
おー怖ッ!

「・・・上等だ・・・ちくしょうめ」
無理に言うなって無理に
「いざとなるまで手はださねえ。それでいいんだな?」
「ああ・・・そうしてくれ・・・」

言ったとおりに影響が出ない程度にさがる
いざとなるまで、そう言ったが一護が勝てない、死ぬと感じたらたとえ無傷でも止めようと思っている
今の一護は・・・いつもと違うから・・・

「ふーっ・・・ふーっ・・・」
だいぶ息があがってきている、そのうえ構えまで(元々だけど)ガチガチになってきている
これだと更木さんは・・・
「・・・悪くねえ。構えは固いし隙だらけだが、霊圧だけはかなりのもんだ。そこらの副隊長レベルじゃ相手にならんだろう、一角が負けるわけだぜ」

あの時より霊圧はあがってるけどな
「・・・そりゃどうも」
ぶっきらぼうに返事を返す
「・・・だが俺との間にもまだ差があるな・・・・・・どうだ、一つハンデをやろうか」

そう言うと死覇装の合わせを開いた
「てめえから先に斬らせてやるよ。どこでも好きな所を斬りつけて来い」
やっぱり・・・ハンデが出たよ・・・
「・・・な・・・!?」

いままでの戦いを勝ち抜いてきた一護は、こんな戦い方に当然驚いた
でも更木さんにしてみれば・・・普通なんだ、こういうの
「な・・・何言ってんだ・・・?構えてもいねえ奴に斬りつけられるかよ!バカにしてんのか!?」
「バカに何てしてねえさ、ただのサービスだ。構えてねえ奴に、斬りつけねえって心構えは立派だが、そんな小奇麗なもんは別の機会に取っとけよ」

そういうと急に目つきが変わった
「・・・そう気負うなよ、楽しくやろうぜ」
一護にしてみれば、楽しく・・・できるわけがない
「殺そうが殺されようが、所詮は暇つぶしだろうが」

その言葉からは人間とは思えないほど感情もなく、ただ殺気のみが感じられた
「ホラ来いよ。首でも腹でも目玉でも、何ならこの一撃で俺を殺したっていい。ビビッてんじゃねえよ!!来い!!!」
「くそッ!!後になって恨むなよ!!」
そう言うと更木さんに向かって突っ込んでいく

こんな余裕を見せる、ならば何かある。こう考えるのが普通だ
剣八の名は護廷十三隊で最も戦いを好み最も多くの敵を殺してきた者の事を指す
そしてその意味は・・・
「・・・この程度かよ。興醒めだ」

切りかかったのは一護、なのに血を流しているのは一護
幾度斬り殺されても・・・絶対に倒れない。こんなとんでもない意味を剣八という名は持っている
実際、更木さんはあの一護の攻撃さえも、傷一つ負わずにそこに立っている
「次はこっちから行くぜ。頼むから一振り二振りで死ぬんじゃねえぞ」

その言葉と共に斬魄刀に手を掛ける
いつもの一護ならここでいっそう警戒するはずなのに、自分の手を見て呆然とするばかりだった
「ずいぶん驚いてやがるな。そんなに不思議か?てめえの刀で・・・俺の体と斬れねえことが」
そのまま刀は抜かず、一護の刀を素手で押し戻した

大きくはじかれた一護
その顔には困惑の表情が浮かんでいる・・・きっと更木さんのことを「バケモノ」とか考えてるんだろうな
「ムリだよいっちー。いっちーに剣ちゃんは斬れないよ」
さっきまで壁に寄りかかっていた筈のやちるちゃんがいつの間にか一護の前に立っていた

「だって、こんなの剣ちゃんにしたら刃がついてないのと一緒だもん」
「・・・な・・・!?」
刃がついてないなんて言われるとビックリと言うか結構驚く
「教えてやろうか。何故てめえの刀が俺を斬れねえのか」

話は簡単。ただそれはあまりにも信じ難い
「何のこたあねえ。霊圧同士、ぶつかれば圧し負けたほうがケガをする。それだけのこった」
何のこたあねえけど今まで虚と戦ってきた者には結構常識はずれ
「要はてめえが敵を殺す為に霊圧を極限にまで磨き上げて作ったその刀より、俺が無意識に垂れ流している霊圧の方が強い、それだけの話だ」

まずそれだけで十分凄いと思う
「まったく、この程度の奴を夜通し待ってたなんてな。笑い話にしたって出来が悪ィぜ」
そう言うと今度は刀を抜いた
「せめて、こいつの錆おとしぐらいはさせてくれよ。頼むぜ旅禍」

それが死闘開始の合図だった
一気に間合いを詰める更木さん
凄まじい勢いで振り下ろされた刀を受け止めきれず、それをはじき急に背を向けた
今まで背を向けたこと・・・なかったのに

相手から逃げようとしたこと・・・なかったのに
「・・・逃げるしか能がねえのかよ・・・!」
そういうとさらに間合いを詰める
いっこうに向かい合う姿勢を見せない一護

そのまま角を曲がり最後には完全に見えなくなってしまった
「・・・あのバカ・・・」
完全に更木さんを恐れている。今の一護じゃ勝てる見込みなんて万に一つも無い
「やちるちゃん。どうする?見えなくなっちゃったけど」

後ろにいるやちるちゃんに向かって話しかける
「ん〜、あそこに行ったら見えるから上に行こう!」
そういうと小柄な体からはとても考えられないほどのスピードで壁を蹴り上がっていく
・・・おいてかれた・・・!?

「ま・・・待ってー!!」
そのあとを同じように蹴り上がっていく
でも早い早い。平地に着いたらもう座り込んで下を見下ろしていた
「・・・剣ちゃん、全然面白くなさそう」

そりゃいつもだ
「そうか・・・」
下からは何度も「カキン」と刀を交えている音が聞こえている
「いいの?行ってあげなくて。あの子死んじゃうよ?剣ちゃん、楽しくないとすぐに倒しちゃうから」

確かに・・・今回ばかりは手助けをしなくてはならないのかもしれない・・・でも・・・
「・・・俺は一護のこと、まだよくわからない。俺がヤバイって思っても一護は全然諦めない。だから口は出さない・・・まだこれからだよ」
そう願いたい。それにここで一護のことを助けてもそれは一護の本意じゃない
本当にヤバイと見極めるのは難しい

今助けて、実はまだやれて・・・そしたら幾らルキアを助けても一護は一生をずっと後悔して過ごすことになる
それは・・・俺がここに残った決意をことごとく崩し、一護のプライドまでも潰してしまうということ
そんなの・・・絶対にダメだ

「ふぅ〜ん。そんなに強いんだ、あの子」
さすが十一番隊副隊長、強いかどうかってわけか
「今はちょっとな、いきなり浴びるあまりの強さの霊圧に圧倒されてる。もしこれが本調子に戻ったら・・・今までのどの戦いよりも凄いことになるよ」
「へぇ〜そうなるといいね!剣ちゃんも楽しめたらいいなぁ〜♪」

やちるちゃんは更木さんが楽しいかどうかしか考えない
それほど・・・忠誠とは言わないけど、更木さんはやちるちゃんの全てなんだ
「そうだね・・・」

下を見下ろすと一護が斬月を地面に突き立てていた
精神から何から何までズタボロだ・・・このままじゃ・・・たとえまだやれたとしても一護が死んじまう
そうなったら・・・ダメだ・・・もう待つのは限界か
「今行く・・・一護」

建物のへりに足を掛け飛び降りようとしたその瞬間
突然だった
「・・・チャド・・・!」
瀞霊廷に侵入した時から把握していたみんなの霊圧のうち、チャドの物だけがたった今・・・殆ど感じ取れなくなった

「嘘・・・チャドが・・・負けた・・・?」
侵入して生きているとわかったときはほっとした。そして今、同じく生きているとわかったが・・・ほっとなんかしてられない
かなり弱りきってる。チャドはそこらの死神には絶対に負けない・・・つまり・・・
「隊長格に・・・でくわしたのか・・・」

夜一様から助言は受けていた筈・・・相手が悪かったら死んでたかもしれない
なのに何故戦った・・・?隊長格だってわかったはずだ・・・何で助言を無視してまで戦ったんだ・・・
「一護・・・もうやめろ・・・気がついただろ、チャドが死に掛かってるって。お前もああなっちまう・・・やめろ・・・もういいんだ」
聞こえるはずがないのに一護に向かって声を出した

ちょうど一護の真上だった
チャドの霊圧が消え、それを一護も感じ取り空を見上げていた
その時丁度目が合った
一護も気がついたらしい、ずっとこっちを見ている

今ここで諦めさせたくない・・・でもチャドがやられた、旅禍に隊長格は遠すぎたんだ
ー!!」
下から一護の声が聞こえる
「俺は諦めねえぞ!!チャドが負けたなら尚更だ!!ここで負けたら他の奴等まで同じ目にあうんだ!!絶対負けねえ!だから最後まで信じてろ!おまえも諦めるな!!」

まるで俺の考えを見透かしたように丁度考えていたことを言い放ってきた
何故わかったかはわからない。でも・・・そうだよな・・・俺が一護を信じないで誰が一護を信じるんだ
「当然だ!!お前以外に更木さんに勝てる奴はいねえ!!最後まで信じる、絶対まけんじゃねえぞ!!」
俺も怒鳴り返した

危険な状況なのに・・・なぜか心から微笑めた
「おう!!」
そう言うと更木さんのところへ飛び出した
「・・・やっとでてきやがったか」

何故かはわからないけど下の声がよく聞き取れるようになった
不安と一護が負けるかもしれないという勝手な考えが、俺の耳を塞いでいたのかもしれない
「死ぬ覚悟ができたのか?それともただ諦めただけか?」
「どっちも・・・外れだ!!」

迷いのない目、ただ仲間を助けたいと願い強大な敵へと立ち向かう・・・そんな目
地面を勢いよく蹴り距離を縮める
さっきの通り、当たってもケガをするのは相手だと考えている更木さんはノーガード
でも、今の一護に・・・斬れないものなんか無い・・・!!

一護が刀を振り下ろした瞬間・・・更木さんの体を斬りつけ血が吹き出た
「・・・悪ィな。まだ死ぬ気にはなれねえんだ。俺が死んだら背中にあるもの、みんな壊れちまうんでね!!!」
こんなに早く更木さんの霊圧に負けなくなるなんて・・・やっぱり凄い
「なんだ、やりゃアできるじゃねえか」

一護は凄いことをした、普通の相手ならひるむ。でも逆に・・・楽しそうだ
「・・・まだ緩めるなよ。そのまま研ぎ澄ませてろ。こっからが楽しいとこだぜ」
どんどん強くなる威圧感、視覚化されている霊圧。全てが今までの何倍にも感じられる
「なァ、黒崎一護!」

自分の方法が破られたというのに・・・やっぱり笑っている
「んふ♪」
不意に後ろからやちるちゃんの声が聞こえた
「・・・剣ちゃんうれしそう・・・」

そう言った顔も笑っていた
確かに一護みたいな奴と戦えたら・・・更木に取っちゃうれしいんだろう
そして、同じようにやちるちゃんもうれしいんだ

さっきより勢いの増した更木さんの斬撃は一護の斬月に触れただけで凄まじいほどの霊圧が飛び散った
一振りするたびに血が飛ぶ
そんな中、一護も負けじと斬りかかる
両者とも譲らず刃先がまったくその先に進まない

突然更木さんが一護の斬月を素手で掴み、捻った
強い者と戦うためなら幾ら傷を負おうともかまわない、そんな行動
いつもしっかりと柄を握っている一護はそのままひっくり返った
すかさず一護に向かって刀を突き刺そうとする更木さん

斬られてたまるかと機転を利かせ片手を柄から放し、直撃をまぬがれ、刀をはじき着地する
しかし視線の先にもう更木さんはいなかった
「後ろだ!!」
とっさに声を出した

しっかりと後ろからの攻撃を受け止めた一護
どうやら俺の声に反応するより先に、後ろから聞こえた鈴の音に反応したらしい
ここまでできるか・・・この戦いは一護に特に大きな成長を与えるらしい
尚更止めるべきではない・・・かもな

「いいぞ!いい反応だ!!」
その言葉のすぐ後に両者が刀をはじいた
一気に間合いがひろがる
「集中力が増してるな!さっきまでと違ってちゃんと鈴の音が聞こえてるじゃねえか!!」

思いっきり余裕の更木さん
一方一護は動きにキレが戻ったとはいえ息切れが激しい
「鈴も、眼帯も、より戦いを楽しむためだけにつけてんだ。そうやって有効利用してくれねえとつけている意味が無え」
そう言うと刃先で眼帯をコツコツとつつく

「くそ・・・ッ、ナメやがって・・・だから斬魄刀も解放しねえってワケか・・・」
その言葉にだけ表情を変える更木さん
「・・・わかってんのか?俺の剣はもうあんたを斬れるんだ・・・なめて手ェ抜いてると・・・」
「俺の斬魄刀に名は無え」

一護の言葉を無理に制した言葉はまたもや信じがたい言葉だった
「・・・え・・・?」
「俺の刀はむき出しだ。元々封印自体してねえんだよ。俺の斬魄刀の、こいつが本体だ」
刃はボロボロ、何人もの人を殺してきたことがよくわかる。だが隊長達の斬魄刀にはとうてい見えない

封印していないのも問題だが、これを聞いた一護がどう思うかで・・・この勝負は決まることも問題だ
「・・・そうかよ。それを聞いて少し安心したぜ・・・じゃああんたの剣はもうそれ以上強くならないってワケだ」
マズイな。完璧に油断している
「それなら・・・」

言い終わらないうちに更木さんが斬月に自分の斬魄刀を突きつけた
「それなら・・・なんだ?“それならもうちょっとで勝てる”とでも思ったか?・・・なめてるのはてめえだ」
油断するなと声をかけるべきか・・・いや、そうすれば余計に神経を使わせて攻撃に耐えられなくなるかもしれない
どうすればいい・・・どうすれば・・・!

「俺が斬魄刀を封印しねえのは、霊圧がでかすぎて全力で押さえ込んでも封印できねえからだ」
さっき更木さんの斬魄刀に名がないことを聞いてから、一護はずっと一つ一つの言動に驚いている
霊力もどんどん圧し負け始めている
「だから普段戦う時は常に加減して斬る癖をつけた。わかるか。そうでもしねえと敵が脆すぎて戦いを愉しむ暇もねえんだよ」

無残だった
更木さんの霊圧に耐えきれなくなった斬月は二つに折れ、刃が一護に直撃した
「一・・・護・・・」
まさかここまで来てこうもあっさりと霊圧を緩め、直撃を食らうとは思っていなかった

しばらく何が起こったかわからなかった
「・・・だから緩めるなって言ったろ。霊圧をよ。勝機の一つ二つ見つけたぐれえで緩めやがって・・・」
そう呟くと刀を引き抜いた
糸を切られた人形のようにその場に倒れ、うずくまる一護

「つまんねえ幕引きだぜ」
それを見下ろす更木さんは、いつもどおり不愉快そうだった
「・・・一護・・・!!」
直立不動からやっと体が動くようになった

何かを考えるよりも先に建物から飛び降り、気がつけば一護の横に立っていた
「一護!!オイ一護!!」
生きているのはわかる、でももう戦えるわけがない
どんどん流れ出てくる血、荒い息、全てが戦闘不能と語っていた

「・・・俺の所為だ・・・ちょっと調子が戻ったからって無理に戦わせて・・・信じるとか言って結局一番大変な事態に持ってきちまった・・・!」
止めておくべきだったんだ・・・無理にでも止めて俺がやっていればこんなことにはならなかった・・・
何が仲間を斬る覚悟がないだ!ルキアを助けるのに必要最小限なことをいつまでも拒んだから・・・一番傷付けたくない奴が死に掛けてるじゃねえか・・・!!!
「・・・ちっ、俺のことを斬れた奴も、戦いの最中に鈴の音を聞けた奴も・・・久しぶりだったのによ・・・終いか」

そう言い、ふりかえり数歩歩いていった後
「・・・つまんねえな・・・」
そう呟いた
なおのこと起き上がろうとする一護は出血が増してきている

「やめろ一護・・・!!もう戦えねえ!命を縮めるだけだ!!動くな!あとは・・・俺がやる」
「うるせえ・・・俺はルキアを・・・助けなきゃいけねえんだ・・・!!」
そういうとガバッと起き上がる
止めても無駄・・・だけどこうなったのは俺の所為、信じてやりたい。信じていたい。でももう限界だ

「一護・・・」
もう何も言えない。かける言葉すら見つからない、ただ名を呼ぶことしかできない
起き上がってもすぐに地に這いつくばるの繰り返し。そのうちに起きることもしなくなった
「何やってんだ。さっさと立て、次はお前だ」

先を歩いていた更木さんがこちらに振り向いた
「戦えねえ奴に何かまってやがる。お前は戦うことだけに専念すりゃいいんだ」
戦う・・・しかない
「専念することはできません。でも戦いますよ、それしかないんですから」

早く決着つけて一護を安全な場所に運ばなくては・・・
「行きます・・・!!」
斬魄刀に手を掛け、そのまま一気に引き抜く
尸魂界で初めて抜刀した瞬間だった


あとがき
次回一護が内なる世界にいっている間、ヒロインVS更木です!
といってもなんて書いていいかわかんないんですぐ終わります(一護が立ち上がったら終わり・・・かな?)
書いてて正直思い込みはげしいヒロインだと思いました
というわけでここまで読んでくださりありがとうございます!
表現方法が今一よくわかんなくなってきましたが次も読んでくださると嬉しいです
2006.5.1 煉城瞳
/〜BLEACH!!〜/