目の前にある新品の制服をまじまじと眺めた
ピンクのブレザーに、水色のスカート
・・・正直、あまりセンスがあるとは言いがたい・・・、気がする
しかし、いちいち文句も言ってられないので、渋々制服に腕を通した
きらり、とブレスレットが光を反射した
鞄の中身を確認し、ローファーに足を滑り込ませる
部屋を出る前に、たった一枚だけ立ててある写真に目を向けた
「もうすぐ・・・、会えるかな」
学校は、家から徒歩で十分程の距離にあった
公立の学校とは思えないカラフルの校舎である
もちろん、前学期まで通っていた私立と比べれば、大したことはないのだが
職員玄関から事務室に入り、手続きを済ませると職員室に通された
転校生の噂はもう広まっているらしく、あちこちその話題で持ちきりになっているようだった
まぁ、不思議には思わない
自分も、転校生が来る度に友達とぎゃーぎゃー騒いだものだ
「に、してもかなり急な転校だったねー」
担任が手続きをしている間に、個性豊かな人たちの中で、比較的まともに見える教師が言う
「夏休みの最後にいきなり連絡が入るとは・・・。それにしても、なんであの昊鐘学園からこの童実野高なんかに?」
「えと・・・」
少々言葉を濁した
「ちょっと、人を探してて・・・」
教師は、まだ何か言いたそうだったが、口を閉ざした
001.童実野高校
「本田!!杏子!!遊戯ーーーーー!!!!」
教室のドアが盛大な音を立てて開いた
毎度のことながら教室は一瞬静まるが、すぐにざわめきを取り戻す
扉を開けた張本人、城之内克也はこれ以上待ちきれないと言わんばかりに一目散にいつものグループに飛び込んだ
「きいたか!?転校生の話!!」
「お、お前・・・、ちょっとテンション上がり過ぎじゃねーか?」
あまりの気迫に少々圧倒されながらも、本田が呆れ口調で言った
「んなこたぁねぇ!!あんま見えなかったけど、すっげぇ可愛かったんだぜ!!」
「馬鹿!!!」
拳を握り締めて力説する城之内に杏子が鉄拳を浴びせた、が
城之内も伊達に毎日この中で生活しているわけではない
スレスレでかわした
「でもよぉ、杏子も一人ぐらい女子の友達が欲しいだろ?」
「何よ、その私に友達がいないような言い方!?」
「いや、そういう意味じゃなくてさ、いつも行動する俺たちの中で!」
「・・・まぁ、それはそうだけど・・・」
「つーわけで、絶対俺達のグループに入れるぜ!!」
暴走し始めた城之内は誰にも止められない
経験上それを知っていた本田は「何を言っても無駄だ」と杏子に囁いた
遊戯もそのことを悟ってか、話題を違う方向へ移す
「そういえば城之内君、その子の名前何なの?」
「ああ、名前な。忘れちまったんだよなぁ・・・。確かどっかで見た顔だったんだけどな・・・」
「あれだけ言っといて名前は知らないのかよ!!」
「うっせーな!!俺だってセンコーが呼んだのしかきいてねぇんだよ!!一々覚えられっか!」
「あの・・・二人とも・・・」
折角杏子と城之内の言い合いを止めたのに、今度は本田である
遊戯は小さくため息をついた
結局、城之内と本田の言い争いは始業のチャイムが鳴るまで続いた
時間ぴったりに担任が教壇の前に立つ
「席につけー!!!」
この声が響くのも、童実野高では毎朝お馴染のことだ
担任は全員が席についたのを確認すると、ゴホンと一つ咳払いをした
「今日は転校生を紹介する。入ってきなさい」
「はい」
澄んだ声がした方から、一人の少女が教室に足を踏み入れた
教室全体が息を呑んだように静まった
所々から呟きが聞こえる
遊戯は少し首を傾げた
すごく見覚えがある気がする
―――そういえば、さっき城之内君も見たことある気がするって言ってたなぁ・・・
「昊鐘学園から転校してきた、君だ」
「宜しくお願いします」
途端、教室がざわざわし始めた
「おい、なんでみんなすげぇとか言ってんだ?」
意味がわからない、というように城之内は眉を潜める
杏子が信じられないと言いたげな顔で城之内を覗き込む
「城之内、あんた知らないの!?昊鐘学園って、全国でも三つ指に入る進学校じゃない!」
「え、マジで」
さすが俺が見込んだだけはあるな、と呟く城之内に、今度こそ杏子の拳がクリーンヒットした
―――、。
絶対にどこかで聞いた名前だ。しかも、すごく大事な―――
遊戯は記憶の糸を引っ張ってみる
しかし、出掛かっているところで靄にかき消されてしまう
「まぁ、その内わかるかー」
すっきりしない気持ちを押さえつけるように、自分に対して言った
「席は・・・、そうだな、遊戯の右が空いているな」
遊戯はハッと顔を上げた
城之内と本田が羨ましそうにこっちを見ている
は早足で指定された席へと向かった
ひらり、とポケットから一枚のカードが舞い降りる
「あ、さ・・・」
しかし、遊戯はそのカードを目にした途端固まった
目を擦り、それを拾い上げる
「では、これでSHRは終わりだ」
礼、という声と共に、教室全体に元のざわめきが戻った
遊戯は隣に座るに恐る恐る話しかけた
「あの・・・、さん・・・?」
が振り向く
「僕、武藤遊戯です・・・。えっと、その、宜しく」
「う、うん!!こちらこそ宜しく!あ、でいいよ」
差し出された手にドキッとしながらも、遊戯は握り返した
「だぁーーーーっっ!!!おい遊戯!!抜け駆けはずりぃぞ!!」
「そうだそうだ!!」
今度は城之内と本田がすごい勢いでの前に現れる
本田は両手での手を握ると、目を光らせた
「本田ヒロトッス。趣味は読書ッス!」
「嘘つけぇ!!」
城之内がすかさず突っ込んだ
「城之内、第一印象は大事なんだぜ!」
「いや、関係ねぇって!!とにかく次は俺の番だぜ!」
身の回りで起こる出来事のテンポに頭がついていけないの前に、本田と入れ替わりで城之内が立った
「城之内克也だぜ!宜しくな、!!」
城之内はそのままわしゃわしゃとの頭を撫でた
その行動にはさすがに遊戯と本田の目が点になる
「え、っと、よ、よろしく・・・?」
ぐしゃぐしゃになった髪を直しながら、片言ではなんとか言った
それをきいてにかっと笑う城之内を隣から杏子が張り倒した
「あ、杏子テメー!!!」
「ちょっと、ちゃん困ってるじゃない!ごめんね、こいつってこいうやつなのよ」
やはり女子同士だからなのか、緊張していたの顔に少し安堵の色が浮かんだ
それを見て杏子は微笑む
「真崎杏子よ。杏子でいいわ」
「えっと、です!!私もでいいよ。・・・えっと、杏子」
「うん、わかった。じゃあ、ね」
これが今日一番まともな出会いだったかもしれない
「あ、そーいえばよぉ、俺、の顔どっかで見たことある気がすんだけど、どっかで俺に会ったことあるか?」
城之内の言葉にはしばらく目をぱちくりさせる
「ごめん、覚えがない・・・」
「あ、そのことなんだけど・・・」
さっきまで黙っていた遊戯が突然会話に割り込んだ
「これってさ・・・、じゃなくて、、のカードだよね」
そういって差し出された遊戯の手には、魔法使いの絵柄が描かれたカードがあった
「あ!!!」
は慌てて遊戯の手からそのカードを受け取った
「ごめん、ありがとう!」
「お、もしかしてもデュエルモンスターズやるのか!?」
それを聞いた瞬間、の顔がぱぁっと輝いた
「うん!!大好きだよ!!」
「そっかー!!俺達きっと気が合うぜ!!」
いつも以上に突っ走っている城之内を横目に遊戯が躊躇いがちに口を開いた
「・・・、君ってもしかして、“マジシャン・オブ・マジシャンズ”の・・・?」
「うん、そうだよ」
さらり、と言い放った一言に、遊戯と城之内がフリーズした
「あああぁああああぁーーーーーー!!!!」
数秒後、城之内が後ろに退きながら大声をあげた
幸い、教室は雑音で溢れかえっているため、そこまで目立つことはなかった
城之内は口をパクパクさせるが、どうやら驚きで声が出ないらしい
遊戯は遊戯で、自分が言ったことなのに、やはり実際そうだとわかると現状を理解し得ないようだった
ただ、杏子と本田だけがよくわからないというような表情をしていた
「なんだ遊戯、マジシャン・オブ・マジシャンズって・・・?そんなにすごいのか?」
「すごいなんてものじゃないよ!!」
遊戯が興奮したように言った
「彼女は、魔法使いを主としたデッキを使うことからマジシャン・オブ・マジシャンズって、デュエリストの中で呼ばれてるんだ。だから僕もさっき、が落とした、“聖なる魔術師”のカードを見て気付いた。しかも、一昨年、去年と全国大会で優勝した、世界レベルのデュエリストなんだ!マニアの中で知らない人はいないよ!!」
一気に語ると、遊戯は顔を赤くしたまま、まさかこんな所で会えるなんて!、と言った
「じゃあ、ちゃんってめちゃめちゃすごいじゃねーか!!」
「いや、そ、そこまですごいわけじゃないけどさ・・・」
本田にが慌てて言った
「マジで、マジなのか!?」
城之内はまだ頭の整理がついていないらしい
「なぁ、頼むぜ、!!いきなりこんなこと言うのも悪ぃけど、お前のデッキを見せてくれ!!」
「うん、いいよ」
はあっさり答え、鞄の中を覗き込むと、黒いカードケースを取り出した
「はい!」
城之内はしゃがんでの机にケースを置くと、慎重にそれを開けた
遊戯、杏子、本田がその周りに集まる
中から出てきたのは、綺麗に整えられたデッキ
一枚、一枚とめくっていく
彼女につけられたその名の通り、殆どが魔法使いカードだ
「わ、混沌の黒魔術師!!」
遊戯が声を上げた
「すごいや・・・。こんなレアカードが・・・」
城之内は一通りめくり終えて、ふぅ、と息をつくとデッキをカードケースに戻した
「やっぱり、すげぇな・・・。さすが、世界レベルだな」
その言葉に、はそんなことないよー、と頭を掻いた
「エースモンスターは、混沌の黒魔術師なの?」
遊戯が興味津々に問いかけた
「うーん、だった、っていう方が正しいかなぁ」
そう言うと、は鞄の内ポケットについているチャックを開け、厚いスリーブに入ったカードを取り出した
「今のエースは、これ。」
去年の大会のあとに手に入れたから、まだ公式試合では使ってないけど・・・、と言いながらが差し出したカードには“黒の魔法神官”と金色の字で書かれていた
「!!これって・・・」
「なんだこれ、見たことねーぞ?」
遊戯の声と城之内の声が重なる
「なんだ、遊戯?」
「これ、じーちゃんに聞いたことある・・・。確か、世界にたった一枚しかないっていう超激レアカードだよ・・・!!魔法使い最強のカードだ!!!」
「んな!!そんなにすげーカードなのか!?」
城之内の声がまたもやひっくり返る
一方、さっきからなかなか会話に入り込めない本田は不満そうにしていたが、何かを思いついたように表情を変えた
「でも、そんなレアカード持ってんだったら、気をつけた方がいいぜ」
全員の視線が本田に集まる
「レアカードを狙う輩がいるからな。遊戯も狙われたんだ」
「そうなの?」
がスリーブを戻しながら遊戯に問いかける
「うん、僕のじーちゃんのブルーアイズ。なんとか奪われずに済んだけどね」
「まったく、最低な野郎だぜ!!」
城之内は思い出して頭にきたようだ
「も、気をつけろよ。
海馬って野郎には」
カードケースが地面に落ちる音が、やけに大きく響いた
あとがき
はい、今更ですけど始まりました!!
中1くらいのときから書きたいなー、って思ってたんですけど、
ずっとやってなかったんですよね・・・。
話は、漫画、アニメがごちゃ混ぜになります。
また、設定もいろいろ変えているので・・・。(社長の就任時期とか)
混乱するのが嫌だ!って方は今のうちに読まないことをお勧めします!!
次回は再会です!!微微微裏入りますのでご注意を!!
では、ここまで読んでくださってありがとうございました!
2008.4.21 晴天マユミ
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