Silver Soul
第四話
携帯ある
刀もある
よし、準備完了
「あ、財布」
屯所でバタバタしてるのは、おなじみ
なぜか、制服を着ていない
「かァ?この書類・・・・・・」
そんなの後方の襖が開き、沖田が現れる
沖田は、いつもの制服だった
「あ。なんでィ、オフか」
秘書でも、働いてるからには休みはある
今日、はオフだ
「そ。今日土方さん代理だから」
そう言って、沖田の横を過ぎて部屋を出た
「どこ行くんでィ?いつも寝て過ごすのに」
「仕事で寝る奴に言われたかない」
でも・・・と、は思う
出かけようとしていたが、目的も何もなかったのだ
「外で寝るのもアリか・・・・・・」
「いつもと変わってねえやィ」
さて、とりあえず屯所を出た
「っかしーな。財布忘れた」
携帯と刀だけで、財布を忘れたらしい
探してる時に沖田に話しかけられ、そのままのようだ
「飯食えねえって、総悟」
用がないなら飯でも食って来いと、沖田に言われたらしい
財布がないので、結局やることがない
「まァいいか。ブラブラしてりゃあ」
かなり適当
だが、そんなの耳に、突然変な声が入った
「定春ぅ〜!!こっち来るアルよ〜!!」
・・・・・・アル?
聞き覚えのある口調と、馬が群れで通ってるんじゃないかと思うぐらいの地響き
声もそうだが、地響きが異常だったので、発生源を探す
その先にいたのは
「あ、チャイナ娘」
万屋の神楽だ
「ん?お前誰アルか?」
雇い主が忘れっぽいからか、従業員もキレイに忘れていた
「てェことは・・・・・・」
予想に近い反応だったので、は気に止めることなく流した
代わりに、いるでろうある人物を探す
「あ、いた」
神楽がいるのは公園。その中のベンチに、銀時と新八が座っていた
「万屋の旦那。何してんです?こんなとこで」
公園に入って、二人に言う
何故か、あちこちに怪我があった
「ん?えーっと、どちらさ・・・あ、真選組のヤツ」
前回会話したばかりだが、すぐにを思い出せなかったようだ
「いや、なんと言うか・・・・・・」
あやふやな銀時に代わり、新八が答えるように指差した
指先にいるのは神楽
それと・・・・・・
「・・・・・・犬・・・?」
白い巨大な犬だった
常識を覆すその大きさは、犬かどうかも疑わしい
「飼ってるんですかィ?やけにチャイナ娘になついてますけど」
大きさを除けば、飼い主になつく犬といったとこか
別に何の問題もない
「飼ってねェよ!・・・あ、そうだ。真選組で引き取ってくんね?これ」
銀時がこれと指差した先に、さっきの白い犬はいなかった
代わりに、銀時の背後に大きな影・・・・・・
「ワンッ!!」
ガポッと音を立て、銀時の頭が犬の口の中へ消えた
「・・・・・・いや〜スッカリなついちゃって。ほほえましい限りだね新八君」
再び公園のベンチ
銀時の頭には、更に包帯が巻かれていた
「そーっスね。女の子にはやっぱり大きな犬が似合いますよ、銀さん」
銀時を噛んだあの犬は、神楽と一緒に遊んでいる
大きなは余計だが、ほほえましいといえばそうかもしれない
「僕らには何でなつかないだろうか、新八君」
二人についている傷は、あの犬に噛まれた物
「なんとか捨てようとしているのが、野生のカンでわかるんですよ、銀さん」
言われてみれば、銀時はに引き取ってくれといったときに噛まれていた
案外あっているのかも
「旦那」
二人が話しているところへ、が帰ってきた
手には携帯を持っている
「屯所に連絡取ってみたんですが・・・・・・定春でしたっけ?あの犬」
犬の名前は定春
元々のではなく、神楽がその場でつけたそうだ
「あんな目立つのに、捨てた飼い主が目撃されてないんですよ」
二人に頼まれ、屯所に連絡を取ってみた
だが、結果は公園へ定春を連れて行く万屋一行の目撃情報ばかり
飼い主の情報は一つもなかった
「歌舞伎町は深夜でも人がいるから、絶対誰か見てるはずなんですけどね」
ベンチの横で報告する
それを聞いた二人は
「ああ・・・・・・。なんでアイツにはなつくんだろう、新八君」
「なついてませんよ、銀さん」
早速、話題を変えて立ち直ろうとしていた
「襲われてるけど神楽ちゃんがものともしてないんですよ、銀さん」
神楽は、襲われてるのをじゃれていると勘違いしてるらしい
それにしても、無傷なのはすごい
ちなみに、二人はきちんと襲われてることを把握したうえでボロボロ
「なるほど。そーなのか、新八君」
二人で勝手に納得していると、神楽が走ってベンチに帰ってきた
空いている所へドカッと座る
「楽しそーだな、オイ」
満足げな神楽に銀時が言う
「ウン。私、動物好きネ」
動物好きでなければ、あれほどの犬を簡単には受け入れられないだろう
つーか、動物好きでも受け入れられない気がする
「女の子はみんなカワイイもの好きヨ。そこに理由イラナイ」
「・・・アレ、カワイイか?」
定春を指差す銀時
よく見ると、こちらに向かって突進してきている
「カワイイヨ!こんなに動物になつかれたの初めて」
まだ勘違いしている神楽は、ベンチごと定春に突き飛ばされる
銀時と新八はさっと立ち上がって避けた
「神楽ちゃん、いい加減気付いたら?」
新八のツッコミも、最早意味なし
「・・・・・・チャイナ娘って一体・・・・・・」
は、上手く言葉に出来ないのであった
「私、昔ペット飼ってたことアル。定春一号」
定春に飛ばされた神楽が、こちらに向かって走ってきた
その勢いで、飛び蹴りをくらわせる
どうやら“定春”とは、代々のペットにつけている名前のようだ
「ごっさ可愛かった定春一号。私もごっさ可愛がったネ」
恐らく、今のよりは化け物じみていないだろう
「定春一号外で飼ってたんだけど、ある日、私どーしても一緒に寝たくて、親に内緒で抱いて眠ったネ」
女の子によくあるパターン
外で飼っているのなら、なおさらそう思う人も少なくない
だが、この場合・・・・・・
「そしたら思いの他寝苦しくて、悪夢見たヨ」
どんどん状況は悪化し
「散々うなされて、起きたら定春・・・カッチコッチになってたアル」
最悪の朝を迎えることになるのだ
泣けばいいのか、笑えばいいのかわかんないんだけど・・・
身の上話を聞かされた三人の、率直な感想だった
「あれから私、動物に触れるの自ら禁じたネ。力のコントロール下手な私じゃ、みんな不幸にしてしまう」
若干微妙だが、神楽はちゃんと悩んでいたようだ
そして、自分と対等な力を持つ動物が少ないということを知った
だから、自分の強すぎる力を普通に受け止めてくれる定春は
「でも、この定春なら私とでもつり合いがとれるかもしれない・・・」
奇跡に等しい存在なのかもしれない
「コレ、神様のプレゼントアル。きっと・・・」
ここまで聞くと、三人は、妙に納得してしまった
・・・だが
「あ、酢昆布きれてるの忘れてたネ。ちょっと買ってくるヨ」
神楽はそういうと、その場に立ち上がる
今の話は何だったのかと、切り替えの早さに驚いた
ただ、問題はここからだった
「定春のこと、ヨロシクアル」
「オイ、ちょっとまっ・・・」
銀時が呼び戻すが、神楽は定春を預けて行ってしまった
「・・・旦那、この犬扱えるのって・・・・・・誰でしたっけ?」
「・・・・・・神楽」
神楽の姿が見えなくなったあと、が口を開いた
「旦那とメガネは、定春に」
「嫌われてる」
そこまで話すと、三人一緒に振り向く
目に映るのは、どっしりと構えた巨大犬定春
「・・・逃げろ!!」
銀時の言葉で、一斉に走り出す三人
つられて定春まで走り出した
そういや、嫌われてんのはこの二人・・・・・・
そう思ったは一人逃走方向を変更。脇道にそれる
作戦(?)は見事的中し、定春は銀時たちの方へ走っていった
「旦那方ァ、お達者でー」
手を振って見送る
薄情者とか色々聞こえたが、二人が草むらに飛び込んだと同時に聞こえなくなった
しかし、今度はそれの変わりに
「ぎゃあああああ!!」
叫び声が聞こえた
一緒に、声ではない音も響いてくる
叫び声と・・・なんだァ?今の音・・・・・・
「んーっと・・・・・・お、あれだ。交通事故特有の急ブレーキ」
一人で正解にたどり着く
だがその叫び声とブレーキ音は、二人が消えた草むらの方から聞こえた
「・・・・・・旦那!!メガネ!!」
慌てて後を追う
案の定、その先はすぐに道路
定春に追いかけられたのなら、止まって車を確認する暇はない
車は急に止まれません
よく聞く言葉だが、まさしくその通りに、車は二人と一匹に突っ込んだのだろう
「旦・・・」
「これは・・・狛神!?なぜこのような珍種が・・・・・・」
突然聞こえた声に、はとっさに近くの木の陰に隠れた
・・・・・・天人?
銀時たちが倒れている近くに、事故を起こした車と、乗っていた人がいた
人間とはかけ離れた容姿・・・・・・天人だ
「じぃ、縄はあるか!?」
誰も見ていないのかと思ったのか、事故を起こした天人は、車に定春をくくりつけてしまった
「天人の窃盗か。厄介だなァ」
オフとはいえ、は警察。犯罪を見過ごすわけはない
ただ相手が天人となると、適当な理由をつけて何もなかったことにされかねない
現行犯とはいえ、証拠がほしい
そうこうしてるうちに、車のドアがバタンと閉まった
「・・・・・・今だ」
道路へひらりと躍り出ると、足音を立てずに二人が車へ飛び乗った
「さすが旦那。いくらやられても死なないんですね」
「人をゾンビみたいに言うな」
ともう一人。飛び乗ったのは、道路に倒れていたはずの銀時
チャンスを窺っていたようだ
「で、どーします?このままだとこっちが捕まりますよ」
天人は、屁理屈が得意
今までに逮捕してきた天人は、皆そうだった
「考えてる暇ァねえ。要は、定春取り返しゃいいんだろ?」
そういうと、銀時はその場に寝そべった
「俺が話つけてくる。中でも声ぐらい聞こえるだろ」
それを聞くと、「交渉ですか?」とが言う
「そんな事しなくても、このままこいつで・・・・・・」
「どこから出したの?それ」
手にバズーカを構えるに、銀時が言った
無論、真選組のバズーカである
「細かいこと聞かないで下さい。木刀でエイリアン斬れる世界だし、これぐらいアリです」
「誰のこと言ってるんだ?俺の事?いいんだよ、主人公は」
「ってあれ?何で知ってんの?」と言いながら、銀時は定春の上を匍匐前進で進み出した
そのまま、フロントガラスへ乗り出す
それと同時に・・・・・・
「ギャアアアアアアア!!ゾンビだァァァァ!!」
車内から叫び声が聞こえた
銀時に聞こえないように、「ほら、ゾンビだ」とが言った
「オーイ。車止めろ、ボケ」
丁寧語が一切ない、交渉に使うべきじゃない言葉
それでも、銀時はかなり真剣だった
「こいつは勘弁したってくれや。アイツ、相当気に入ってるみてーなんだ」
真剣でも、相手が理解できなければしょうがない
「何を訳のわからんことを!!」
交渉のつもりが、相手を刺激したようだ
乗り出してきた天人が叫ぶ
「どけェ!!前見えねーんだよ、チクショッ」
一言も挟む余裕を持たせず、その天人が銀時を振り落とそうとする
・・・・・・だが
「うオオオオオオ!!」
後から聞こえた声に、その場にいた全員が振り向く
「なっ・・・!!チャイナ娘が、ものスゴイスピードで・・・!!」
土煙を上げながら、神楽が車に向かって走ってきていた
「定春返せェェェェェ!!」
「誰だ、定春って!?」
鬼のような表情の神楽
どうやら、定春を盗られたことに我を忘れている
「くっ・・・来るなァァ!!」
恐れをなしたか、銃口が神楽に向かった
だが、その瞬間
別の銃声が聞こえ、銃の銃口がきえた
弾丸で銃口を打ち抜いたらしく、装填済みの弾丸の先っちょが潰れ、詰まっている
一目で、使えないとわかった
「あ、新しい銃・・・・・・」
慌てて服のポケットを探り始める
だが既に、神楽はリムジンのすぐ後方に迫っていた
「ほァちゃアアアア!!」
振り抜かれた傘が、リムジンを見事に吹っ飛ばす
車体が一直線に、池へと落ちていく
「あ」
その様子を見ながら、神楽は思った
定春乗ってたの、忘れてたよ・・・
「定春ゥゥゥゥゥゥ!!」
時既に遅し
大破したリムジンは、煙を上げながら池へ沈んでいってしまった
「う、う・・・う」
その場に膝をつき、うつむく神楽
定春は車体にくくりつけられていた
いくら巨大でも、自力で抜け出すのは不可能だった
私・・・また、同じことを繰り返してしまったヨ
諦めかけた・・・・・・その時だった
「お嬢さん」
どこからか、声がした
周りには誰もいない
ふと、神楽は頭上の木を見る
「何がそんなに悲しいんだィ」
そこには、銀時と定春が座っていた
かっこつけている銀時だが、定春に手を噛まれ
「ぎぃやぁぁぁぁ!!」
台無し
「銀ちゃん、定春!!」
万遍の笑みで、定春の帰還を喜ぶ神楽
すぐ側に、定春と銀時は飛び降りる
「定春ゥゥゥ!!よかった。ホントよかったヨ!!」
腕を噛まれながらも神楽は抱きつく
仕舞いには頭にも噛みつかれるが、それでも神楽は離れなかった
「銀ちゃん。飼うの反対してたのになんで」
不思議がって神楽が聞く
銀時は特に考える様子もなく
「俺ァしらねーよ。面倒見んならテメーで見な」
と答えた
「オメーの給料から、そいつのエサ代キッチリ引いとくからな」
遠まわしだが、オッケーのようだ
「素直じゃないですねェ、旦那」
歩き出した銀時に、木の裏側にいたが言った
にやけている
「うっせえ。・・・ま、感謝するぜ。一人じゃ逃げられなかった」
土方・近藤に勝ったとはいえ、銀時一人であの巨体を持ち上げるのは不可能
二人でもやっとだった
「神楽もかばってもらったしな」
神楽をかばったというのは、天人の銃が壊れた時
壊したのは
神楽には当たるのはもちろん、万が一通行人に当たったら一大事だ
腰から銃を瞬時に抜き、銃口めがけて撃ったのだった
「さて、どうでしょうね」
適当に答える
「ま、何はともあれ、今日は楽しかったです」
続けて、笑いながら言った
「じゃ、旦那。この辺で失礼します」
そういって、銀時とは反対の方向へ歩き出す
しかし
「女って、真選組は知ってんだろ」
前回と同様、去り際で銀時に呼び止められる
渋々が戻ってくる
「この前も言いませんでした?」
あくまで、の答えは変わらない
「女性隊員は募集してないんです。いるはずないでしょ」
前回と、ほぼ同じ回答だった
「話せねェぐらい大事なのか」
いくら否定されても、銀時は追求し続ける
「大事です。だから、もう聞かないで下さい」
何も言わない銀時
そんなことは放っておいて、はまた歩を進めて行った
「あ、そうだ」
少し歩いたところで、思い出したように携帯を取り出した
慣れた手つきで番号を押す
「あ、屯所?俺だけど・・・って総悟かよ。何でいんだテメー」
外に行っているはずの、沖田が出た
「え?あ、うん。・・・あれ?何でお前知ってんだよ、オイ」
なぜか、が頼んでいた定春の飼い主調査を知っていた
話した覚えは、もちろんない
「ま、いっか。捜査打ち切りって伝令して。依頼者が引き取るって言ってるから」
その後、帰ると告げて通話を切った
―――女の侍など認めぬ―――
長らく忘れていた言葉
銀時に出会って、久しぶりに思い出した
「旦那といえど、話す気には到底なりませんな」
笑みの浮かぶの顔
迷いがある顔ではない。自信の満ちた顔だった
は、静かに帰路に着く
あとがき
ヒロイン像がつかめなくて困っています(汗
BLEACHのときより設定あやふやなんで、なんかこの先すごくなりそう・・・・・・
では、ここまで読んでくださりありがとうございました!!
2007.9.6 煉城瞳
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