何だ、この斬魄刀は・・・・・・





何だ、この破壊力は・・・・・・









恋次とルキアは、目の前の出来事に目を見張るばかりだった





自分達を始末しようと集まってきた死神たち


決死の覚悟で突っ込もうとした恋次の前に、ひらりと現れた・・・・・・






全てが、一瞬に思えた



何百といる死神たちの中に飛び込み、斬魄刀の名を呼ぶ





それと同時に噴出した、黒い炎
どんどん広がり、死神たちを飲み込むそれは、名前の通り、黒い龍・・・・・・







恋次もルキアも、の斬魄刀解放を見るのは初めてだった




自身も、戦闘で使用するのは初めて


それなのに、威力は自分の斬魄刀を熟知した者と同等か、それ以上





ルキアは知らなかったが、恋次は知っていた






この斬魄刀は、の物ですらないと











これが・・・・・・・・・






その実力を目の当たりにして、二人は、改めて思った








〜BLEACH!!〜
第三十六話






「どしたの?二人とも」





集まっていた死神をみんな片付けて、俺は二人へ振り向いた
だが、俺が話しかけても、その場に固まっていて全く動いてくれなかった




俺の霊圧にあてられた・・・・・・って、んなわけねえよ


恋次は副官だし、ルキアだって霊力減っててもそれなりに強い






何やってんだ?こいつら







「オイ、聞いてるか?逃げるぞ」






それでも動かない



なんなんだよ、捕まりたいのか?






「あ・・・・・・・・・」




ようやく、ルキアが言葉を発した






「こやつらは・・・・・・死んだのか?」





そして、視線を俺ではなく、倒れている死神たちに向ける



あ、驚かしちゃったのか





「死んでないよ、気絶してるだけ」




もちろん、殺しはしない


気絶させるだけで十分な連中だ。これ以上の力は必要ない





「ま、気絶するギリギリのダメージは負ってるけどね」




全員が気絶するようにやった
そうしないと、逃げた方向とかが伝わっちまって厄介になる






「本当に・・・・・・気絶なのか?」




今度は恋次が聞いてきた



だから、そういってるだろ





「誰からも・・・・・・霊圧が感じ取れねえぞ・・・・・・」







・・・・・・言い忘れてた




でも、今は話してる時間ないなァ






「大丈夫、死んでないから。・・・・・・まぁ、道すがら話すよ。今は逃げるほうが優先」





そういって、「いくよ」と二人を促す


二人は顔を見合わせたが、俺の後に続いて走り出した














「悪ィな、驚かせちまっただろ?」




少し時間をおいてから、さっきのことを話すことにした





「あれ、あの斬魄刀の能力なんだ」




俺自身も、最近気付いたんだけど





「斬魄刀“黒炎龍”。名前の通り、属性は炎熱系」




炎が出たところから、それはもうわかっていると思う
分からないのは一護ぐらいだし






「発火性のある炎ない炎、火炎放射状の物から炎弾まで、炎をあらゆる形で出現させられる」






一護と同じ特訓を受けたとき、具象化したこいつが出してきたのは炎弾
炎弾の場合は、何も意識しない限り発火性はない


発火させるには、出現させる時に霊力を込めないと





「さっきのは、地下から炎を溶岩状にして流したんだ。ここで、俺は霊力を込めた」





出現させる炎の状態に応じて、同時に炎の種類も変わる。それがこいつの能力



火炎放射の状態は、当たれば発火する炎
炎弾は、発火しないが相手に向かって一直線に飛んでいく

溶岩は、相手を飲み込む技。発火性もつけたりつけなかったりできる






「こいつ面白い奴でさ、俺の霊力を直に混ぜることで、稀に炎に別の能力がつくことがあるんだ」





それが・・・・・・さっきのことにつながる






「さっきの攻撃に霊力を混ぜると・・・・・・飲み込んだ相手の霊力を、意識と共に一時的に完全に吸収する」





普通は、大人数相手や、追跡を逃れるために使う



今回は相手が大人数だったのもあるけど、援軍が来たときに俺達の情報が伝わらないように気絶してもらった








「なるほどな。こっちまで死んだかと思ったぜ」




恋次が納得したように言う





もちろん、それも目的のうち


あの技をくらったら、ぱっと見じゃ死んでるか区別がつかない
慌ててたらなおのこと、死んでるかどうかなんて確認しないから間違えやすくなる




死を偽装することで、追っ手が来ても、そいつ等はうかつに近づけなくなるって寸法だ






「ま、砕蜂の野郎がもう隠密機動動かしてるかもしれないから、安心はできないな」





双極の丘での出来事は誰もが見てただろうし・・・・・・追っ手は撒けても、新手は交わせない
人数が減ればそれだけいいんだけど









まぁ・・・・・・逃げるが勝ちっと







「処刑を邪魔した時点で反逆者なんだ。それなら、堂々と逃げてやろうじゃないか」





分かってた。ルキアを助ければ、自分がどうなるか
恋次まで巻き込みたくはなかったけど、本人希望なんだからしょうがない







「俺は、殺人鬼にでもなってるかもな」





あれだけの人数を倒したんだ
もし、俺の狙い通りに死んでると思い込んでいたら、完全に殺人鬼だな









「こんな状況で冗談言ってる場合か、莫迦者!」






俺がにやけていると、ルキアの一喝が入った

恋次に抱えられている状態だから、あまりいつもの凄みが感じられない






「我々は逃げられるが、一護はどうする!おいてきてしまったではないか!!」





え、俺のせい?

いやいや。だって俺は一護に頼まれたからここにいるんだし






「兄様と戦って、ただで済むわけないだろう!!逃げられるものか!」





確かに、ただじゃすまないな
下手すりゃ・・・・・・もう二度と帰ってこないのかもしれない








「・・・・・・いいんだよ、それで」








帰ってくる確信








「恋次、ルキア絶対放すなよ。こいつが何言ってもな」







ルキアのために、あいつは俺たちのところへ帰ってくる




俺と恋次に分かって、何故ルキアに分からない?








「・・・・・・分かってる。そこまで馬鹿じゃねえ」







そういうと、ルキアの肩をしっかり握る






「なっ・・・・・・。放せ・・・!放してくれ恋次・・・っ」





恋次なら、分かってくれるとでも思ったのか



ルキア・・・・・・お前、いつからそうなった?
わからずやなのは知っている。でも、人を信じられないような奴じゃなかったはずだ







「一護を・・・一護を助けねば・・・!」






俺達の助けを一護が望んでいないって、分からないのか?










なんで、自分の価値をそこまで否定するんだよ






一護が死んだらどうしようってか?全部自分のせいだってか?





どうしようもない奴だ



責任は全部自分にある見たいなこと言って、結局一護を信じきれてないだけじゃないか









「恋・・・」



「だーもー、ゴチャゴチャうるせえなテメーは!!」






溜まった鬱憤を晴らすかのように、恋次が叫んだ




お前がうるせえ・・・・・・







「逃げてるっつーのに騒ぐんじゃねえよ!見つかったらどーすんだコラ!!」





お前が騒いでる


お前のせいで見つかる







案の定、「声がしたぞ!あっちか!?」と塀の反対側から声がした






「ほれみろ、言わんこっちゃねえ!!急ぐぞ!!」



「イヤ・・・今のは完全にお前のせいだろう・・・」






俺とルキアから冷たい視線を浴びつつも、恋次はその場から走り出す











その後は、しっかりと警戒の薄そうな道を選んで走った


双極の丘からは、なかなか離れられない




おかげで、一護と朽木隊長の霊圧がびんびん伝わってくる


一護はまだ生きている。だが、俺たちはまだまだ隊長格たちの手の上を転がっている
どうしたら上手く手の上から飛び出せるかなァ







「・・・・・・ここ、屋根の上渡っていこう。辺り一体死神だらけだ」





直接ついてくる奴はいないが、周りにいる死神は着実に俺たちに近づいている


先を行かなければ、囲まれてオジャンだ







「そうだな」





周りに点々としている霊圧に恋次も気がついたようだ
短く返事をし、塀の屋根へ飛び上がる






そこから、10メートル進んだ頃だろうか







「・・・あの野郎・・・・・・一護は、オメーに借りを返したいと言っていた・・・」





恋次が、わざわざ一護の話を掘り返してきた






「私に・・・・・・借り?」


「・・・ああ」




いつの間に借りなんて作ったんだ?あいつ







「俺は、ルキアに命を救われた。俺はルキアに、運命を変えて貰った」






救われた。俺が転校してきた時に聞いたっけな



それを聞いた日、俺は初めてじゃないけど、ルキアに会った
俺の中で止まっていた、死神としての運命が動き出したのも、ルキアに会ったこの日だった






「ルキアに出会って死神になったから・・・・・・・」





あの死神、そしてルキアに会ったから










「俺は、今こうして、皆を護って戦える」






俺は、ここへ帰ってこれた


生まれ育ったこの場所へ、誰かを護るために帰ってこれた









記憶が戻っても、一護やルキアのいる現世から・・・・・・離れたくなかった




俺の名前が、何の意味も持たない現世
何の責任も負う必要のない現世



そして何より、俺の事を本当に必要としてくれた奴ら





だが、こっちにもたくさんいる。まだ、俺の帰りを待ってくれているたくさんの人が





どちらかを選べといわれても、何も決められない








だからこそ、けじめはつけなければならなかった













俺を必要としてくれているかどうかじゃない





俺が、今いなければいけないのはどちらか









答えは簡単だった


ルキアを助けるために、俺はこっちを選んだんだ




あいつがいなかったら、俺は自分勝手な理由で現世にとどまり続けていた
決心のつかない、中途半端な時間を過ごしていた










「・・・ゴチャゴチャ悩み過ぎなんだよテメーは。昔っからな」





何でもかんでも自分のせいにしすぎなんだ



お前がいたから、今の俺と一護がいる






「誰もテメーが思うほど、テメーを悪く思っちゃいねえよ」





むしろ、感謝してるんだ






「自分ばっか責めてんじゃねえ。何でもかんでも背負って立てるほど、テメーは頑丈じゃねえだろうが」








そんなこと、ルキアにはできない


だから恋次も、俺も、一護も・・・・・・皆がいる






「分けろ。俺の肩にも、こいつの肩にも、あいつの肩にも」








・・・・・・こいつ呼ばわりかよ






まぁいいか


ルキアに気付いてもらえれば・・・・・・それで







「ちょっとずつ乗っけて、ちょっとずつ立ちゃいい」





俺は、今まで誰かのことを支えてやれるような奴じゃなかった


夜一様に支えてもらった
現世でも、たくさんの人たちに支えてもらった




だから今は、俺も誰かを支えられる







「その為に、俺たちは強くなったんだ・・・」





倒すためだけじゃない


支えるために、強くなったんだ








「・・・あいつを・・・信じてやれルキア」





一護を信じるのは俺も同じ



でも、ルキアが信じなけりゃ、俺が信じても何の意味もないんだ













「・・・すまぬ・・・恋次、・・・」






戻ったな

俺の助けたかったルキアに






「・・・馬鹿野郎、謝るとこじゃねえよ」





そう、まだまだこれからだ






「・・・ありがとう・・・」





オイオイ






「・・・馬鹿野郎。・・・礼言うとこでもねえよ・・・」





だから、これからだっての











「ぐずぐずしてる暇ァねえぞ。ここまで来て捕まるなんてまっぴら・・・・・・」








そう、まっぴらだ


なのに、俺はその先の言葉を口にできなかった
















・・・夜一様・・・・・・?









間違いない
遠くから伝わってくる・・・・・・この霊圧



夜一様のものだ





しかも、この霊圧の大きさは・・・・・・









「どうした?」




霊圧を感じた途端、俺の足は急に止まった


異変に気付いた恋次が、俺のところへ走って戻ってくる








「あっち・・・・・・」




感じた方角を、まっすぐ指差す





指の先には、大きな森があった








「夜一様がいる。誰かと・・・・・・戦ってる」








相手は誰だ?



俺たちと別れて、そのあと何があったかはわからない
だけど、戦ってるのは確実だ







ゆっくり、目を閉じる




デカイな。隊長格だ
13人の隊長の霊圧は、全部覚えてる






この人物は、13人の中で最も懐かしい
そして、最も親しい





だが、最も俺と夜一様を憎んでいる









「砕蜂・・・・・・砕蜂だ」






夜一様が・・・・・・砕蜂と戦ってる












「・・・・・・行きたいんだろ、あんた」






げっ、図星・・・・・・





「その顔見ると、図星みてェだな」





どうやら俺は、こういうことに関しちゃ表情に出やすいタイプらしい
初めて知った







「でも確か、砕蜂隊長って・・・・・・元々は、あんたと夜一さんの部下だったんじゃなかったか?」






よく知ってるな
こいつが入隊する前の話だってのに







「そうだ。でも、砕蜂は・・・・・・夜一様と俺を憎んでる」





止めなくちゃ







戦っちゃいけない


二人は・・・・・・戦っちゃいけないんだ










「・・・・・・行ってこいよ」






しばらくの沈黙を、恋次が破った








「俺にはわからねえが、それなりに事情ってのがあるんだろ?」







二人のところへ行きたい。でも・・・・・・




・・・・・・一護は






一護は、許してくれるだろうか


約束破って・・・・・・恋次とルキアを危険にさらすことを







「でも・・・・・・」





恋次に、追っ手を交わす力が残っているか?


俺が離れたら、こいつらを誰が護るんだ









「あんたは、一護のこと・・・・・・信じてるんだろ?」





急に何を


当たり前じゃないか。んなこと








「なら、今度は俺も信じろよ」




恋次は自信満々に、自分を指差しながら言った








「俺は・・・・・・絶対ルキアを護る。一護とあんたの代わりにな」








そっか・・・・・・





こいつだって、同じだもんな















「・・・・・・悪ィ、恋次。ルキア」







悪ィ・・・・・・一護










俺の足は二人の元を離れ、夜一様と砕蜂の方へ向かっていた







あとがき
久しぶりに書きました!流れメッチャ早い・・・・・・
ともかく、着実に進んでいますルキア救出編!
これで文才もあったらいいのになァ
では、ここまで読んでくださってありがとうございました!
2007.7.14 煉城瞳
/〜BLEACH!!〜/