夢を・・・・・・見た






黒い着物の女の人が、でっけえ化け物と戦う夢







先にでっかい化け物がきて、後から女の人が来た



それで、確かすぐに戦い始めて・・・・・・





でも、覚えている部分だけをたどると、もう次の瞬間、そこに立っているのは自分だけ






足元にその女の人。化け物の方は、俺の後ろで煙のように消えた









何がなんだかわからねえ。頭の中真っ白で、何も考えられねえし、何も聞こえなかった







でも、その人は確かにこう言った












『朽木ルキアに会え』














・・・・・・誰だ?それ






〜BLEACH!!〜
第一話





「うおわッ!?」


誰だ?それ。そう思った途端、俺はベットから転落して目を覚ました




どうやら、またあの日の出来事を夢に見たようだ。ご丁寧に超ベタな起こし方までさせてくれて





ま、これについては後で話すとして・・・・・・ベットから落ちて目を覚ました俺は誰か?




名前は。先月高校生になったばっかの15歳


身長170センチくらい。得意科目は体育。前の学校では剣道部所属
家族構成は、母さん・父さん・俺の3人暮らし。あとは、小さい時に死んだ弟




あ、前の学校って言ったのは、昨日引っ越してきたから。5月に転入も変だけどな







まだまだいろいろあるけど、もっといってると話が進まないのでパス




で、いよいよ本題

さっきの現実離れした夢は、一体なんなのか?




はじめに言っとくけど、これは夢じゃない。現実に、俺が体験した話


とはいっても、それが事実なのかは俺にも分からない。だって、気がついたら家のベットで寝てたんだから―――










3日前。俺の家は、引越し準備で慌しかった


ホントは、初めから学校に通えるように、引越しは4月に済ませてしまうつもりだったらしい
だが、父さんの急な海外出張のおかげで予定は狂い、結局正式に引越しとなったのは5月に入ってからだった





俺の準備は一応済み、あとは引越し前日に学校へ登校するのみとなった




家にいても、片付けを手伝いせられるだけだったので、その日は、半日外で過ごすつもりで家を出た

いつもと変わらない、見慣れた町並みが広がってた






だから、あんなことが起こるなんて・・・・・・考えもしなかった












突然だった


目の前で爆発が起きたかと思うと、なにやら大きな物体がゆらりと起き上がった



砂煙でしばらく姿は見えなかったが、それが晴れた途端、体中に悪寒が走った






ゾッとするぐらい、真っ白な・・・・・・面








こんなの・・・・・・知らない




なんだよ、こいつ







早い話が“化け物”だった




何もできずに立ち尽くしていると、今度は黒い着物の女の人が現れた
その人は刀を取り出し、化け物と戦い始める





で、夢に出たとおり、ここから話は飛ぶ


気がつくと、戦いは終わってた
どっちが勝ったのかは分からない。両方倒れてたから




絶対途中に何かあった

たとえ目に見えないスピードで戦っていたとしても、戦いの初めと終わりが途切れるなんてありえない




記憶が、途切れていた















「やったか・・・・・・」



その人は、かすかな声でそう呟く




「・・・正直どうなるかと思ったが・・・・・・結果的には貴女の力を戻すことができた・・・・・・」




息があがっている。それに、何故か俺の事を知っている口調だ






「貴女の力は完全ではない。だが、私の力と触れた今、戻るのは時間の問題・・・・・・」





何のことやらさっぱりだ
力?俺に何の力があるってんだ





「いずれ、分かる時が来る・・・・・・。そのとき、本当の貴女を思い出せるはず・・・」




本当の俺?なんじゃそりゃ





「貴女は、元に戻るべき人・・・・・・。ここで死ぬ私の力が、少しでも役に立つなら光栄・・・」




そう言うと、その人は急に体を起こした





「・・・・・・空座町に、私の知り合いがいる。名は・・・朽木ルキア」






目も虚ろ。完全に息もあがってしまっている

もう、永くない・・・・・・





「彼女に・・・・・・朽木ルキアに会え・・・。全てが・・・・・・分かるはず・・・」







いき絶え絶えに、それを俺に伝えると、その人は地面に倒れた



丁度その時、俺の中の何かの糸もプツンと切れて・・・・・・








気がついたときは、次の朝。ベットの上にいた












ここまでが、俺が今日見た夢の原因





正直、本当に夢だと思ってた



起きたらベットの上だし、俺はその日、家の手伝いしてたってことになってたから





でも、その日を堺に、同じような白い仮面の化け物に何度も遭遇するようになる




幸い、襲われるのはたいがい外にいる時だから、剣道部の俺は、持ってる木刀で退治できる







ところがどっこい。日が経つにつれ、その数はどんどんふえて・・・・・・



強さは初めてであった当初の2倍、数は3倍と言ったところか




一言でまとめると、もう手に負えないのだ


















ーッ!学校はー!?」




下から、母さんが叫んでいる



もうそんな時間か






「わーってるよ。今行く!」




そう返事を返し、真新しい制服を着る

ポケットに財布を押し込み、カバンを持って階段を駆け下りる





そういや・・・・・・この町の名前、空座町だったな


ちょっと出来過ぎじゃねえの?引越し先とその朽木って奴がいる所が同じなんて








「朝飯は?」


下についた途端、おはようも言わず、朝飯の場所を聞く






「食べる時間あるの?遅刻10分前」






「・・・・・・嘘ッ!?」



言うの遅い!!!





席に着こうとテーブルに寄ったが、急転換。玄関へ走る






「あら?また制服男子用きちゃったの?」




大急ぎの俺に構わず、母さんはとても穏やかである


今聞くな、今





「俺にスカート送ってこれる奴がいるわけないだろ。いってきまーす」



それだけ言うと、俺は玄関を飛び出した










そういえば、一つ言ってなかった



俺は“女”だ

















キーンコーンカーンコーン





校門の前に到着したと同時に、チャイムが鳴った



「あーららァ。遅刻だ」




特に急ごうともせず、俺はゆっくりと高校の敷地内に入った

チャイムが鳴ったというのに、校舎内はまだざわついていた





「職員玄関・・・・・・で、いいのか?」



昇降口が見つからないので、一番目に付いた職員玄関に行った







【生徒使用禁止】





・・・・・・ま、いっか



張り紙を無視して、校舎へ入った





ここまでくると、遠かった生徒達の声も、かなり近くに感じる
実際近くなんだけど





「あの〜・・・・・・」



職員玄関の横には、事務室とつながる小窓があった
そこから事務員の人を呼ぶ




「今日1−C転入することになってるなんですけど・・・・・・」





第一印象は大事である。ちょっと丁寧語を混ぜてみた




「あ、ちょっと待っててくださいね」




事務員の人は、そのまま奥へ行ってしまった


いや、別にどこに行けばいいか教えてくれるだけでいいんだけど・・・・・・




そう思ったとき、俺はあることを思い出した






朽木ルキア・・・・・・どこにいるんだ?







あの人の話だと、この町にいるはず
とはいえ、あんな化け物と戦うような人が、街中を普通に歩いているとは思えない


ましてや、こんな学校になんて、いるわけないじゃないか





しばらくは、あの化け物との遭遇も覚悟しとかないとな・・・・・・









さん、担任が来るまで応接室にいてもらえますか?」




あ、担任に連絡取ってたのか




「応接室・・・・・・ですか?」




どこにあるんだ?それ





「そう。この廊下をまっすぐ行くと、“応接室”って看板があるから」




事務員の人は、廊下を指差した


それを見て、俺は軽く会釈して、その指が示す方向に従って歩き出した






ま、いずれにせよ、あの化け物に関わり続ければそのうち会えるわけだ

帰ったら、早速街中でもあるこうかな








【応接室】



何個か部屋を通り過ぎると、目的の応接室についた

ドア越しだか、中からは人の気配がする




・・・・・・もう先生が来てるのか?










「失礼しま〜す・・・・・・ 」



中には担任がいることを予想して、そーっとドアを開けた




案の定、中に人はいた
突然開いたドアにビックリしたのか、こちらをじっと見ている







大人じゃなくて・・・・・・・・・生徒?





小柄な女子。制服は、俺と同じで真新しい
学年はよくわかんねえけど、こんな中途半端な時期だ。まず、一年生と見て間違いない








「あの〜・・・・・・転校生?」


向かいの椅子に座りながら、とりあえず尋ねる




いきなりとはいえ、何か返事くらいはしてくれるだろう。そう思った





だが、その女子は全く違った










「・・・・・・あ・・・貴女は・・・・・・!!」






俺を見たとたん、驚きの表情を浮かべた








「・・・・・・え?」




あっちもビックリしてるけど、こっちもビックリ


いきなり驚かれても、声かけただけだし・・・・・・・・・何で?






「何故貴女がここに・・・・・・」




何故って、高校生だからに決まってるだろうが



何言ってんだ?こいつ







「何故って、高校生だからに決まってんだろ?それに、誰だ?あんた」



そう言ったら、今度はもっと驚いた顔をした






「誰だって・・・・・・私を、覚えておられないのですか?」




覚えておられないって・・・・・・何故敬語?

つーか、俺の知り合い?向こうは知ってるわけか?




「覚えてるも何も、あんたを見たのはこの15年間で初めてだぜ?」




正確には、15年と10ヶ月だな


あ、俺7月生まれだから。よろしく






「・・・・・・15年間・・・・・・?」





納得してくれるかと思ったら、更に困惑顔になった


ホントに覚えがないんだって、マジで





「・・・ならば・・・・・・すまぬ。人違いだったようだ・・・・・・」




ぼそっと呟くと、今までの勢いが嘘だったかのように、静かになってしまった


困惑しているのが目に見えた表情も、今では逆に残念がっているように見えた






「人違い・・・・・・か。そんなに似てるのか?」




ここまで誰かに間違われたのは初めてだから、かなり気になる






「・・・見た目はその人に瓜二つ・・・・・・。違いなど見つけられない。それに・・・・・・」



「それに?」








「霊圧が・・・・・・同じだ」





・・・・・・は?






「レ・・・レイアツ・・・・・・?」




霊圧?なんじゃそりゃ?





「・・・・・・はっ!?す・・・・・・すまぬ。聞かなかったことにしてくれ・・・・・・」




何かまずいことでも言ったかのように、また黙り込んでしまった


そんなにまずいことだったか?





「あ・・・・・・。そ、そうだ!クラスどこ?同い年に見えるけど?」



ギクシャクした空気に耐えられず、何とか雰囲気を変えようとそう切り出した
もともと気になってたことだし




あ、実は先輩だったとかそういうことねェよな・・・・・・?





「1-Cです」



あ、俺と一緒だ





「お、当たった。1-C、 。よろしく 」



よく分からんが、クラスメイトってんなら自己紹介ぐらいしたっていいだろ


名前さえ言えば、完全に人違いってことにもなるだろうし








・・・・・・」



ほら、全然違う名前だろ?たぶん






「名前は・・・・・・・・・と、言ったな?」




念を押すように、ご丁寧に下の名前まで聞いてきた

はいはい、俺の名前はですよー






「やはり、間違いなどではない!!貴女は死神の。違うのですか!?」









・・・・・・何?





死神・・・・・・?







「・・・・・・オイオイ、同姓同名なのか?ややこしーなァ」




軽く頭の後ろを掻きながら、ボソッと言った

意味不明な言葉が多すぎる。名前と容姿が一緒でも、絶対俺の事じゃない





「いくらなんでも気味ワリーな。でも、残念だったな。真面目に知らねーんだ、あんたのこと」



こいつが言った、“死神”ってのは気になる
でも、そんな物は知らないし、俺自身も死神とやらじゃない




やっぱ・・・・・・じゃねえな。絶対別人。そうに決まってる







「し、しかし・・・ここまで偶然が重なることは・・・・・・」



何にこだわるのか、俺が別人だと認めたくないらしい
そら、わかるけど・・・・・・




「信じてくれよ、ホントに違うんだって。ほら、今度はあんたの名前教えてくれって。同じクラスなんだしさ」



何とかその話題から離れようと、思いついた質問をとっさに言った

このままだと、ややこしくなりそうだし





「私は・・・・・・朽木・・・朽木ルキア」



るきあ?また珍しい名前だな







・・・・・・ん?ちょっと待てよ・・・・・・





「悪ィ。もっかい言って」




「・・・・・・朽木ルキア」






朽木・・・・・・ルキア・・・・・・




い・・・・・・いた!?






「み・・・見つけた・・・・・・朽木ルキア!!」




「はッ!?」




突然の俺の変わり様に、今度はあっちが驚いた




「あんたを探してたんだ。今度は俺から質問させてもらう。あんた、何者だ?」




誰かに邪魔されないうちに、聞き出しておきたかった






「あんたの言ってた、死神って何だ?」




あの人の言葉から見て、こいつとあの人が同じ種の人間であることは間違いない
つまり、あの化け物とも、何か関係があるはずだ





なんで俺が化け物に襲われたか。こいつなら、知っているはず


会えば、全てがわかるって言われた
知るには、今しかない






「そ・・・それは・・・・・・・・・」




少し言いにくそうに、俺から視線を逸らす

あまり知られたくはなかったのか、口が滑ったことを悔やんでいるのだろうか











「ここに引っ越してくる前に、たぶん・・・その死神って奴だと思う。それに会った」





このままなら、ただ単に朽木ルキアの口から出た言葉を不思議に思ったと思われてしまう


あの出来事を伝えなければならない。あの死神の言葉も






「変な化け物にも襲われた。一回じゃない、何度もだ」



俺がそう言うと、朽木ルキアの表情は一変した





「あんたに会えば全部分かるって、その死神に言われた。だから教えてくれ。化け物と、死神ってのについて」





朽木ルキアから、気まずそうな雰囲気は既に消えていた


驚いた表情だったが、今度は、俺から全く視線をはずしてはいなかった





「そこまで分かっているのなら、仕方あるまい・・・・・・」




朽木ルキアが口を開きかけた・・・・・・その時だった














「はぁーい、転入生二人!ちゃんと揃ってるな」




ドアが乱暴に開かれ、女の人が入ってきた

恐らく、担任の先生だろう



「1−C担任の越智美里。よろしく!・・・・・・さてと、もうホームルームだから、教室行くぞー」




一言も口を挿む余裕を与えず、越智先生とやらは、再び応接室から出る





・・・・・・やべ・・・まだ何にも聞いてねえぞ・・・・・・!!







・・・・・・といったな」



あとで話す機会を探さなければ・・・・・・そう思っているとき、後ろから声が聞こえた




「質問に答える。あとで、声をかけたときに・・・・・・ついてきてくれ」





先生に気付かれたくなかったので、返事は全く返さなかった



















「・・・・・・というわけで と朽木が転入!席は・・・・・・」






教室に案内されてすぐ、俺達はクラス全員の前で自己紹介をした



特に変わった様子のないクラス
欠席者が数名いることを除けば、どこにでもあるような教室だ





「っと、黒崎の横と前しか空いてないんだな。どっちがどっちでもいいや。適当に座って」







って言われてもどこかわかんないし。黒崎ってだれよ?どこよ?




「あれェ?黒崎いないじゃん。休みだっけか?」




いねえのかよ




「まあいいや。そこ黒崎だから、前と横、好きなほうに座って」




指差した所の席を見ると、確かに誰も座っておらず、その前と横が空いている


場所がわかればあとは楽。どっちかに座ればいい





ところがどっこい

いつの間にか、黒崎とやらの横の席には朽木ルキアが座っていた





お〜い。相談とか、そーいうのは無しか?




「どーした。早く座れって」




一人だけ立ちっぱなしの俺に、越智先生が優しく声をかけた

















キーンコーンカーンコーン





「じゃあ数学はここまで」




きょーつけ。れー




日直の号令と共に、生徒達が席を離れる






朽木ルキアのいる学校だから、少しは変わったところでもあるんじゃないかと思ったが・・・・・・



なんだ、ちょー平凡じゃねーか








「あれ?水色。俺の前って誰かいたっけか?」



授業も終わって、机に突っ伏して暇そーにしていると、誰もいなかったはずの後ろの席から声がした




ん?誰だ?




「あ、一護いなかったから知らないんだよね」





一護?変な名前
しらないって・・・・・・つーか、俺の事?





「彼、君。彼女と一緒に転校してきたんだ。ね?君」




彼女・・・・・・あ、朽木ルキアか





「えーっと・・・・・・お前、小島だったな。・・・・・・そっち誰だ?」



俺の言葉に、「あ、覚えてくれたんだ」といったあと




君の後ろの席の、黒崎一護だよ。朝いなかったでしょ?」


そう説明してくれた



あー。こいつがそうか
・・・・・・覚えやすそーな頭してんな。不良か?こいつ




「あんたが黒崎か。俺、ってんだ。よろしく」


「おう。よろしくな」




見た目派手な割には、全然不良っぽくねーな


逆に・・・・・・まともな高校生って感じ






「それにしても、へんだよね?」



急に小島が切り出した





「今日転入してくるのって、女子が二人って言ってなかったっけ?」




それを聞くと、黒崎が



「ああ、昨日の帰りに言ってたな。間違えたんじゃねえの?」



と続けた






間違いじゃねーよ





「それ、合ってるぜ。言い忘れてたけど、俺、女だから」












「えええええ!!!??」




その場にいた全員が、驚嘆の声をあげた


おーい。そんなにおどろかなくったって





「み・・・・・・みえない・・・」



誰かがボソッと言った




「そりゃそうだ。分かった奴、今までに一人もいねェもん」




あまりにも俺があっさり言うので、またみんなが驚く





「いいのか?男と間違えられても・・・・・・」




「いいんだよ。逆に男扱いの方が、俺としては嬉しいぜ」





予想外の返事だったらしく、今度は異常に静かに・・・・・・








「ま、いいじゃないですの、みなさん」




その静寂を、今までの誰でもない口調が破った





「それより・・・さん。黒崎君が話があるといっているのですが、あなたもついて来てくれませんか?」




え?朽木ルキア?


こいつ、こんな口調だったか?




「あ!?てめっ、何いってやがんだ!!俺はお前に用が・・・・・・」



「私はさんにも用があるのよ」




黒崎の言葉をさえぎり、朽木ルキアが続ける





「ね?いいわよね?さん」






俺はただ、うなずくことしかできなかった

















「どこまで行くつもり?こんな人気がないところに連れ込むなんて、私何かされるのかしら?」



教室と同じ口調で、朽木ルキアが言った


元の口調を知ってると、なんだか変な感じだ





「その気色悪い喋り方はやめろ!」




「気色悪い?心外ね。一晩で習得したにしては上出来じゃなくて?」






一晩って、あんた何読んだんだよ




「うるせ!どういうつもりか説明してもらおうか!」


「説明?」





何だ?こいつら、知り合いだったのか




「そうだ!てめえの仕事はもう済んだんだろ!?それがなんだウチのクラスに潜り込んでる?」




仕事?



「尸魂界とかいう所に帰ったんじゃなかったのかよ!?」



そーるそさえてぃ?
帰ったって・・・・・・んな国、聞いたことねえぞ




「たわけ! 尸魂界に戻れるのは死神だけだ!!今の私にはあそこに戻る術がない」




あ、また出た。死神
じゃあ、その尸魂界ってのは死神のいる所なのか?


つーか、結局死神ってなんなんだよ





「あの〜・・・・・・ちょっといいか、朽木ルキア」



俺がいろいろ考えている間も、黒崎と言い合いを続けている朽木ルキアに声をかける
このままだと、ここに呼ばれた理由も意味もない




「何だ?」




「もっかい聞くけど、死神ってなんなんだ?あと、お前何者?」




それを教えるために、ここに呼んだんじゃねえのか?





「そうか・・・・・・あな・・・貴様には、一から説明しなければなるまい」



貴女の次には貴様かよ。古い言い回しだな




「私は尸魂界という所から、虚と呼ばれる悪霊を退治するために現世に派遣された死神だ」




「ほろう・・・・・・?」




また新しい単語。わかんねえっての





「外見的特徴は、顔に白い面がついており、胸に穴が開いている」





・・・・・・白い仮面・・・・・・・・・







「虚は、整と呼ばれる普通の魂魄、そして生きている人間の魂魄までも喰らってしまう。もちろん、死神もだ」





俺が襲われたのは・・・・・・虚?



俺を助けてくれた奴は死神で・・・・・・虚ってのに殺られちまったってことか?






「我々死神は、整を・・・そして人間を守るため、虚を退治しているというわけだ」



守ってもらったって事か、そいつに






「オイ、てめえ!なんでこいつにそんな事教えてんだよ!?」



俺に話をさえぎられた黒埼が、話に割り込んでくる




「知りたがってるからか?そんなもん、ホイホイ教えていいもんじゃねーんじゃねえのか!?」





そうか、こいつ知らないんだっけ。俺が虚に襲われたこと






「騒ぐな一護。こやつは虚に襲われた、貴様と同じ人間なのだぞ」




そうそう、お前と同じ・・・・・・って、こいつも襲われたのか?


てっきり朽木ルキアの仲間の死神かと思った





「虚や整、それに我々死神は普通の人間には見えぬ。それが見えるだけでも、こやつは人間離れしているのだ!」




え、見えないのか?


まあ魂魄食べるってんならそうなのか・・・・・・魂魄って魂のことだし







「虚が見えているとなれば、またこやつが襲われる可能性は高い」



淡々と語る朽木ルキア
俺は大して深刻じゃないんだけど、朽木ルキアはやけに深刻そうだ





「必要最低限の知識を教えてやらねば、こやつは死ぬぞ」




確かに。知ってるのと知らないのでは、結構違う






「・・・・・・理由は分かったけどよ、こいつなんで虚から助かったんだ?何も知らないんだろ?」





まだまだ黒崎は食い下がる


そこまで不満かこの野郎




「助けてもらったんだよ、死神に。・・・・・・朽木ルキアと違って、俺を助けて死んじまった」





それを言った途端、その場が静まり返った







「その死神は、何も教えてくれなかった。正確に言えば、俺が何も覚えてないんだよ」




記憶をそのまま辿れば、死神は現れた途端死んだ
虚もそうだ。現れた途端・・・・・・死んだ






「言動も、表情も、何も覚えてないんだよ・・・・・・。忘れたんじゃない、消されてるんだ」





消されてると思ったのは、ただの直感
だが、消されてるとしか思えなかった。消せるかどうかは別として









「消されてる・・・・・・か。確かに我々死神は、記憶を消す技術を持っている」





俺の話を聞いて、素直に朽木ルキアが話し出した

どうやら、死神にとっては普通のことらしい





「その技術は本来、虚に襲われ、死神に助けられ生き延びた人間に使うものだ」




じゃあ、やっぱ普通のことなのか





「貴様にも適用された可能性は高いが・・・・・・その場合、虚や死神については何も覚えていないはずだ」





あ、なるほど
虚と死神の存在を気付かせないためにやってるんだからな





「消し残しがあるとは思えぬ。意図的にその部分だけを残した・・・・・・ということになるな」






意図的か


死神と虚の存在・・・・・・そして、俺に何かを気付かせるため、あの会話の部分を残した



じゃあ、何を俺に気付かせたかったんだ?





「まぁどちらにしろ、いつ虚が出るやも知れぬこの町で、これ程霊圧の高い人間を無防備にしておくわけにはいかぬ」



今の状態じゃわからないってことか




ま、いろいろ教えて貰いながらゆっくり思い出して・・・・・・



・・・・・・え?いかぬ?





「これも極めて危険だが、我々と一緒に行動してもらわざるをえないな。よかろう?






・・・・・・そっち行くか・・・・・・







「ちょい待った!俺は守ってもらうために来たんじゃねェんだって」



「・・・・・・何だと?」





それでは、何のために聞いたのだ?と、朽木ルキアが俺に問う





「決まってるだろ?倒し方を教えてもらうためだ。他人に厄介になるつもりはないんでね」




俺の言葉を聞いた途端、朽木ルキア、また絶句


なんだよ、そこまで問題発言してないだろ





「貴様、正気か!?虚を人間が倒せるわけがなかろう!!」







え?倒せないのか?





「人間に倒せるのなら、我々死神がわざわざ現世に出向くものか!!」





・・・・・・それもそうか



ん?・・・オイオイ、ちょっと待てよ・・・・・・







「・・・俺・・・・・・倒したぜ?何体かだけど」









「・・・・・・何?それは本当か!?」






はい、本当です







「そんなはずは・・・・・・いや、この霊圧ならば・・・・・・。だが、死神の力は・・・」





俺が即答すると、朽木ルキアはなにやら黙り込んで独り言を始めた


思い当たる節があるのかないのか
とにかく異例なのかもしれない







「ところでさ、お前はなんで朽木ルキアと一緒にいるんだ?」




朽木ルキアの独り言は無視して、ずっと黙っている黒崎に話をふる



襲われたってことは、こいつも虚が見えるって事だ
俺の事を不思議がるなら、こいつも十分不思議だろ






「あ?別に一緒にいるわけじゃねえよ」




じゃあ、なんで朽木ルキアの事呼んだんだよ





「俺はただ、もう虚は俺が倒してこいつの任務ってのは終わったのに、なんで学校にいるか聞くだけだ」




あー、お互い大変ですなァ







あれ?



こいつ・・・・・・







「・・・・・・人間が倒してんじゃん!虚!!」




ビシッと黒崎を指差して、俺が叫ぶ



その声で、朽木ルキアがようやく独り言をやめた





「それは、私が死神の力をこやつに渡したのだ。少々深手をおってしまったのでな」




死神って凄いんだか凄くないんだか・・・・・・

本来守るべき人間に化け物撃退を託すなんて、普通やらねェだろ






「渡せる物なのか?」


「ああ。ただし、霊圧の高い人間でも可能性は限りなく低いがな」




へぇ、意外
定着しちまって、渡すのなんかできないんだと思ってたのに






「ところで・・・・・・貴様は、どうやって虚を倒したのだ?死神の力は無いのだろう?」




一通りの説明を終えた朽木ルキアが、俺に聞いてきた






「まあ、大体は木刀使ってるな。元々運動は苦手じゃねえし、今までのは自力で何とか」




「木刀?そんな物で倒してきたのか!?」





そんな物って・・・・・・。木刀高いんですけど





「演武に使う木の刀だろう?」



そうそう、それ

演武用っつっても、おもっきり叩けば撲殺くらいは可能だろ




「斬魄刀どころか、真剣ですらない・・・・・・。おまけに生身の体で戦ったとなると・・・・・・」




斬魄刀?武器のことか?





「貴様、やはりただの人間ではないな・・・・・・・・・」




いえ、ただの高校生です。転入生の









「よし!決めたぞ!」




しばらく黙っていた朽木ルキアが、突然口を開いた






「我々と行動してもらう。そう言ったな?」



はい。断ったけど





「撤回させてもらう。我々と、虚退治の手伝いをしてはくれないか?」





・・・・・・は!?





「て、手伝いも何も、もう俺虚倒せないんだぜ?強くなってきてるっつーか・・・・・・」




俺一人で倒せるなら、わざわざこんな話を聞きにこない


正直、もう手に負えない。そんな奴に、何ができるってんだ
逆に危ないっての





「心配無用、ここには私も一護もいる」




はぁ、いますねェ





「だが、虚に対抗できる者が一護だけというのは、学生ということもあって少々不便だ」



俺も学生だけど




「貴様が加われば、二人で虚退治をすることができる。一護の負担も軽くなるだろう?」






・・・・・・ん?


死神なのは朽木ルキアだろ?なんで黒崎が虚退治することになってんだ?






「俺と黒崎がやらなくても、死神のお前が全部やればいいんじゃねえのか?」




なあ?と、俺は黒崎にも話をふる





「そうだぜ。大体、なんで俺までやることになってんだ?」



あ、話通ってなかったんだ








「さっき言ったな。今の私にはあそこに戻る術がないと」




そーるそさえてぃってやつ?


飛行機とかじゃ・・・・・・帰れるわけねえか





「あそこに戻れるのは、死神だけ。私は死神だが、今はそこへは戻れぬ」




・・・・・・まさか・・・





「一護に、死神の力を全て渡してしまったからだ。今の私は、死神の仕事ができない」



できないって・・・・・・





つーことは、死神は黒崎一人?






「・・・というわけだ。手伝ってくれるな?」




え、本気?





「特に一護!貴様には断る権利はないぞ。元はといえば貴様が・・・・・・」





あ、元を正せばこいつの所為か


なら、話は早い











「「断る!!」」






俺と黒崎は、見事にはもった
黒崎にいたっては、腕をクロスさせてバツを作っている



こいつ、断る権利ないって言われたのに、なに見事に断ってんだよ






「・・・なんだと?」




「本職の奴が戦えない状態で、戦闘経験浅い人間に任せなけりゃならねえ。かえって危険じゃねえか」


「同感だ。あんなばけものと戦うなんて二度とゴメンだ」






薄情とは思ったが、人間がどうにかできる相手じゃないってことは、もうわかってる



唯一虚について知っている朽木ルキアは、力を失って戦えない




虚に出会ったばかりの俺と黒崎じゃ、どうにもならない






「ちょっと待て!貴様ら・・・」





予想外の返事に、朽木ルキアは困惑している
そりゃそうだろう。引き受けてもらわなくては、こいつも困るからだ







「昨日は!・・・昨日俺があんなのと戦えたのは・・・襲われてたのが俺の身内だったからだ」




黒崎も、申し訳なさそうに話し出す





「見ず知らずの奴のためにあんなばけものとなんて戦えねえ!」




一番人間らしい考えだ


あんな物を見て、恐怖や死についてなにか覚えない方がおかしいからな






「そこまでやれるほどの人間じゃねえんだよ。期待を裏切る用で悪いけどな!」





「残念だが、そんなリスクの高い方法、俺には無理だ。他の適性者でも探してくれ」





相次いで俺達の批判にあい、朽木ルキアはうつむいてしまった








「そうか・・・」




本当に小さな声で、朽木ルキアは言う
諦めてくれたようだ






「ならば致し方ない!」





ところが、その様子は急変


慣れた手つきで、スッと手に指のない手袋のような物をはめる
そして、あっという間に黒崎との距離を縮めると、黒崎のあごに平手打ちをくらわせた





しかし、その平手打ちは、黒崎の体をすり抜け、別の物体に当たった

不思議なことに、その物体は、黒崎そのもの



朽木ルキアの手袋が、黒崎の中の何かを引きずり出したのだ






突然の出来事に、俺を始め、黒崎は全く動けなかった


それを知ってか、朽木ルキアは、今度は俺の方を向いて構える
黒崎のときとは違って、すぐにむかっては来ない




言うことを聞かなければどうなるかを見せ、従わせようとしている
相手が未知の力を使うなら、どうなるか分からない


普通なら従わないが、形勢が不利なのは目に見えているので、すぐにホールドアップ







「何を・・・おわぁっ!?何だこりゃ!魂が抜けてやがる!オイ!しっかりしろ俺の本体!」





さっきの拍子に地面に倒れた体に、黒崎が呼びかける


どうやら、今ここで騒いでいるのは黒崎の魂で、地面に倒れているのはその抜け殻
要するに黒崎は、今死んでいるというわけだ





「な、何これ。死んだら服装変わるわけ?」




構えを崩さない朽木ルキアに、俺が話しかける


黒崎が身にまとっているのは、制服ではなく黒い着物
俺を助けてくれた死神が着ているものと、一点の狂いもなく同じだった





「いや、こうなるのは死神だけだ。この服を死覇装といい、刀は斬魄刀という」



ほー、わけ分からん
あ。斬魄刀ってのはさっきも言ってたような気がする





「まあ、それは近々説明するとして・・・・・・二人ともついて来い!」






体に戻る方法の分からない黒崎と、今にも魂を抜かれそうな俺



選択肢は、一つだけだった















「・・・・・・おい」



「待てもうじきだ」




「嘘付け。もう20分もたってる」






ついていったのは、とある公園

昼時とあって、普段なら遊んでいるであろう子供達は一人もいなかった



そんな静寂漂う場所に、俺と黒崎は20分以上待たされている
さすがに、あの変なグローブははずしていた





「まあまて。一護、ここに霊は出るのか?」




上手く言い逃れると、黒崎に話をふる

朽木ルキアもこの町に来たばかりなのか、情報を貰おうとしているようだ





「そういやぁ出るな。こんくらいの背の5歳ぐらいのガキが」







特に意味も考えず、黒崎が質問に答える
下にしゃがみ、その幽霊の子供の身長を分かりやすくジェスチャーする





「友達か?」





あまりにも詳しく知っているので、朽木ルキアはそう聞いた





「何でだよ。三・四回見かけただけだ、話したこともねぇ。それがどうしたって言うんだよ」





黒崎が言うと、朽木ルキアは答えなかった
その代わり、黒崎と俺に、何かを無言で差し出してきた




「何だこれ。携帯か?」





折りたたみ式ではない、細長い形。画面やボタンから見ても、まさしく携帯だった
にしても、死神が携帯を持っているとは思わなかった





「莫迦者、よく見ろ」




・・・・・・携帯ではないらしい



言われたとおりよく見ると、画面には変な数字や文字が羅列している






「これは・・・あっちからの指令だ。午後の12時前後15分に、おそらく、その子供が虚に襲われる」




あまりにもサラッというので、はじめは状況が理解できなかった



少したって、俺を襲ったあの化け物が、俺よりも小さな子供を襲うことを理解する
だがそれよりも、的確な情報が入っていながら微動だもしない、朽木ルキアの精神に驚いた






「それが・・・・・・俺たちとどう関係あるんだ?」





一つだけ、思い当たることはあった



それは、時間が経つにつれ、どんどん確信へと変わっていく








こいつ、俺たちに虚を退治させようとしてる












―――見ず知らずの奴のためにあんなばけものとなんて戦えねえ!―――





朽木ルキアの目的が分かったのと同時に、黒崎の言葉が浮かぶ



今から襲われるのは・・・・・・







「まて。もうじき分かる」





・・・・・・見ず知らずの奴じゃねえか!







「オイ、朽木ルキア!これって・・・・・・」


「うわあああああああああああ!!」







俺の言葉に、悲鳴がかぶった


公園に中を見ると、小さな男の子が泣きながら何かから逃げている






白い仮面。あの時感じたのとおなじ悪寒



現れたのは、虚だった






「っち!ホントに出やがった!」





反射的に、背負っている斬魄刀の柄に手をかける黒崎





助けるつもりだ


自分が何を言ったかも忘れて・・・・・・






そして、朽木ルキアもここで言うのだろう






「待て!!助けるのか?“赤の他人”だろう」





俺たちに、自分がさっきどんなことを言ったかを






「な・・・何言ってんだてめぇ!?他人でも目の前で襲われてんのに助けないなんてできるわけ・・・」




「目の前だろうがどこか遠くだろうが!」




反発する黒崎を、朽木ルキアはすぐに制す






「襲われているという事実に変わりはない!」






そうしている間にも、あの男の子はどんどん虚に追いつめられている
つまずき、地面に転がってしまうことも、何度もあった






「助けるな!」




その度に、黒崎は助けに行こうとする


もちろん、朽木ルキアも、それを許すことはない






「今ここでその子供を助けても、貴様が死神としての己を自覚しなければ同じこと!」





必死に叫ぶ朽木ルキア







「目の前で襲われているから助けるだと!?甘ったれるなよ!!」




俺と黒崎は宣言した


もう、他人を助けるために虚とは戦わないと






目の前だから助ける。それは、あまりにも無責任すぎる






「死神は、全ての霊魂に平等でなければならぬ!手に届く範囲、目に見える範囲だけ救いたいなどと、都合よくはいかぬのだ!」





一時の感情に流されて、助かる霊と助からない霊が出ていいわけがないのだ










当たり前じゃないか

なんで、そんなことが分からなかったんだよ







なんで、あんなこと言っちまったんだよ







「半端な気持ちでその子供を助けるな!」





こいつの言うとおりだ
いくら目の前で襲われていても、あの幽霊が“見ず知らすの奴”であることに変わりはない





甘いもんじゃないんだ、死神ってのは



そんな死神が、人間を頼らなければならない
巻き込んではいけないと分かっていても、俺たちを頼らなければいけないんだ









これ以上、危険な目に遭いたくなかった





だが、危険な目にあってわかったこともある



俺には虚を倒す術がある。だから狙われるということ
逆に、無力な霊達が、たいした力もないのに虚に襲われているということ







「今そいつを助けるというのなら・・・他の全ての霊も助ける覚悟を決めろ!」





ここで俺と黒崎が断れば、朽木ルキアに護られるはずだった霊が、全て虚に喰われること






「どこまででも駆けつけ、その身を捨てても助けるという覚悟をな!」







覚悟なんかない


そんなもの、今ここで全て誓うことはできない








脳裏に、チラッとだったが、あの死神が浮かんだ







「そうか・・・・・・」






続きを言い終わらぬうちに、公園の入り口の柵に足を掛け、虚の前に躍り出る
少し遅れて、黒埼も同じように俺の横に立った







「・・・何だぁ?てめ・・・」





俺たちに気付く虚



だが俺は、虚にそれ以上先を言わせずに虚との距離をつめる
その勢いで、蹴りを顔面に食らわせた




予想外の攻撃に、無防備だった虚は後へのけぞる


その隙をつき、黒崎が斬魄刀を抜き、虚の足を斬り飛ばす






「うぎああアアあア!!!」




血を噴き出しながら、派手に転がる










「・・・・・・二人とも・・・・・・覚悟は・・・決まったのか・・・?」




自分で言っておきながら、驚く朽木ルキア





「ゴチャゴチャうるせぇ!!」


「いちいちうるせぇよ!!」





もう聞き飽きたとばかりに、俺と黒崎は叫ぶ






「覚悟だとか、そんなもん知るか!!」


「決まってねえよ、これっぽっちもな!!」




「俺は助けたいと思ったから助けたんだよ!悪ィか!!」


「右に同じ!!」






口々に言う


思ったことは、こいつと全く別のことだろう
だが、やりたいことは・・・・・・やらなくちゃいけないことは、こいつと同じだ







「・・・な・・・!」




「てめぇは違うのかよ!!」






朽木ルキアの言葉をさえぎり、黒崎が怒鳴る





「テメーは、あの時体を張って俺を助けてくれた!!」









あの時・・・・・・


あの死神はどうだったのだろう?





体を張って、俺を助けてくれたのか?






「あん時テメーは、“死神の義務だから”とか、そんな難しいこと考えて助けたのか!?」






・・・・・・思い出せない





黒崎はいい。どんな風に自分が助けられたのか分かるんだから


俺は、命の恩人がどんな風に自分を助けてくれたかも・・・・・・覚えていない







知りたい






「体張るときって、そんなんじゃねぇだろ!!」







あの死神は、何を考えて俺を助けてくれたか



自分の死と引き換えに、俺に何をして欲しかったのか






だらだらと、自然に思い出すのなんか待っていられない






今すぐ、俺の手で知りたい




「少なくとも俺は・・・」







話している俺達の後ろに、立ち直った虚が急接近してきた




もう、何のためらいもない







「違う!!」





黒崎は刀と俺の蹴りが、虚の顔面に突き刺さる



急所だったのか、その場に虚は崩れ、消えてしまった









「・・・確かに覚悟はしてねー。ホントにやばくなったら、逃げ出すかも知れねー」




黒崎も、俺と同じ考えだった





「俺は赤の他人のために命捨てるなんて約束ができるほど、リッパな人間じゃねぇからな」




知ったばかりの死神、そして虚
この先、俺たちがこれとどう関わることになるかなんて、まだ何も分からない





「けど・・・・・・残念なことに、受けた恩を忘れてヘラヘラしてられる程・・・クズでもねぇんだよ!」






護れるかどうかはわからない
だが、受けた恩は・・・・・・きっちり返す


そんなんで、いいんじゃないか






「・・・・・・俺には死神の力は無いから、どうなるかは分からない。この中で、一番にくたばるかもしれない」





経験、能力。いろいろ総合しても、やっぱ一番俺が劣ってる






「どこまで通用するか分からねえが・・・・・・こんな俺も必要なら、力になってやるよ」




だが、必要としてくれた奴がここにいる
目的は少々違ってきたが・・・・・・まあ、いいだろ







「そーゆうわけだから、手伝わせてもらうぜ!!死神のシゴトってやつを!!」



「もう、断っても無駄だぜ?」





そういいながら、一緒に右手を朽木ルキアに差し出す






「・・・・・・ああ、よろしくな」




微笑みを浮かべながら、朽木ルキアは俺たちと交互に握手を交わした














あの日から・・・・・・いや、朽木ルキアと出会ったこの日から





止まっていた俺の運命が、動き出した


あとがき
下手くそがさらに下手になりました・・・。
まあこれからがんばって書いてみます!
2005.11.9 煉城瞳
/〜BLEACH!!〜/